ランボルギーニ・ウラカンLP580-2(MR/7AT)
生粋のスーパーカー 2016.07.28 試乗記 「ランボルギーニ・ウラカン」の後輪駆動モデル「ウラカンLP580-2」に試乗。運転する楽しさの本質が追求されたこのモデルは、素晴らしく運転しやすくなった現代のランボルギーニのなかでも“生粋のスーパーカー”といえる存在だ。4WD車メーカーがつくる2WD
現在のランボルギーニは基本的に4WD車メーカーといっていい。
先代の「ムルシエラゴ」以来、同社の12気筒旗艦モデルには4WDしか存在しない。それより小さいベイビーランボにしても4WDが先行発売される。で、そのベイビーランボでのみ需要が一巡した時期に2WDを追加……というのが、最近のランボに共通するタイムテーブルである。
いっぽうで、ランボは歴史的にフェラーリよりワイルドなイメージで売ってきた。往時を知る中年以上のエンスージアストのなかには、ランボは2WDのほうが似合う……と、いまだに信じる向きも少なくないだろう。
ただ、ランボは数あるスーパーカーのなかでも、早期に4WDに着目したメーカーのひとつでもある。1993年に当時の「ディアブロ」に「VT」を追加して以降、ランボにはずっと4WDモデルが存在する。そもそもが600psだの700psだのという途方もないパワーをうたう超高性能車なのだから、「4WDのほうが安全・安心に速い」というのはまったく自明の正論である。
それに加えて、現在のランボはアウディのコントロール下にある。おそらく世界一であろう4WD技術をほぼ自由に使える立場にあるわけだから、ランボが4WDに注力するのは、しごく当然のなりゆきといっていい。
今回のウラカンLP580-2も、前記のタイムテーブルに沿って登場した2WDのベイビーランボである。ただ、先代「ガヤルド」の経験もあってか、今回はガヤルドのときよりずいぶんと早い段階での登場となった。ウラカンそのものの発売から約2年という今回の時系列を考えると、ウラカンでは初期企画の段階から、2WD化も前提に設計開発されたであろうことは想像にかたくない。
“お祭り的演出”は万全
ウラカンLP580-2はフロントバンパーなどに2WDならではの仕立てが施されるものの、私のような門外漢が街中で転がすかぎりは、それはウラカンそのものだ。
ウラカンはドアを開けてコックピットに座り、エンジンを始動するだけで、もう、お祭りさわぎである。先代ガヤルドは良くも悪くもドイツ車的な質実剛健デザインで、生真面目なスーパースポーツカーだったが、スーパーカーとしての派手さにはハッキリ欠けていた。ウラカンにおける最大の変更点というか、反省点はそこにあって、ウラカンの内外装デザインや操作ロジックは、数あるスーパーカーでもいちばんお祭り的なサンプルである。
ステアリングコラムから突き出るのは、7段ツインクラッチ変速機をマニュアル操作するためのパドルのみ。灯火類のスイッチまで、F1やWECマシンよろしく、ステアリングにボタンやスイッチを集中配置するのは昨今のスーパーカートレンドである。
ちょっとした機能もいちいち独立ボタンにずらりと並べる確信犯。エンジンスターターには“核ボタンかよ!?”の引き上げ式ガードバーが備わる。走行中に不意に触らないため……という機能性が皆無ではない。しかし、そこは走行中は電子的に無効化するが普通だし、日本人としてはさほど細くない私の指でも、その気になればガードのすき間からスターターボタンを押すことは可能だ(笑)。
5.2リッターV10にアイドルストップまで(さらに表示を見なければ気づかないほど洗練された片バンク気筒休止まで!)備わるのはいかにも現代風だが、いかんせんエンジン音が盛大なので、停止と再始動を繰り返すと、逆に騒がしい。今回も走りだして早々にアイドルストップを解除してしまったのは、早朝の都心から試乗スタートで、アイドリングし続けたほうが悪目立ちしない気がしたからである。
そのちがい、明確
2WDのウラカンは街中でも、4WDより乗り心地がよく感じられたのは本当である。
いや、4WDのウラカンも見た目からは想像もできないほど乗り心地がいいのだが、アシがいかにもスイスイと動いている感覚は、これまでのwebCGの試乗記にあるように、全体に4WDよりサスペンションが柔らかく設定されているおかげだろう。さらに、とりわけリアのストローク感が滑らかで豊かなのも、試乗記の記述に合致する。
このレベルの高性能車は今ではトラクションコントロールや横滑り防止装置がついていることが大前提で、それをどう活用するかが最大の勝負どころである。よって、重量配分その他の微調整はあっても、4WDだ2WDだ……ということだけで、ここまでサスペンションを変えるケースはあまり例がない。実際、「ポルシェ911」の2WDと4WDも、ここまで明確なちがいはない。
ウラカンが最初から2WDが想定されていたといっても、その発売時期には4WDから2年ほどのラグがある。こういう場合、実際の開発現場では間違いなく「まずは4WDありき」のクルマづくりになることは、ランボにかぎったことではない。
また、諸先生方の試乗記にあるように、ランボはこのモデルを発売するにあたって、「だって、2WDのほうが安くできるし、間違いなく売れるじゃん!」という単純明快な理由をあえて伏せて、「なぜ2WDなのか?」を理屈立てて回りくどく説明している。これはブランディングの一環だろう。
と同時に、今のランボは冒頭のように、圧倒的なトラクションを最大の売りとする4WD車メーカーなのだ。そんな自分たちがあえて2WDを手がけるのだから、理論武装と商品の差別化には、敏感にならざるをえない。それが、このウラカンLP580-2のデキにもあらわれている。
想像以上の安心感
ウラカンをあえて2WDとした理屈を、ランボは「オーバーステアでのコントロール性を楽しむため」と定義する。それがLP580-2独自のサスペンションチューンでも意図されたところだという。
今回の試乗は一般公道にかぎられたので、そんな限界領域の神髄については、これまでのサーキット試乗記を参照いただきたい。……というか、そんなことを試す度胸もウデも私は持ち合わせていないし、この超絶高性能の領域を一般道で再現しようとする行為は、2WDだろうが4WDだろうが関係なく、もはや完全に夢物語である。
ただ、この種のミドシップ後輪駆動スーパーカーのなかでも、この2WDウラカンは駆動輪に明らかにしっかりとした接地感を伝えてくるタイプなのは確かだ。一般道でグリップ限界をうかがうようなスピードに持ち込むのはご法度だが、その限界まで今この瞬間にどれくらいのマージンが残っているのか……。ウラカンの2WDは、いかなるスピードで走っていても、それが直感的に把握できて、実際の走りにはそのスペックから想像する以上の安心感がある。
さらにウラカンが今や貴重な大排気量ハイチューン自然吸気エンジンであることも、安心感にひと役買っている。この大排気量が瞬間的には約9000rpmまで回り切って、そこで突き抜けるようなパワーを発揮するのはいかにも自然吸気の快感である。だが、それ以上にわずかな操作にも緻密かつ正比例に増減するトルク特性がうれしく、信用できる大きなポイントだ。ターボのようにどこかでいきなり噴火しそうな変な緊張感は皆無。もちろん4WDほどの絶大な信頼は寄せにくいものの、「この路面でこのタイヤ、このパワーなら、これくらいはイケるだろう」といった当てずっぽう運転はまったく不要である。
どう走るかはあなた次第
ウラカンが見た目よりはるかに運転しやすいという美点は、2WDとなっても健在であることは確認できた。
絶対的な全幅と低さ、そして相変わらず絶望的な後方視界にこそ注意する必要はあるものの、幅員に余裕のある舗装道路ならば、特別な気づかいやコツはなにもいらない。
先代ガヤルドでまさに“絶品”級だった車両感覚は、スーパーカーらしさを強調したウラカンではわずかに後退はしている。それでも、運転席とフロントタイヤを近い位置にレイアウトできるミドシップ(この点はリアエンジンでも同じだが)ならではの利点はウラカンでも存分に生かされている。
フロントタイヤの位置とリアタイヤの接地感……という2つの命綱が強固だから、2WDだろうと4WDだろうと、ウラカンはただの粗暴な猛牛とならない。なるほど2WDと4WDで旋回速度や限界性能、そしてドライビングスタイルにちがいはあるが、そこは乗り手の探究心と自制心の責任である。
元も子もないことを承知でいえば、電子制御デバイスが大前提の現代のスーパーカーにとって、駆動方式は問題ではない。一般公道で駆動方式のちがいが問題になるような領域に踏み込むほうが悪い。
それでも雨天やブラインドコーナーなどの悪い条件では、やはり4WDのほうが安心感があるし、イザというときの融通もきく。それなりに走らせようとすると、2WDにはやはり独特の緊張感が伴うのも事実だが、そうした(いい意味での)緊張感もスーパーカーの魅力である。ガバ踏みしても速く走れるクルマがほしいなら、ポルシェかGT-Rにでも乗っとけ……というハナシだ。
素晴らしく運転しやすくなった現代のランボでは、ウラカンLP580-2がいちばん生粋のスーパーカーだと思う。
(文=佐野弘宗/写真=小河原認)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンLP580-2
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4459×1924×1165mm
ホイールベース:2620mm
車重:1389kg(乾燥重量)
駆動方式:MR
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:580ps(426kW)/8000rpm
最大トルク:55.1kgm(540Nm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.9リッター/100km(約8.4km/リッター 欧州指令EC/1999/100準拠 複合燃料消費率)
価格:2535万840円/テスト車=2813万5512円
オプション装備:エクステリアカラー:シルバーメタリック(Grigio Ninbus)(24万5592円)/トランスパレント・エンジンボンネット(with forged composites engine bay)(68万2020円)/ホイールリム(Giano)20インチ(47万7468円)/スチール・ブレーキキャリパー(グリーン)(12万2688円)/リフティングシステム(34万1928円)/Bluetooth+ハンズフリー機能(9万5580円)/パークアシストセンサー(フロント&リア)+リアビューカメラ(38万1888円)/インテリア:バイカラースポルティーボ(inverted stitching)(6万8256円)/ブランディングパッケージ(9万5580円)/ウニカラースポルティーボ・アルカンターラ(20万5416円)/レザーパイピング+ダブルステッチフロアマット(6万8256円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:300km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:302.9km
使用燃料:50.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.0km/リッター(満タン法)/6.1km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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