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1/20今回は、日本で最も権威のある自動車表彰制度と言っても過言ではない、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」をテーマに取り上げる。
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2/20COTYは1980年に始まった自動車の表彰制度だ。その年の最も優れたクルマを選ぶ「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に加え、複数の部門賞があり、2024-2025には「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」、そして「実行委員会特別賞」が選ばれた。
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3/20COTYでは、自動車メディアなどによる実行委員会が60人を上限として選考委員を指名。委託を受けた選考委員が、第一次選考(「10ベスト」のノミネート)、第二次選考(最終選考)、そして部門賞の選考投票を行う。
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4/20「スバル・フォレスター」(従来型)と「マツダCX-5」のサイドビュー。
渕野「デザインというのは機能やテクノロジーとのバランスでできていて、しかもその度合いは、メーカーによって違うんですよ」 -
5/20ほった「機能とデザインのバランス度合いの違いについては、メーカーだけじゃなくて、車種や車形に関してもいえそうですね」
清水「ミニバンよりスポーツカーのほうがカッコいいけど、必ずしもそっちのほうが『いいデザイン』とはいえない、みたいなね」 -
6/20直近の「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の結果がこちら。イヤーカーには「ホンダ・フリード」が輝いた。
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7/20いっぽう、部門賞の「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」は「三菱トライトン」が受賞。読者諸氏のなかでも、この結果に「え?」と思った人は、少なくないだろう。
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8/20COTYでは、まずは前年の11月1日から当年の10月31日までに日本国内で発表/発売されたすべての乗用車(ただし、普通の人が普通に買えるクルマ)を選考対象車として、選考委員が投票を実施。得票数の多かった10台が最終選考の対象車種、いわゆる「10ベスト」となり、そこからその年のイヤーカーが選出される。
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9/20袖ケ浦フォレストレースウェイで行われた「10ベスト」の合同試乗会より、「ホンダ・フリード」の取材エリア。
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10/20同じく「10ベスト」の合同試乗会より、サーキットを走る「三菱トライトン」。
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11/20「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の選考対象は「10ベスト」には限定されないので、なかには「フィアット600e」や、「フェラーリ・プロサングエ」を選んだ人もいた。
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12/20「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」で、10人の選考委員が票を入れていた「MINIクーパー」。「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考でも善戦し、トップと48点差(172点)の3位の票を集めた。
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13/20ちなみに、当連載でもグッドデザインの好例として取り上げたことのある「ボルボEX30」は、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」でも7人の投票を集めて健闘。しかし本賞の最終選考では、得票30票のブービー賞となってしまった……。いや、実際には『10ベスト』に選ばれたって段階ですでに、大したことなんですけどね。
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14/20現状、日本で正規に販売されているピックアップトラックは、「三菱トライトン」(写真右下)と「トヨタ・ハイラックス」(同左上)のみで、ほかに横並びで比較できる車種はない。そんなニッチなジャンルのクルマを「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」としてしまうのは、ちょっと無理があるのでは?
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15/20めでたく「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた「ホンダ・フリード」だが、「デザイン・オブ・ザ・イヤー」に投票した人はまさかの1人! このギャップはどういうことだろう?
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16/20想像すればわかるとおり、マーケットのど真ん中に位置するクルマであればあるほど、デザインに対する制約は大きくなる。実用車には多くの厳しい設計要件が課せられるし、売れなければならないクルマゆえ、マーケティング等からの要望も増えるからだ。
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17/20前回までの歴代「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の面々がこちら。上から「マツダMX-30」(2020-2021)、「BMW 4シリーズ」(2021-2022)、「BMW iX」(2022-2023)、「三菱デリカミニ」(2023-2024)。
ほった「これらについても、後編で掘り下げますか?」
清水「うーん。どうしようかなぁ……」 -
18/202023年のCOTYで「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、SUV風の軽スーパートールワゴン「三菱デリカミニ」だったが……。
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19/20皆さんご存じのとおり、「デリカミニ」の実態は、「eKクロス スペース」(写真)のスキンチェンジモデルである。
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20/20「2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考会場となった東京ポートシティ竹芝にて、他のノミネート車と肩を並べる「三菱デリカミニ」。話題性があり、昨今の日本の自動車トレンドを象徴するクルマでもあったデリカミニだが……このクルマが受賞するにふさわしい賞は、本当に「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」だったのだろうか?

渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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