トライアンフ・スピートツイン1200(6MT)/ロイヤルエンフィールド・スクラム411(5MT)/ベネリ・レオンチーノ125(6MT)
クラシックを遊び尽くせ 2023.04.25 試乗記 豪速ネオクラシックの「トライアンフ・スピートツイン1200」に、青春を思い出す「ロイヤルエンフィールド・スクラム411」、復活を果たした名門の手になる「ベネリ・レオンチーノ125」。JAIA二輪輸入車試乗会から、懐かしくも新しい3モデルの走りをリポートする。見た目にダマされるな
トライアンフ・スピードツイン1200
トライアンフがずっとずっとつくっているバーチカルツイン搭載のモダンクラシックライン、それが「ボンネビル」シリーズだ。ざっくりと言えば、それらのなかでもスポーツ寄りのモデルがこのスピードツイン1200ということになる。そんな、わりと穏当なイメージを勝手に抱いてコースに走りだした筆者は完全にダマされていた。
乗車前にグルリと車体を見渡して、たしかに「ふふん、イカついタイヤを履いちゃってまあ」と鼻で笑ったことは素直に認めよう。足もとには“公道レースで勝つためのタイヤ”をうたう「メッツラー・レーステックRR」という超ハイグリップタイヤが装着されている。「ダートになんて行かないくせにマッドテレインタイヤを履いた四駆みたいなもんでしょ~(キラいじゃないけどさ)」とタカをくくったのもつかの間、JAIAの試乗コースで一番スピードが乗せられるストレートでスロットルをワイドに開けたら……速い! ちょっとこわい!
ボア×ストローク=97.6×80mm、排気量1200ccの2気筒エンジンがデリバリーする最高出力100PSはいまどき大したことないのかもしれないけれど、4250rpmで発生する最大トルク112N・m……こっちがとんでもなかった。ついさっきまで「意外とフツーね」と感じていたしつけのいいジェントルな排気音とニュートラルなライディングポジションのことなんて、一瞬で頭の中から消えてなくなり、ものすごい勢いで迫ってくる前方のコーンとの距離を測りながらフルブレーキの準備に全集中して身を構える。ああ、間に合ってよかった。ABSがあってよかった。4気筒なんていりません。
1930年代のイギリス。経済危機のあおりを受け、苦境に立たされていたトライアンフのクライシスを救ったのが、1938年製スピードツインだった。そんな、ちょっと重いヒストリカルな車名を背負って2019年にデビューした現行スピードツインだけど(参照)、その走り味は「過ぎた昔のことなんてぶっ飛ばせ!」級にマッチョなのである。偏差値はさておき、スカッとはしている。ラジアルマウントのブレンボはダテじゃない。仕立てのいいスーツの中はバキバキだぜ。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
40年前かよ!
ロイヤルエンフィールド・スクラム411
2023年のJAIA試乗会で、現場仕切りのホッタ青年が数あるモデルのなかから自分に振り分けた一台が、スクラム411。乗り終えて、思わず腕組みをしてしまった。ロイヤルエンフィールドって、なんなのだろうと。
本当は、スクラム411のベース車両というデュアルパーパス系の「ヒマラヤ」に試乗する予定だった。なので前日、ホームページで当該車両のプロフィールを調べて、そこで軽くヤラれた。「Adventure-Ready Handling」という見出しの商品解説文。その冒頭でいきなり見せつけられた単語が「セミダブルクレードルフレーム」だった。ツッコまずにはいられなかった。40年前かよ!
ところがだ。どんな経緯でそうなったか知らないが、当日乗ることになったスクラム411は、フレーム形式も、最高出力24.3PS(17.9kW)を発生する排気量411ccの空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブエンジンもヒマラヤと同一ながら、一切ボケようとしない。411ccって排気量も日本じゃ“中免”で乗れないだろうと、ド突くようにスロットルをひねっても意に介さず、まさしく単コロらしくトコトコと気持ちよさそうに走るだけだった。いやいや、スクラム411の雰囲気につられてつい口走ってしまったが、“単コロ”なんて言葉、何年ぶりに使っただろう。
フューエルタンク上の赤と白のグラフィックは、あか抜けているといっていい。ロイヤルエンフィールドは現在、インドと英国にテクニカルセンターを設けているというから、デザイン面でも個性を発揮できるよう努めているのだろう。
ただ、セミダブルクレードルに空冷単気筒。自分が二輪免許を取得した20歳の頃のスペックそのままのオートバイが、いま目の前で涼し気に新顔として走っているのが、奇妙で仕方なかった。
「僕らが欲しいオートバイって、結局こういうことかもしれませんねぇ」。ホッタ青年は常に、体形に似合わずいいこと言った風な顔をする。けれど確かに、まるで力まず乗れる点で、こういうオートバイは今や希少かもしれない。そして不安になった。実はツッコまれているのになにもボケられないでいるのは、こっちかもしれないと。
さておき、ロイヤルエンフィールドがなんなのかわからないから腕組みをしてしまったのだけど、困りごとはもうひとつ湧き上がっていた。「スクラム411、思っていたより全然いいじゃん」。そんな不意の欲望に困る必要はないだろうと、もう一人の自分がツッコミを入れてきた。お前も40年前かよ!
(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
これでなにか足りませんか?
ベネリ・レオンチーノ125
デジャブ? タイムリープ? あるいは加齢による記憶障害? いろんな単語が頭の中をぐるぐるしたけれど、とにかくコイツには見覚えがある。機会も場所も、今と同じJAIA試乗会の大磯ロングビーチだったはず。
あれこれ思い出してきたぞ。ベネリは1911年にイタリアで創業した老舗ブランドで、最近になり中国企業の傘下に入って小型車中心でニューモデルを発表するようになり、けれど“レオンチーノ”という初めて食べるパスタみたいなバイクの名前は、旧体制時代のベネリが発売した「小さなライオン」を意味する同名小型車から継承したという、なかなかいい話を原稿にまとめた覚えもある(参照)。
それから、フロントフェンダーの先端にちょこんと乗ったオブジェを「マーライオンみたい」とちゃかしたのも、webCGのスタッフだったんじゃないか?
「あのとき乗ったのは『250』です。これは新しい原付二種の『125』ですよ」。これは、例によって常に現場を仕切るwebCGのホッタ青年の言葉だ。今回の試乗会で予想を超える試乗枠をゲットできたことに終始ご満悦ながら、こちらの勘違いを指摘するときは冬の相模湾のようにドライでクールになる。
いやでも、見間違えますって。「デザインド・バイ・イタリー」と明記した外観デザインは前に触れた250とそっくりだもの。なおかつラインナップ上の属性も同じスクランブラーでしょ。なにより、車格が125とは思えないほど立派じゃないですか!
試乗フィーリングもほぼ同一。12.8PS(9.4kW)の最高出力を発生するSOHC 4バルブの水冷4ストローク単気筒エンジンは、さすがに荒野を重機で開拓するようなパンチ力はないものの、切り出した木を一本ずつ運び出すきこりに似た爽快感と元気を感じる。これといったギミックのない操作系にしても、基本的には骨太でしっかり感があり、「これでなにか足りませんか?」と問われたら、めっそうもないと答えざるを得ない、そんな完成度の高さも漂っている。
125、ありかも。これが総論。高速道路に乗れないとか、それ以上に見えを張れないとか、そんな理由でこのクラスを避けてきたものの、では所有欲を満たしてくれる大型モデルを気軽に引っ張り出せるかといえば、そこは年齢的なおっくうさが手伝って、次第に乗らない時間が増えてくるところもある。だったら……。
と、実を取るべき判断が総論の後ろ盾になりました。こんなこと言ったらしかられるかもしれないが、どこのどんなバイクか声高に主張していないし、しかもサイズ感がクラスレスで、だからやっぱりベネリは、「これでなにか足りませんか?」というささやき戦術に長(た)けたブランドなのだと思った。ホッタ青年、そこは二度と忘れません。
(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
トライアンフ・スピードツイン1200
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×780×1095mm
ホイールベース:1415mm
シート高:809mm
重量:217kg
エンジン:1200cc 水冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:100PS(74kW)/7250rpm
最大トルク:112N・m(11.4kgf・m)/4250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.1リッター/100km(約19.6km/リッター、欧州仕様参考値)
価格:172万5000円
ロイヤルエンフィールド・スクラム411
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2210×840×1165mm
ホイールベース:--mm
シート高:795mm
重量:194kg
エンジン:411cc 空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブ
最高出力:24.3PS(17.9kW)/6500rpm
最大トルク:32N・m(3.3kgf・m)/4250rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:83万8200円~85万3600円
ベネリ・レオンチーノ125
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2030×840×1115mm
ホイールベース:1370mm
シート高:795mm
重量:145kg
エンジン:125cc 水冷4ストローク単気筒SOHC 4バルブ
最高出力:12.8PS(9.4kW)/9500rpm
最大トルク:10N・m(1.0kgf・m)/8500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:45.5km/リッター(WMTCモード)
価格:45万3200円
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田村 十七男

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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