第4回:バラエティー豊かなモデルが勢ぞろい
輸入車チョイ乗りリポート~600万円から1000万円編~
2017.03.10
JAIA輸入車試乗会2017
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年に一度のインポートカーの祭典、JAIA合同試乗会の会場から、「レンジローバー イヴォーク コンバーチブル」「ポルシェ718ケイマン」「ボルボV60ポールスター」「ロータス・エキシージ」の走りをリポートする。
意外とフツー でも特別
ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSEダイナミック……765万円
「イヴォーク コンバーチブル」は、SUVのオープンモデルってだけで、一度は乗ってみたいと思わせる特別感に満ちている。ワイルドでスポーティー、映画『インディ・ジョーンズ』シリーズが今も制作されていたら、ジョーンズ博士の愛車として登場してほしいクルマ、ナンバーワンだ。
砂漠をも駆け抜けるタフな4WD、そんなモノモノしさも期待して乗り込んでみると、意外や意外、拍子抜けするほどに扱いやすい。横幅は1900mmと大きめだが、全長が4385mm、ホイールベースが2660mmと短い分、想像以上に小回りが利く。このサイズ感は、女性にもしっくりくるはず。
2リッターターボエンジンに9段ATを組み合わせていて、加速は滑らか。重量配分のおかげなのか、どっしりとした見た目のわりには、重量感を感じさせず、ピックアップは軽快だ。回頭性もよく、キビキビとしたコーナリングも楽しめる。そして、なんといっても乗り心地がいい!
オープンカーといっても、室内は、箱の上のふただけを開けたような感じで、乗員はきっちり箱の中におさまってる感がある。大きめのウインドディフレクターのおかげか、窓を開けても、ほとんど風の巻き込みはない。暖房をつければ、すぐに温まるし、頭だけはクールにしていられる。まるで肩まで温泉につかっているような感覚だ。
挙動にまったくクセがないのは、フツーすぎて逆に残念な面もあるが、SUVのオープンというだけで、十分に個性があるといえば、あるわけで。休日にフラッと海沿いを流す、みたいな使い方をするのには、いいだろうな~。なんだかんだいって、やっぱりあれこれ欲しくなってしまった。
(文=スーザン史子/写真=田村 弥)
気分はジョイナー
ポルシェ718ケイマンS……813万円
ポルシェといえば、スポーツカーの頂点に君臨するクルマ、というイメージがある。クルマ作りに対する姿勢がマジだし、私にとってはちと敷居が高い。それでも、「ボクスター」と「ケイマン」には特別な思いがある。“頑張れば手に届くポルシェ”、いつかは手に入れたい憧れのモデルだ。
以前、「S」ではない「718ボクスター」を試乗した際の第一印象は、「あんまり……」だった。街中でのノロノロ運転にもかかわらず、トランスミッションはMTで、ギアチェンジするたびに、やたらゴリゴリと“ホンモノ感”を押し付けてきたから。ま、早い話が、走るところを間違えただけなんだけど。
今回は718シリーズのリベンジ試乗。相模湾を臨む西湘バイパスでケイマンSは水を得た魚のように気持ちよく走ってくれた。とにかくボディーも足まわりもガッチリ硬め。麺でいう、バリカタってやつだ。走行中は水平対向4気筒ターボエンジンの低いうなり声と“ゴリゴリゴリゴリ~”というロードノイズとが室内に反響して、お世辞にも静かとは言えない。荒れぎみな路面では、さらにノイズが大きくなる。
とはいえ、常に聴覚を刺激されている感じと、加圧感のあるタイトなコックピットのいかにもスポーツカーしてるトコがいい。スエード革巻きのステアリングホイールは手触りがよくて、ずっとハンドルを握っていたくなるほど。う~ん、やっぱりポルシェはいいな~!
鼻歌混じりにアクセルを踏み込んでいくと、まるで自分がジョイナーになったような気分になった。そう、1988年のソウルオリンピックで一躍有名になった美女アスリート、フローレンス・ジョイナーだ。全身を筋肉で覆われたガッチリボディーで、バビューンと華麗に駆け抜ける姿は30年近くたった今でも、目にしっかりと焼き付いている。そして、あの長い爪も。後にも先にも、あんなにオシャレなアスリートはいなかったな~。というわけで、これからは718ケイマンSを、“ジョイナー”と呼ぶことにしよう。
(文=スーザン史子/写真=峰 昌宏)
定番は揺るがず
メルセデス・ベンツE220dステーションワゴン アバンギャルド スポーツ(本革仕様)……832万円
「Sクラス」と「Cクラス」に挟まれた「Eクラス」は、メルセデス・ベンツのど真ん中であり軸である。軸であるからには、求められるのは突出した性能より、まずはバランスの良さであり、安定感だろう。そういう意味では、最もメルセデスらしくあらねばならないのがEクラスと言えるかもしれない。
「E220dステーションワゴン」で走りだしてまず感心させられるのが室内の静かさである。2リッター直4ディーゼルターボエンジンが発するノイズの遮断が優れており、加えて室内に透過してくる音も耳障りでない。もちろん9段ATによってエンジン回転数を低く抑えているおかげももちろんあるだろう。制限速度70km/h(ところによってそれ以下)の西湘バイパスを粛々と進む。
そして乗り心地の良さが印象的だ。足元の目地段差を柔らかく飲み込み、姿勢もピシッとフラットに保たれる。Eクラス ステーションワゴンのリアサスペンションには、電子制御セルフレベリング機能付きのエアサスペンションが装着されており、乗車人数や荷物の積載量にかかわらず姿勢が一定に維持されるようになっている。そのおかげで、こうして荷物なしで走っても、ワゴンにありがちな後ろ足が勝った感じがまったくしない。
今回のようなチョイ乗りでも、そのバランスの良さは十二分に体感できた。その完成度の高さゆえに運転していて退屈になってしまうほどだ。ついつい「もう少し刺激的たれ!」なんて矛盾した注文を付けたくなるくらいの、見事な“ど真ん中ぶり”であった。
(文=webCG 竹下/写真=田村 弥)
長く付き合えるハイパフォーマンス
ボルボV60ポールスター……859万円
「V60ポールスター」はボルボが言うところの、“メッチャ速いV60”だ。レースの技術を投入した台数限定生産モデルで、日本への割り当ては、わずか65台。それが日本での適正な台数ということらしい。
乗り込んでみると、確かに速いし、軽快によく走る。アクセルを踏み込むたびに、メーターが“シュンシュン”と飛び跳ねるのを見ると、余計に速く感じられた。足まわりは硬めながら、とてもしなやか。コーナリングも楽しい。人間中心の温かみのあるクルマづくりが特徴のボルボにしては、ヤル気のテイストだ。
とはいえ、859万円。スピードだけを求めるなら、別にボルボでなくても……。
そんな風に思いつつ、駆け足で巡航していると、不思議とだんだん心地よくなってきた。
「ああ、アノ感覚だ!」
ジョギングをしていると、気持ちよくてやめられなくなる、ちょっぴりハイなゾーンに入ったアノ感覚だ。速く走ろうと思えば走れるし、ゆったり流すのも心地よい。ロングツーリングで初めてわかる「ほどよい軽快さ」が、ジワジワ~っと味わい深く感じられてくる。排気音にもどう猛さはなく、アクセルを踏み込むたびにひょう変するような激しい性格を持っているわけではない。
長く付き合っていきたいのって、もしかしたら、こういうクルマなんじゃないかな。ポールスター、好きになっちゃった。
(文=スーザン史子/写真=峰 昌宏)
トランスミッション水掛け論
ロータス・エキシージ スポーツ350 ロードスター……972万円
「エキシージ」といえば、かのロータス3兄弟のなかでも特に硬派で武闘派で、レーストラックがよく似合うますらをぶりなアイツである。しかし、今回記者にあてがわれたのは、エキシージはエキシージでも2ペダルのAT仕様だった。
イージードライブなエキシージ。このアンビバレンツな存在を読者諸兄姉はどう捉えておられるだろうか? 神への冒瀆(ぼうとく)、あるいはロータス一族の風上にも置けないハンパ者だなんて、考えていないだろうか。
やれやれだぜ(荒木飛呂彦リスペクト)。
昨年秋の取材以来、およそ4カ月ぶりに触れたロータス・エキシージは、相変わらず覚悟なき者を寄せ付けないSっ気全開のクルマだった。硬質感バツグンのバッキバキのボディー。ナマでダイレクトで、ドライバーの操作をみじんも逃さず挙動に反映させるステアリング。「これって何の筋トレ?」といいたくなるほど重くてカタいブレーキ。うーん、なまらたまらん(鼻息)。
そもそも、運転するまでの事前準備からして大変である。乗員の乗降性なぞ毛ほども考えられておらず、スムーズな乗車には事前の柔軟体操が必須。そしてその関門をクリアしたとて、ブーツを履いた不心得者やセミバケにおさまらぬデブについては、ドラポジを決めることすら許さない。
もちろん、言うまでもなくその運動性は反応、反射、音速、光速(松本大洋リスペクト)。伊豆や箱根で胸を借りた際には、あまりに高い旋回性能にわが心身が先に音を上げた。シフトフィール? そんなもん記憶にございません。
平均以下のドラテクしか持たない30代の中年男子にとって、エキシージとはそういうクルマであった。もしアナタが記者と同程度のドラテクの持ち主であるか、あるいは純粋にそのシャシー性能と相対したいという御仁なら、むしろ率先してATを選んでいただきたい。
……かような話を延々と車内で話していたところ、助手席のwebCG 藤沢青年が言った。「じゃあ、ほったさんは『ATかMTのどちらかあげるよ!』って言われたら、ATを選ぶんですね」 私は即答した。「何言ってんですか? MT一択に決まってんじゃないですか」
(文=webCG ほった/写真=峰 昌宏)

スーザン史子
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