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さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉

2026.07.10 デイリーコラム 堀田 剛資
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2013年からの歴史に幕

2026年7月9日、スバルがマイルドハイブリッド車(MHEV)の販売終了を発表した。理由は、厳しさを増す環境規制やフルハイブリッド車の投入に伴う、商品ラインナップの見直しのため。現在、MHEVの設定があるのは「インプレッサ」と「クロストレック」だが、どちらも同年9月以降は在庫販売のみとなる。こりゃぁきっと、全国のスバル販売店でブツの奪い合いに……なったりはしないよなぁなと、ちょっと寂しいことを考えてしまった。

この、今日では「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」と呼ばれているスバル初の電動化ユニットは、2013年に小型クロスオーバー「XV」に搭載されてデビューした。その構造は、CVTのプライマリープーリーのエンジンとは逆側のシーブに、小さなモーター/ジェネレーターを接続したもの。当初、ニッケル水素式(容量5.5Ah)だった電池は、後にリチウムイオン式(同4.6Ah)となったが、最高出力13.6PS(10kW)、最大トルク65N・m(6.6kgf・m)の非力なモーターは、最後まで変わらなかった。

ベースとなる2リッターガソリンエンジン車に対する燃費の伸びは、デビュー当初のXV(4WD)では15.8km/リッターに対して20.0km/リッター(JC08モード)、今日のインプレッサ(FF)では、14.0km/リッターに対して16.6km/リッター(WLTCモード)である。

当時の試乗記を見ると、熊倉重春氏のリポート(参照)などに相応な燃費改善の効果が記されているが、正直マーケットの反応は薄かった。このシステムでもエンジンを切り離してのEV走行はできたのだが、「ハイブリッド」と聞いて期待されるほどには電気だけで走ってくれなかったのだ。シングルモーターのシステム構造に、上述のパワー&電池容量とくれば当然なのだが、お初のモデルを「XVハイブリッド」なんて言って売り出したものだから、ファンの期待との間にかい離もあったのだろう。

燃費性能も「高い車両価格の元が取れるぜ!」というほどではなく(というか、よほど好燃費なハイブリッド車でもそういう例はまれだ)、記者も実家の父が「XVを買う」と言い出したときは(参照)、迷いなく「安価な純エンジン車一択」と電話口で強弁していた。まことに恐縮な話だが、それくらい存在意義のビミョーなクルマだったのだ……。

緑深い、長野県は白馬村の山道を駆ける「スバル・インプレッサ」のMHEVモデル。同モデルのMHEVは残念ながら廃止となり、今後は純エンジン車のみのラインナップとなる。
緑深い、長野県は白馬村の山道を駆ける「スバル・インプレッサ」のMHEVモデル。同モデルのMHEVは残念ながら廃止となり、今後は純エンジン車のみのラインナップとなる。拡大
テールゲートを飾る「e-BOXER」のバッジ。今日ではe-BOXERはスバルのハイブリッドの総称となっており、MHEVには写真の青いバッジが、ストロングハイブリッド車には黒いバッジが装着される。
テールゲートを飾る「e-BOXER」のバッジ。今日ではe-BOXERはスバルのハイブリッドの総称となっており、MHEVには写真の青いバッジが、ストロングハイブリッド車には黒いバッジが装着される。拡大
大きくくくればシリーズ・パラレルハイブリッドに分類される「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」だが、モーターも電池も小さいため、走行アシストの効果は限定的。また1モーター方式なので、「エンジンで発電しながらモーターで走行アシストもする」といった動きはできない。
大きくくくればシリーズ・パラレルハイブリッドに分類される「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」だが、モーターも電池も小さいため、走行アシストの効果は限定的。また1モーター方式なので、「エンジンで発電しながらモーターで走行アシストもする」といった動きはできない。拡大
本稿では、純エンジン車との比較ができないので「インプレッサ」の燃費を挙げたが、「XV」の後継車種である「クロストレック」の数値も紹介すると、MHEVの燃費はWLTCモードで16.4km/リッター(4WD車は15.8km/リッター)、JC08モードで19.3km/リッター(同18.8km/リッター)である。少なくとも額面上では、この13年で燃費の改善は見られなかった様子……。
本稿では、純エンジン車との比較ができないので「インプレッサ」の燃費を挙げたが、「XV」の後継車種である「クロストレック」の数値も紹介すると、MHEVの燃費はWLTCモードで16.4km/リッター(4WD車は15.8km/リッター)、JC08モードで19.3km/リッター(同18.8km/リッター)である。少なくとも額面上では、この13年で燃費の改善は見られなかった様子……。拡大
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スバルの独自性を守り続けた13年

過日、そんなスバルのMHEVに、久々に乗る機会を得た。長野で催された「レヴォーグ レイバックS:HEV」の試乗会(参照)で、会場への移動に供されたのがインプレッサのMHEV(4WD車)だったのである。

で、肝心のその印象だが……道中、記者の脳内には常に、「悪くはないんだけど」というフォローが浮かび続けていた。

パワーユニットの質感は悪くない。CVTなのに、アクセルを踏み増した際にエンジンが先走る感覚が薄いのは、やはりモーターアシストの恩恵か。電池容量が小さいので、登坂が延々と続くシーンではアシスト切れを心配したが、意外とそんなこともなかった。ただ、増した車重に四駆機構のパワーロスもあって、そのゆとりは「排気量が大きくなったかのような~」と表せるほどではない。そしてやはりEV走行がすぐに切れるものだから、「ハイブリッドに乗っているんだ」という充実感も得にくいのだ。僭越(せんえつ)ながら、燃費第一のクルマではないのに、燃費オタクじゃないと恩恵を実感しにくいクルマだな……というのが偽らざる印象だった。

それでも記者は、このパワーユニットをねぎらわずにはいられない。世に「ハイブリッドにあらずんばクルマにあらず」の旋風が吹き荒れ、トヨタ、ホンダあたりを除くと、欧州の大御所ですらサプライヤーからのもらいもので急場をしのごうとしていた時代に、年産75万台規模のスバルが、独自の電動化ユニットをこしらえたのだ。それになにより、自動車を取り巻く環境が様変わりするなかで、「エンジン縦置きのFFないしFFベースの4WD」というスバルの独自性を守ってきたのがこのパワーユニットであることは、確かな事実なのである。フェアウェルなのに、終始称賛の記事ではなくて心苦しいけれど、13年の長きにわたり頑張ってきたこの心臓に、大いに拍手を送りたい。

さて、そんなスバル製MHEVの最後の試乗であるが、今回は長野駅から白馬八方尾根までの50.1kmを走破。その間、実に820.5mの高低差を駆け上がり、燃費は車載計読みで10.9km/リッターだった。なんだよお前、結構やるじゃないか。ありがとう、おつかれさま。青いバッジのe-BOXER。

(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=スバル、webCG/編集=堀田剛資)

試乗会場へと通じる急坂を上る「インプレッサ」。4WD車ということでドライブトレインに駆動力を食われている感覚はあったが、10.9km/リッターという区間燃費は、市街地と心臓破りの急坂が主だった道程を思えば悪くないものに思えた。
試乗会場へと通じる急坂を上る「インプレッサ」。4WD車ということでドライブトレインに駆動力を食われている感覚はあったが、10.9km/リッターという区間燃費は、市街地と心臓破りの急坂が主だった道程を思えば悪くないものに思えた。拡大
スバルのマイルドハイブリッドは、CVTに備わる前進/後退の切替機構でエンジンを切り離しての、EV走行も可能な仕組みだった。ただ実際には、よほどじんわりアクセルを踏んでいないとすぐにEV走行は中断されてしまった。
スバルのマイルドハイブリッドは、CVTに備わる前進/後退の切替機構でエンジンを切り離しての、EV走行も可能な仕組みだった。ただ実際には、よほどじんわりアクセルを踏んでいないとすぐにEV走行は中断されてしまった。拡大
ステアリングホイールには、アダプティブクルーズコントロールの車速制御を燃費重視のものに切り替える「ECO-C」のスイッチが。今回は高速道路を走るシーンがなかったので、触れる機会はなかった。
ステアリングホイールには、アダプティブクルーズコントロールの車速制御を燃費重視のものに切り替える「ECO-C」のスイッチが。今回は高速道路を走るシーンがなかったので、触れる機会はなかった。拡大
スバル初の、スバル独自の電動パワートレインだった「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」。13年間、本当にご苦労さまでした。あとは「S:HEV」に任せて、ゆっくりお休みください。
スバル初の、スバル独自の電動パワートレインだった「e-BOXER(マイルドハイブリッド)」。13年間、本当にご苦労さまでした。あとは「S:HEV」に任せて、ゆっくりお休みください。拡大
堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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