混雑具合で料金変動!? 高速道路の新課金プランで交通環境はよくなるか?
2024.06.24 デイリーコラム“差額”は大きな決め手になる
高速道路の料金を時間帯や区間で変動させる“ダイナミックプライシング”が、全国で導入されることになった。国の経済財政運営の基本となる「骨太の方針」原案で、「ETC専用化を踏まえ、2025年度より段階的に混雑に応じた柔軟な料金体系へ転換していく」と明記されたのだ。
混雑する時間帯の料金を高くし、閑散時に安くするダイナミックプライシングは、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)や東京ディズニーリゾートなどのテーマパークでも導入済みで、おおむね理解が得られている。高速道路では、2023年7月から東京湾アクアラインで社会実験が行われており、それなりの効果が確認された。今後全国に適用を拡大し、混雑を緩和してより効率的な運用を図ろうということだ。
高速道路のダイナミックプライシングの導入は、経済的にはまったく正しい。混雑する時間帯の利用者は、料金は上がってもそのぶん渋滞が減れば、損得の感覚はトントンに近くなり、すいている時間帯に走れば、料金が安いのでトクになる。東京湾アクアラインの場合、ダイナミックプライシングの導入によって全体交通量は微増。観光施設側にとってもプラスになっている(らしい)。
アクアラインは、通常800円(普通車)の料金を、時間帯によって600円から1200円に変動させている。導入当初こそかなりの混雑緩和効果を見せたが、慣れもあってか、その後、効果は減少している。最大で2倍の料金差だが、絶対額にすると600円しか違わず、差が小さすぎたようだ。たまのレジャーに出かけた利用者にすれば、帰宅の時間帯をずらす動機としてはやや弱い。絶対額で1000円以上の差なら、もっと大きな効果が出るだろう。
2021年の東京オリンピック・パラリンピック開催時は、首都高で1000円の割り増し(3、5、7ナンバーの自家用車のみ対象)が実施され、交通量が平日で9~10%、土休日で25~27%減少した。短期の実施だったが、期間中は「できれば使いたくない」と思わせるのに十分な額だった。
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割り引きゃいいってもんじゃない
高速道路のダイナミックプライシング自体は正しいが、重要なのは具体的な料金変更内容だ。ちょっと上げ下げする程度では効果はミクロになるし、極端すぎても弊害が出る。どれくらいが適正なレベルか、見極めが難しい。
例えば土休日の東名高速・東京~御殿場間(83.7km)をどのような料金にするか、思考実験をしてみよう。現在の料金(普通車)は以下のとおりだ。
<通常>2620円
<ETC休日2割引>2170円
<ETC深夜3割引>1830円
個人的には、東京および大阪の100km圏内では、休日割引を廃止すべきだと考えている。休日割引は一種の景気浮揚策だが、レジャーの週末集中を助長するなど、マイナス面のほうが大きくなっている。
そのうえで、どの程度の料金変動が適切か?
東名で20km以上の渋滞が発生するのは、土曜日の下り(8時~15時)と日曜日の上り(15時~21時)。渋滞の先頭はどちらも綾瀬スマートIC付近だ。そこから一案を考えてみた。(※いずれも時間判定は入口料金所通過時)
【土曜日下り】
- 0時~6時:3割引=1830円(深夜割引の延長)
- 6時~15時:2割増=3140円
- 15時~24時:通常料金=2620円
【日曜日上り】
- 4時~14時:通常料金=2620円
- 14時~21時:2割増=3140円
- 21時~翌日4時:3割引=1830円(深夜割引の前倒し)
これだと最大1310円の差になり、かなりの効果が期待できる。適用範囲を東京・大阪近郊100km圏内とすれば、時間帯による料金の最大差は1500円程度となる。
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地域に応じたプランが必要
一方平日は、業務利用が多数を占めている。業務の場合、利用時間帯をずらすのが難しく、物流の人手不足問題に拍車をかける懸念もある。朝夕など混雑時間帯の料金を割り増ししても、一般道の渋滞激化など、マイナス面が大きく出るかもしれない。
そこで、東京オリパラ時の首都高同様、割増対象は自家用車に限定すべきだ。あるいは東京圏・大阪圏に設定されている大都市近郊区間(約40km圏内)の割増率を、現状の2割から3割に拡大するなどして、大都市部の交通量そのものを減らす施策が適当ではないか。高速道路で日常的に渋滞が発生しているのは、大都市部だけなのだから。
逆に渋滞とは無縁な地方路線では、全日全時間帯の料金を割引して高速道路の利用を増やし、走行時間短縮を図るべきだ。
今回の「骨太の方針」には、「料金を安くする場合、最大で現在の半額とする」と記載されているが、地方の閑散路線、例えば交通量が1万台/日に満たない区間は、半額かそれ以下が適当だ。交通量が極端に少ない区間の料金収入など、微々たるもの。無料にしたほうが経済効果がアップするケースもあるだろう。ぜひ、大胆かつ繊細な料金設定を実施してもらいたい。
(文=清水草一/写真=清水草一、NEXCO東日本、webCG/編集=関 顕也)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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