第846回:氷上性能にさらなる磨きをかけた横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード8」を試す
2025.10.01 エディターから一言 拡大 |
横浜ゴムが2025年9月に発売した新型スタッドレスタイヤ「アイスガード8」は、冬用タイヤの新技術コンセプト「冬テック」を用いた氷上性能の向上が注目のポイント。革新的と紹介されるその実力を、ひと足先に冬の北海道で確かめた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
4年ぶりの全面改良で8代目に進化
関東以西の平地に暮らす人には「まだまだ冬は来ないでしょ!」という実感しか湧かないのが10月の気候。例によって、というべきかそんなタイミングであってもすでにスタートを切っているのがそのシーズンの冬タイヤ商戦だ。実際、10月に入ればもう冬タイヤに交換する人も少なくないというのが降雪地帯での暮らしぶりである。
今回紹介するのも、そんな今シーズンの冬タイヤ商戦に勝負をかけるアイテムのひとつ。横浜ゴムが2025年7月に発表した乗用車用スタッドレスタイヤ最新作となる、アイスガード8(参照)である。
そんな商品名の中に入る「8」という数字は、アイスガードの前身にあたる「ガーデックス」ブランドから同社初となるスタッドレスタイヤが1985年にローンチされて以来、第8世代にあたることに由来したもの。先代の「アイスガード7」が2021年のデビューだったので、4年ぶりのモデルチェンジということになる。
「よりちゃんと曲がる、よりちゃんと止まる」をキャッチフレーズに登場したアイスガード7にはさまざま車種でのテストドライブ経験があるが、率直に言ってその総合バランスの高さには感心させられることがたびたびだった。最重要項目である雪上・氷上性能は同世代スタッドレスタイヤのなかでトップランナーにあることを教えられたし、そんな環境に至るまでに遭遇チャンスの多いシャーベット路面での耐ハイドロプレーニング性能や、さらには乾燥した舗装路面上での静粛性・乗り心地などにおいても、純粋なサマータイヤに対する明確なハンディキャップを感じさせられた記憶は皆無。
そうしたこともあって、「なんだったら次のシーズンもこのまま引っ張っていけるんじゃない⁉」と、個人的には思えていたのがアイスガード7の実力であった。しかし、それでよしとせずにフルモデルチェンジを敢行するというのだから、アイスガード8はよっぽどの自信作なのだろうと容易に想像がつくのである。
目指すはプレミアムスタッドレスタイヤの頂点
ガーデックスの初代モデル以来これまで7世代におよぶヨコハマのスタッドレスタイヤ開発の歴史は、「氷上性能向上の歴史」と言い換えてもいいものだった。
例えば、アイスガードのブランド名を初採用した2002年の第3世代モデルでは「氷上性能の飛躍」、2008年の第4世代では「氷上性能の進化」、そして2012年の第5世代では「氷上性能と省燃費性能を高次元で両立」などなどと、その開発のコンセプトには常に“氷上性能”という言葉が(おらく意図的に)用いられてきた。
そうした一方で、あまりに氷上性能ばかりにフォーカスするとトレッドの接地面拡大のために”排水路”となるグルービングが犠牲になって、シャーベット路面でのハイドロプレーニング現象が悪化する……といったネガティブな意見を耳にすることもあったし、最近ではそのあたりを指摘しながらオールシーズンタイヤのプロモーション活動が行われるといった傾向がみられるのも事実。安価なアジアン・スタッドレスタイヤも無視できない存在になりつつある。
けれども、「世界有数の降雪量に見舞われると同時に交通量の多い日本の降雪都市では、日中に雪や氷が解け、それが夜間に再凍結するなど特異で世界屈指の過酷な環境が存在。それゆえに氷上性能の進化は30年前から変わらず最も求められるユーザーニーズ」と、見方によっては”逆張り”とも受け取れそうな姿勢を明確にするのが横浜ゴムの基本スタンスだ。
ただ、そうした氷上性能の進化の歩みにはこれまでのやり方では限界がみえ始めたため、”接触密度”と”接触面積”という2つの視点から氷とゴムの接触を最大化して氷上性能を革新的に高めようというのが「冬テック」と名づけられた新しい技術コンセプトである。
そんな冬テックを初採用したアイテムとうたうアイスガード8では、コンパウンドに従来よりも小型化された基盤素材「水膜バスター」を高密度で配合し、強力に吸水しながら剛性も向上させた「冬ピタ吸水ゴム」を用いた。アイスガード史上で最大のブロック剛性と溝エッジ量を持つというトレッドパターンも新採用している。また、ショルダー部分を張り出させた新しいプロファイルでアイスガード7以上に広い接地幅を稼ぎ出すなど、フルモデルチェンジにふさわしい新機軸を満載してのデビューとなった。
いわば、あらためてプレミアムスタッドレスタイヤとしてのポジションを模索しているようにもみえる一品である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
丸4年分の進化の成果を明確化
今回、北海道・旭川に位置する横浜ゴムの冬タイヤ用テストコース「TTCH(Tire Test Center of Hokkaido)」のハンドリング路や2023年に開設した自慢の屋内氷盤旋回試験場などで、搭載するパワーユニットや駆動方式、車格などが異なるさまざまな車両にアイスガード8を装着して初チェックを実施。そこでまず驚かされたのは、特にセリングポイントには挙げられていなかった新雪路面での圧倒的ともいえる接地感の高さだった。
比較のために用意されたアイスガード7を装着した車両でもさしたる不満はなかったのは事実。けれどもアイスガード8装着車では、スタート時のアクセルひと踏みの瞬間から、もはや「誰でも違いがわかる」というレベルでトラクション能力に差を感じた。「これはいいかも!」と思いつつ次いでコーナリングやブレーキングを試しても、こちらも同様に好印象である。繰り返すが、これまでベンチマークだと思っていたアイスガード7に対しての印象なので、これは今回試すことがかなわなかったリアルワールドでのポテンシャルにも期待大だ。
氷盤路でのブレーキングや定常円旋回時の性能も全般にアイスガード7のデータを完全にしのぐもの。そもそも、比較対象として用意された従来モデルを上回る結果を残すのは当然といえば当然なわけでもあるが、それでも絶対的なGの小ささゆえ体感での差がわかりにくい氷上でのチェックでも、例えば14%アップを掲げるブレーキング性能では静止に至る寸前の減速Gがより強く実感できた点などに、2021年のアイスガード7の登場以来、丸4年分の進化が成果として明確化されていたように思う。
前述のように今回はTTCH内でのチェックに限られたため、あらかじめお膳立てされた雪上・氷上以外でのポテンシャルは未知数。けれども、そこで得られた限定的なフィーリングから察するに「舗装路面上を含めたリアルワールド下での実力を知るのがなんとも楽しみ」というのが、ファーストコンタクトで得られたアイスガード8に対する率直な印象となった。
(文=河村康彦/写真=横浜ゴム/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
トライアンフ・トライデント660(6MT)【レビュー】
2026.8.15試乗記英トライアンフのミドル級ネイキッドスポーツ「トライデント660」が、大幅に進化。エンジンを強化し、フレームやサスペンションを見直すなど、全方位的に走りに磨きをかけてきた。速さと乗りやすさを同時に追求した一台の、ライドフィールを報告する。 -
NEW
目指すは究極の走りと官能性 「ランボルギーニ・レヴエルトSV」の核心をキーマンが語る
2026.8.15デイリーコラムランボルギーニが「レヴエルト」の進化モデル「レヴエルトSV」を発表。強力なV12エンジンとプラグインハイブリッドシステムを搭載したフラッグシップは、いかなる進化を遂げたのか? V12モデルのディレクターを務めるキーマンが、その核心を語った。 -
ボルボのフラッグシップ電気自動車「EX90」が上陸 軌道修正された電動化戦略の今を探る
2026.8.13デイリーコラムボルボのフラッグシップ電気自動車(BEV)「EX90」と「ES90」が日本に上陸。2030年までに完全BEVブランドになるという目標は軌道修正したが、2040年までに温室効果ガス排出ゼロ企業を目指す方針に変わりはない。ボルボの電動化戦略の今を探る。 -
第974回:「民生用」と「軍用」をまたぐクルマたち――ルノーの最新戦術車両に思う
2026.8.13マッキナ あらモーダ!ルノーのクロスオーバーSUV「ラファール」がまさかの軍用車に? ルノーと軍需との第1次大戦にまでさかのぼるつながりと、彼らが今ふたたび防衛産業と距離を詰め始めた理由、世界的に見られる軍用と民生用の垣根を超えたクルマの歴史を、大矢アキオが解説する。 -
「スバルBRZ」が採用した「新しいシフトレバー構造」とは何か?
2026.8.12デイリーコラム2026年7月31日に発表された「スバルBRZ」の最新モデルでは6段MTへの「新しいシフトレバー構造」の採用がうたわれている。すでに熟成し切った技術のように思われるマニュアルトランスミッションだが、2026年にもなってどんな構造を取り入れたのだろうか。スバルに聞いてみた。 -
第124回:「日産エルグランド」と「メルセデス・ベンツVLE」(前編) ―絶対王者に戦いを挑む、次世代高級ミニバンのカーデザイン―
2026.8.12カーデザイン曼荼羅日産が新型「エルグランド」を発売し、海の向こうではメルセデス・ベンツが「VLE」を発表するなど、いまにわかに盛り上がりを見せている高級ミニバンのかいわい。新興勢力は王者「トヨタ・アルファード」の存在を超えられるのか? カーデザイン視点で考えた。











































