【デトロイトショー2017】名より実をとったアメリカ勢
2017.01.17 自動車ニュース![]() |
多くの“ワールドプレミア”を用意するなど、充実した出展内容だった日本勢とドイツ勢に対し、デトロイトがおひざ元のアメリカ勢に目ぼしいニュースはなかった。展示内容に見るデトロイトスリーの本音と、様変わりするショーのトレンドをリポートする。
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急速に進む電動化と自動運転の波
2015年以来、記者にとって2年ぶりとなる今回のデトロイトモーターショーは、その内容の変化にひどく驚かされた。2015年のときは新型「アキュラNSX」や「フォードGT」、そして日米メーカーのピックアップトラックと、速くて大きなクルマが数多く登場し、それを「ビッグ&ファスト」と無邪気に喜んでいたのだ。
ところが、今回はまったく雰囲気が違っていた。プレスデー初日の朝に行われる北米カー・オブ・ザ・イヤーの発表では、乗用車部門で電気自動車の「シボレー・ボルトEV」が選ばれた。また、今回のショーでは特別展示として「MOBILI D」も開催。企画名は「モビリティー」と「デジタル」を掛け合わせたものだろう。会場の地下は自動運転などの次世代技術を紹介するフロアにあてられ、レセプション用のステージでは、朝から晩まで先進技術のプレゼンテーションやトークセッションが行われた。グーグルの自動運転開発部門から独立したWaymoは、クライスラーの「パシフィカ ハイブリッド」をベースにした自動運転研究用モデルをそのステージで紹介。また、フォードはプレスカンファレンスの半分ほどをかけて「自動車の未来」に関するトークセッションを行ったのだ。
ちなみにドイツブランドは、プラグインハイブリッドやEVのコンセプトを持ち込み、電動化技術を前面に押し出している。ハイブリッドは日本のお家芸かと思っていたら、アメリカではドイツにお株を奪われそうな気配だ。
たった2年で、ショーのトレンドは自動運転と電動化へと大きくシフトしていたのだ。なんという振り幅の大きさだろう。
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売れ筋の新型車を用意したアメリカ勢
とはいえ、アメリカ人の生活がそれほど急に変わるわけもなく、実際に売れるクルマもそう大きくは変化しない。実際のところ、アメリカ勢が今回のショーで新型車として発表したのは、売れ筋のピックアップトラックとSUVであった。
フォードはマイナーチェンジで顔つきが新しくなった「F-150」を発表した。日本から見れば、「ピックアップトラックのマイチェンなんてたいしたことない」と思ってしまうだろう。しかし、北米において「Fシリーズ」は超のつく重要モデル。なんと過去30年以上にわたってずっと販売ナンバーワンを守ってきているのだ。日本でいえば「プリウス」と「カローラ」と「アクア」がひとつになったような存在だ。マイナーチェンジでも現地ではビッグニュースになる。
ゼネラルモーターズ(GM)はシボレーブランドからフルモデルチェンジを行った新型SUVの「トラバース」を発表。3列シートのミニバン・クロスオーバー市場における人気モデルで、これもアメリカ市場では大きなニュースになるというわけだ。
しかし、アメリカ勢の新型車はこれだけであった。フォードとGMから1台ずつである。驚くことに、FCAはプレスカンファレンスさえ行っていない。まったくなにも新しいことがないというわけだ。
もちろん、展示ブースにはいずれも非常に大きなスペースが割かれており、ビュイックやGMC、リンカーン、ダッジ、ラムといった、日本に入っていないブランドも相応に大規模な展示を行っていた。フォードやシボレー、キャデラック、クライスラーの展示コーナーには、ほとんどフルラインナップのようにクルマが並ぶ。ニュースを求めると肩すかしだが、一般の来場者としては、十分に楽しいはず。話題性には乏しいものの、リアルな販売に結びつく新型車を用意したアメリカ勢。名より実をとったショーであったのだろう。
(文と写真=鈴木ケンイチ)
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