第47回「スーパースポーツとは何か?」

2014.05.02 水野和敏的視点 水野 和敏

「大人のスポーツカー」というものがよくわかっている――「メルセデス・ベンツSL63 AMG」

連載の原点に帰るという意味合いを込めて行った「春のスーパーカーテスト」を先週で終えました。「フェラーリ458スパイダー」に「ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4」、そして「メルセデス・ベンツSL63 AMG」と、いずれも劣らぬ個性派3台に乗ったわけですが、その主張も三車三様で、なかなか面白い試乗となりました。今週はこれら3台を振り返りながら、スーパースポーツカーとは何かをあらためて考えてみたいと思います。

まずはメルセデス・ベンツから見ていきましょう。SL63 AMGは、どうしても「フロントヘビー、リアライト」というパッケージの束縛から逃れることができません。あれ以上キャビンを長く、ずんどうにしてしまったら「スポーツクーペ」というイメージがなくなってしまいますから、運動性能面からは少々苦しいでしょうが、商品性という面からは現在の姿がベストのバランスといえるでしょう。

重量バランスの悪さゆえ、シリアスなスポーツ走行時には、ともするとリアが急激に破綻しそうになります。そこで、ブレーキの配分を前寄りにしたり、挙動の乱れを抑えるVDCの介入を早めにしたり、といった手を打っています。

リアサスペンションを柔らかめにセッティングして、コーナリング時の限界をギリギリまで高くしていないのも、同じ考え方からです。SLは、リアがスコーンと抜けたらすかさずカウンターを当てて……という乗り方をするクルマではありません。60代、70代の年配ドライバーが、余裕を持ってドライブする。そういうクルマです。

限界手前の挙動を穏やかにし、ブレーキやVDCで安全マージンをしっかり確保する。SL63 AMGのステアリングホイールを握っていると、「カスタマーの姿がよく見えているな」と感心します。やたらと足まわりを硬くしたり、限界を上げたりするだけがスポーツモデルではないのです。メルセデスは「大人のスポーツカー」というものが、よくわかっています。


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メルセデス・ベンツSL63 AMG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1875×1300mm/ホイールベース:2585mm/車重:1880kg/駆動方式:FR/エンジン:5.5リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ/トランスミッション:7AT/最高出力:564ps/5500rpm/最大トルク:91.8kgm/2250-3750rpm/タイヤ:(前)255/35ZR19 (後)285/30ZR20/車両本体価格:2036万5000円(消費税8%込み)
メルセデス・ベンツSL63 AMG
    ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1875×1300mm/ホイールベース:2585mm/車重:1880kg/駆動方式:FR/エンジン:5.5リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ/トランスミッション:7AT/最高出力:564ps/5500rpm/最大トルク:91.8kgm/2250-3750rpm/タイヤ:(前)255/35ZR19 (後)285/30ZR20/車両本体価格:2036万5000円(消費税8%込み) 拡大
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