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1/22日本が誇るコンパクトミニバンの双璧が、デザインで勝負! 後編では、主に「トヨタ・シエンタ」のデザインを掘り下げてみる。
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2/222003年9月に登場した初代「シエンタ」。2010年に絶版となるも、翌年に不死鳥のごとく復活。数奇なモデルライフを送った一台だった。
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3/222011年5月の復活時には、妙にカクカクした意匠の派生モデル「シエンタ ダイス」も登場。こうしたテコ入れもあって、初代「シエンタ」は実に12年にわたり現役で活躍した。
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4/222代目「シエンタ」は、トレッキングシューズをイメージしたという斬新なデザインで2015年7月に登場。カラーバリエーションも攻めたもので、「エアーイエローにメタリックブルーのアクセント」なんて仕様も選択できた。
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5/222022年8月に登場した3代目「シエンタ」。デザインに関しては、前衛的だった2代目から一転して親しみやすさを重視。車体色にも落ち着いたアースカラーが多数設定されている。
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6/223列目シートの格納はユニークで、背もたれを倒した後に2列目シートの下にしまい込む方式だ。初代から受け継がれる、「シエンタ」伝統のシートアレンジである。
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7/22ロングルーフのシルエットや、ユニークなウィンドウグラフィックとドアの切り欠きが目を引くサイドビュー。いっぽうで、ランプから流れ落ちるような意匠の装飾は、ちょっと“やりすぎ”に感じられた。
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8/22清水氏も述べているとおり、トヨタのデザインは2010年代の半ばごろから激変している。当時は「TNGA」を合言葉にクルマづくりの大改革が行われていたころで、これ以降、デザイン面でも挑戦的なモデルが次々に登場していった。写真は2016年3月のジュネーブショーで発表された「C-HR」。TNGA世代の第2弾モデルだ。
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9/22トヨタデザインの革新を語るうえで外せない人物なのが、2019年からデザイン領域のトップを務めるサイモン・ハンフリーズ氏。1994年入社で、2012年にトヨタデザイン部部長に就任している。
ほった「トヨタデザインの話についても、いずれこの連載でまとめてみたいですねぇ」 -
10/22当初はアバンギャルドだった2代目「シエンタ」だが、2018年9月のマイナーチェンジで、やや落ち着いたデザインへと方向性を微修正。グリルを中心にフロントまわりに手が加わり、カタログ等を飾る訴求色も、おとなしい色味のものとなった。
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11/22現行型の3代目「シエンタ」。テレビCMには“ワン”バサダーことペットモデルのちょうじゅうろう君も出演。動物好きやファミリー層に強く訴求した。(写真:荒川正幸)
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12/22デザインのテーマは「シカクマル」。コーナーを丸めたその姿は、クルマを大きく、偉く見せようというものではなく、コンパクトさや取り回しのしやすさを視覚的にも表現したものだった。(写真:荒川正幸)
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13/223代目「シエンタ」(右下)はデビュー当時、「『フィアット・パンダ』(左上)に似ている!」と一部で騒がれた。
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14/22「フィアット・パンダ」(上)と「トヨタ・シエンタ」(下)のサイドビューの比較。
ほった「一部のグラフィックのせいでシエンタがパクリだってことになるなら、フィアットとシトロエンは、年がら年中お互いをパクリあってたことになりますよ」 -
15/223代目「シエンタ」のデザインスケッチ。
ほった「これを見ると、当初はもっとモノフォルムに近い形を考えていたんですかね」 -
16/22左右のコーナーが大きく、丸く削り込まれたフロントまわり。バンパーやフェンダーと、そこから上のボンネットまわりとで大きく段差がつけられており、非常に立体的な造形となっている。(写真:向後一宏)
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17/22造形に見る3代目「シエンタ」の特徴といえば、やはりこのスタンスのよさ。タイヤが小さく、デザインしろの少ないコンパクトミニバンでありながら、お見事としか言いようがない。(写真:向後一宏)
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18/22そこら辺を普通に走っているので気づかないが、「ホンダ・フリード」と「トヨタ・シエンタ」は、世界的にも希有(けう)なクルマなのだ。欧米にはこんな小さなミニバンはないし、箱型のミニバン自体、今では商用車派生のモデルが主流で、装備もデザインも割り切られている例が少なくない。写真は、渕野氏が「強いて言うなら」と類似車種の例に挙げた「シトロエン・ベルランゴ」だが……。
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19/22全体的にシンプルな印象の、3代目「ホンダ・フリード」のインストゥルメントパネルまわり。助手席のアッパーグローブボックスをファブリックを張ったフタで隠すなど、雑然としたデザインにならないよう配慮がなされている。
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20/223代目「トヨタ・シエンタ」のインストゥルメントパネルまわり。ドリンクホルダーなどにオレンジの差し色を施すなど、あえて収納スペースを強調している。「ホンダ・フリード」とは対照的なデザイン/設計思想なのだ。
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21/22SUVスタイルの「ホンダ・フリード クロスター」。
ほった「そういえば、コンパクトミニバンだと“付加価値デザイン”はオラオラ系ではなくてオフロード系になるんですね」
清水「それどころか、『トヨタ・シエンタ』には初代の『ダイス』を除くと、付加価値デザインの派生モデル自体が存在しないよ」
渕野「トヨタのことですから、深い計算があってのことなんでしょうねぇ」 -
22/22「ホンダ・フリード」(左上)と「トヨタ・シエンタ」(右下)。

渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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