アウディA6スポーツバックe-tronパフォーマンス(RWD)
気になるところもあるけれど 2025.10.25 試乗記 アウディの新しい電気自動車(BEV)「A6 e-tron」に試乗。新世代のBEV用プラットフォーム「PPE」を用いたサルーンは、いかなる走りを備えているのか? ハッチバックのRWDモデル「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」で確かめた。車名とヒエラルキーにみるアウディの迷い
アウディA6 e-tronとそのスポーツモデルである「S6 e-tron」は、欧州では2024年に(参照)、日本国内ではこの2025年にまとめて発表された(参照)新世代ミドルモデルのひとつである。「A5/S5」と同等クラスのBEVであると同時に、「Q6 e-tron/SQ6 e-tron」のサルーン/ステーションワゴン版ということもできる。
「A6とA5が同クラス?」といぶかる向きもおられるだろうが、A6 e-tronは、2023年に公表された「BEVは偶数、エンジン搭載車は奇数」というアウディの新しい命名法にのっとって企画開発されたもので、それ以前の位置づけでいうと、「A4/S4」や「Q5/SQ5」を名乗っていたDセグメントの車種にあたる。ただし、その命名法は世界的に不評だったようで、すでに撤回されて、今後は以前のモデル名に戻るようだ。実際、この2025年3月(アバント)と4月(セダン)に欧州デビューした新型「A6」はエンジンを積んでいる。なんとも、ややこしい。
しかも、A6 e-tronの全長は4.9m超で、全幅も1.9mを超える。サイズだけを見ると、先代A6(はアバントだけだった)に匹敵……どころか、全幅・全高は逆に大きいくらいである。そして、当然ながら、新しいA6はそれよりもさらに大きくなる。
それはともかく、新しいA6 e-tronも、エンジンを搭載するA5と同様に、車体形式は2種類。ひとつはステーションワゴンの「アバント」で、もうひとつはリアにハッチゲートをもつ「スポーツバック」となる。ノッチバックのセダンとしなかったのは、どうしてもフロアが高くなるBEVで、一定以上の実用性を確保する目的もあったと思われる。
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自慢は驚異の空力性能
A6 e-tronはご想像のとおり、PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)というBEV専用プラットフォームを、同じアウディのQ6 e-tronや「ポルシェ・マカン エレクトリック」と共有する。ただし、Q6やマカンが背高のSUVなのに対して、A6 e-tronは現時点で唯一、PPEを土台とするサルーン/ステーションワゴンである。
A6 e-tron最大の自慢は空力性能だ。0.21というスポーツバックのCd値は歴代の市販アウディで最良だそうで、アバントでも0.24に抑えられている。SUVのQ6 e-tronの場合、100kWhバッテリー搭載モデルの一充電航続距離(WLTCモード)は600km台だったが、A6 e-tronではスポーツモデルのS6 e-tronも含めて全車が700km台をうたう。
背が低いアウディのBEVといえば「e-tron GT」があるが、そのe-tron GTが土台とする「J1」プラットフォームとPPEは別物である。当初からクーペパッケージを想定したJ1の後席フットスペースは、床下をくりぬいたようにフロアが低くなっているが、PPEはそうなっていない。
なので、A6スポーツバックe-tronの後席空間は、ヒザ前の空間こそたっぷり確保されているいっぽうで、足を持ち上げられた体育座り的な着座姿勢になっているのは否めない。また、前席下にもあまり空間がないので、つま先を奥まで差し込むことはできず、そこもどこかゆったりと座れない要因のひとつとなっている。こうして見ると、PPEはどちらかというとSUVパッケージを優先した設計なのだと思わせる。
インテリアデザインは、これまでwebCGでも試乗リポートをお送りしてきた最新のA5、Q6 e-tron/SQ6 e-tron、Q5などのそれと、同じではないがよく似ている。運転席の11.9インチ、センターの14.5インチ、そして助手席の10.9インチ(は全車オプション)という、3枚の液晶がならぶ光景はいかにもイマドキだ。
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「バーチャルエクステリアミラー」はまだ発展途上?
A6 e-tronの日本仕様ラインナップはひとまずシンプルだ。搭載電池は100kWhのみで、標準モデルにあたるA6 e-tronパフォーマンスが後輪駆動(RWD)、スポーツモデルのS6 e-tronクワトロがその名のとおり4WDだ。そして、それぞれにスポーツバックとアバントが用意される。で、今回試乗したのは、後輪駆動のA6スポーツバックe-tronパフォーマンスだ。
興味深いのは、後方を視認するサイドミラーの機能をカメラとディスプレイに置き換えた「バーチャルエクステリアミラー」が、今回の試乗車に装着されていたことだ。バーチャルエクステリアミラーの採用は、アウディとしては初代「e-tron」(現在の『Q8 e-tron』)に続く2例目となり、単体で27万円のオプションとなる。
ミラーのシステム自体は第2世代だそうで、そういわれてみると、ドアトリムに備わるディスプレイ映像は初期のe-tronのそれよりクリアで反応は速く、動きもスムーズに感じられた。機能的なメリットは、悪天候時や夜間でも視認しやすいことと自慢の空力性能がさらに改善することがあるが、サイドミラーで重要となる対象物との距離感がつかみづらいのは相変わらずで、またディスプレイ位置にも制限があるので、今のところはドライバーの視線移動を劇的に減らすこともむずかしい。
この種のデバイスが2016年6月に解禁されて以来、アウディ以外にも採用例はいくつかあるが、最新のそれをもってしても、メリットよりデメリットのほうが大きいのは否めない。もっとも、センサーによるいわゆるブラインドスポットモニターはこのクルマにも備わるので、安全性が損なわれているわけではない。であれば、それならなおさらカメラは不要ということになり、バーチャルエクステリアミラーのブレイクスルーはもう少し先か……というのが正直なところだ。実際、初代e-tronで先べんをつけたアウディも、装着車を急拡大させているわけではない。
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後輪駆動なのに驚異の安定感
走りについては、今回のような撮影込み2時間弱というメディア試乗会では、弱点を指摘するのはむずかしいくらいには優秀だった。しかも、試乗車には同じPPE物件のQ6 e-tronでも好印象しかなかった「アダプティブエアサスペンション」も装着されていたので、なおさらである。Q6 e-tronより低い重心の恩恵もはっきりしていて、ぴたりとフラットな姿勢のまま、まさに滑るかのような乗り心地である。ダイナミックモードにするとクルマ全体の反応速度が引き上げられるが、フラット感はそのまま維持される。
パワートレインの仕立ても、一部BEVにあるような加速性能だけをイキッて主張するものではない。人間でいう思春期を、アウディはとうに終えている(笑)。日常生活用のコンフォートモードではナチュラルな反応で、かりにアクセル全開のような走りをしても必要以上のパワーは出さず、徹底して上品な走り味をくずさない。ダイナモックモードでは、全開時にわずかな加速ショックを意図的に出すものの、不快になる一歩手前でしっかりと調律されている。
それにしても、後輪駆動のアウディというと、個人的にはミドシップの「R8」以来となるが、ステアリングの手応えは軽くてスッキリさわやかであるいっぽう、きっちり曲げたいときには、クワトロより明確に荷重移動を意識する必要があるあたりは、いかにも後輪駆動である。
いくつかのアシスト機能を意図的にカットすると、いわゆる後輪駆動らしく振り回すことは不可能ではない。しかし、本来は右足に吸いつくような加減速特性なのに、余剰トルクはけっして出さない緻密そのもののパワーフィールで、クワトロに対して特別に不安定な感じがしないあたりは、やはりBEVならでは……である。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アウディA6スポーツバックe-tronパフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1925×1470mm
ホイールベース:2950mm
車重:2260kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:367PS(270kW)<ローンチコントロール使用時:381PS(280kW)>
最大トルク:565N・m(57.6kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R20 100H XL/(後)265/40R20 104H XL(ミシュラン・パイロットスポーツEV)
一充電走行距離:769km(WLTCモード)
交流電力量消費率:141Wh/km(WLTCモード)
価格:981万円/テスト車=1244万円
オプション装備:S lineパッケージ<S lineエクステリア+アルミホイール 5スポークトライポッドデザイン ブラックメタリック ポリッシュト フロント:8.0J×20 235/45R20タイヤ、リア:9.0J×20 265/40R20タイヤ[アウディスポーツ]+スポーツシート<フロント>+デコラティブパネル マットブラッシュトアルミニウム リニアエンボス アンスラサイト+ステンレスペダルカバー+ドアシルトリム アルミニウム Sロゴ+ヘッドライニング ブラック+デジタルライトシグネチャー+マトリクスLEDヘッドライトおよびダイナミックターンインジケーター+ステアリングホイール 3スポーク レザー マルチファンクション パドルシフト フラットトップ&ボトム+ステアリングヒーター+シートヒーター フロントおよびリア+リモートエアコンディショナー プラス+e-tronスポーツサウンド>(65万円)/テクノロジーパッケージ<Bang&Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム[16スピーカー]およびフロントヘッドレストスピーカー+MMIパッセンジャーディスプレイ+MMI experience pro+ARヘッドアップディスプレイ+アンビエントライティングプロおよびダイナミックインタラクションライト+USBクイックチャージング[フロント60W/リア100W]>(65万円)/ラグジュアリーパッケージ<アダプティブエアサスペンション+デジタルOLEDリアライト+イルミネーテッドAudi ringsリア+パワークロージングドア>(55万円)/プライバシーガラス(9万円)/スマートパノラマガラスルーフ(42万円)/バーチャルエクステリアミラー(27万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:5648km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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