フォルクスワーゲン・ニュービートル カブリオレ(6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ニュービートル カブリオレ(6AT) 2003.08.22 試乗記 ……333.0万円 総合評価……★★★★★ 初代ビートルカブリオレのイメージを上手に残したニュービートルカブリオレ。モータージャーナリストの生方聡が乗った。自然に笑顔が
フォルクスワーゲンの人気モデル「ニュービートル」に、待望のカブリオレが追加された。旧ビートルカブリオレの特徴でもあった、開けた幌をリアに背負うデザインは、このニュービートル カブリオレにも受け継がれている。とはいえ、ニュービートル カブリオレのフォルムは旧型の焼き直しではなく、旧型のイメージを活かしたまったく新しいデザインである。どこか懐かしく、ホッとするようなデザインの新型カブリオレは、見る人を楽しませる才能の持ち主だ。
それ以上に楽しいのが、このクルマの運転。スポーツカーと違って、ハイパワーのエンジンを搭載するわけではないし、とりたててスポーティなハンドリングでもないが、幌を開けて全身に風を受ければ、スピードを上げなくても気持ちは高まり、自然に笑顔が浮かんでくる。スポーティなオープン2シーターもいいが、4人乗りのオープンカーをのんびり走らせるのも楽しいものだ。クルマとの新しい付き合い方が発見できる一台である。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
世界中の人々に愛された“ビートル”のデザインを、現代によみがえらせたのが「ニュービートル」。1994年のデトロイトショーに、「コンセプト1」の名で出展されたプロトタイプが好評だったため、1998年から市販化された。日本への導入は1999年9月から。オリジナルはRR(リアエンジン後輪駆動)だったが、「ゴルフIV」をベースとするニュービートルはもちろんFF(前輪駆動)である。
エンジンは、2リッター直列4気筒SOHC(116ps)が標準。2001年2月26日から、1.8リッターターボを積む「ニュービートルターボ」が、2003年6月14日に、オープンモデルのカブリオレが追加された。トランスミッションは、カブリオレのみ6段ティプトロニックを搭載。ほかは、4段オートマチックとなる。
(グレード概要)
ニュービートル カブリオレは、2003年の「デトロイトショー」で発表された。旧ビートルカブリオレのスタイルをイメージした、クラシカルな外観が特徴である。電動格納式ソフトトップは、手動でロックを外してスイッチを押せば、13秒で開閉する。安全性を考慮して、クルマが転倒などの危機的状態にあると判断されると、リアシートのヘッドレストが伸びる「ロールオーバープロテクションシステム」が0.25秒で作動。乗員の生存空間を確保する。
エンジンは、ニュービートルと同じ1.8リッター直4SOHC(116ps)だが、バランサーシャフトを採用してスムーズな回転フィールを得た。可変インテークマニフォルドによる、フラットトルクもジマン。トランスミッションは、カブリオレのみ6段ティプトロニックが組み合わされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
カブリオレのインテリアは、基本的に標準ボディと同じ。メータークラスターやエアコンの吹き出し口、オーディオや空調のツマミなど、円または弧のモチーフで統一されている点。ステアリングコラム脇の“一輪挿し”は健在だ。楽しい雰囲気をつくりながら、子供っぽくないのがいいところ。グラブボックスやセンターコンソールにロックが付いたり、キーでトランクリッドオープナーを停止することができるなど、カブリオレならではの機能も搭載する。これなら、オープンのままクルマを離れても心配はいらない。
(前席)……★★★
シートは、ボディカラーによってブラックまたはベージュのレザーが組み合わせられる。わりとゆったりした座り心地で、このクルマの雰囲気に合っている。寒い時期のドライブに重宝するシートヒーターは、標準装備。オープンの状態では、サイドウインドーを上げた状態でも後ろからの風の巻き込みは強く、冬場はオプションの「ウインドディフレクター」がほしい。ソフトトップをトランクに背負うデザインは、旧ビートルカブリオレのイメージを受け継いだものだが、そのせいで後方視界はあまりよくない。バックセンサーが標準で装着されるのも納得がいく。
(後席)……★★
シートバックがほぼ垂直に立つリアシートは、くつろげる雰囲気ではないが、大人でも足下には必要最低限のスペースが確保される。下手なミニバンの3列目より快適。幌を開けて走ると、前席より開放感があるが、風の巻き込みは相当のレベルだから、それなりの覚悟が必要だ。固定式のロールバーはないが、クルマが横転を感知するとリアシートのヘッドレストがロールオーバーバーとしてが跳ね上がり、乗員の安全を確保する。
(荷室)……★★
標準ボディのトランク容量が209リッターであるのに対し、カブリオレの場合は201リッター。幌がトランクスペースを侵食しなかったおかげで、容量の減少幅は最小限だが、絶対的なスペースは狭い。さらに、センターピラーがないため、リアシート背後に車両転倒時の安全性を確保する「ロールオーバープロテクションシステム」を格納するので、リアシートを倒すことはできない(ゴルフカブリオレはセンターピラーを備えるため、可倒式だった)。スキー板などの長尺物はトランクスルーを使えば収納できる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ニュービートルカブリオレに搭載される2リッター直列4気筒SOHCエンジンは、最高出力116ps、最大トルク17.5kgmのカタログデータから想像される以上に頼もしい。低中速域のトルクが豊かで、ピックアップに優れるから、街なかのドライブにストレスはない。組み合わせられるティプトロニック付6段オートマチックもスムーズで、標準ボディより110kg増えた車両重量を感じさせず、オープンカーに相応しい軽快なドライブを実現する。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
オープンボディ化にともない、Aピラーやフロアなどを強化したおかげで、ボディの剛性感は高いレベル。車両重量増にあわせて、サスペンションのスプリングとダンパーを標準よりもハードに設定してはいるが、乗り心地は重厚で、しっとりとした印象である。205/55R16のオールシーズンタイヤ、ミシュラン「MXV4プラス」も快適な乗り心地に貢献する。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年6月17〜18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6668km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ(いずれもミシュラン MXV4プラス)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:117,2km
使用燃料:20.0リッター
参考燃費:5.9km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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