第52回:自動ブレーキが欲しい!
2017.08.01 カーマニア人間国宝への道キャリアダウンへの不安
赤い玉号こと「フェラーリ328GTS」がやぶ入りすると同時に、「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」に代わる牛丼カー(足グルマ)への欲望が復活してしまった不肖清水草一ですが、そもそもなぜデルタを買い替えたいのか?
大好きなマニアック系イタリア車だし、あんなにオシャレさんだし、ディーゼルだからトルクはあるし燃費も抜群だ。いったいどこが気に入らないのか。
いや、嫌になったわけじゃない。主たる理由はただひとつ。自動ブレーキやACC(アダプティブクルーズコントロール)などの、先進安全ラクチン装備が猛烈に欲しくなったのです。
私もはや55歳。『サザエさん』の時代なら定年退職だ。磯野波平さんは54歳という設定だが、それより1歳年上なのですから。
男にとっては、バカボンのパパの年齢(41歳)と、波平さんの年齢(54歳)は大きな節目だが、「オレもバカボンのパパと同い年になったのか……」よりも、「波平さんより年寄りになっちゃったヨ~~~!」の方がインパクトはデカかろう。なにせ波平さんは、毛がチョロンとしかないおじいさんなのだから!
さすがに今どき定年退職が55歳という会社は少ないと思うが、そうでなくても大企業では「キャリアダウン」とかいって、役員に昇り詰めない限り55歳までには実質ヒラに降格、あるいは出向が常識だとか。降格や出向と自動ブレーキは関係ねぇだろ! と言われればその通りだが、近年運転中に小さなうっかりの連続で、注意力がキャリアダウン中の私なのです。
強力な安全デバイスが欲しい
人にケガを負わせる前に、先進安全ラクチン装備付きのクルマにしなきゃ! もうデルタみたいな電動パワステカルカルで高速巡航時にフラフラするクルマはキツい!
そのような思いから、「プジョー308 BlueHDi」の登録済み未使用車に目が行ったものの、308の「エマージェンシーブレーキサポート」は、このようなものでした。
「前方車両と衝突の危険性を感知した場合には、自動的にブレーキが作動し最大20km/h減速。ドライバーに緊急回避行動をとるよう促し、さらに衝撃を最小限に食い止めます。このシステムは10km/h以上で作動します。※このシステムは自動停止ブレーキではありません」
たったの20km/hか……。
その他にブラインドスポットモニターやアクティブクルーズコントロールが付くので、今のところこれくらいでいいかな~? という感じではあるのだが、今後も運転能力が落ちる一方であることを考えると、もうちょっと頑張ってくれる安全デバイスが欲しい。
同じプジョーの「3008」はすでに、80km/h以下では停止車両を、60km/hでは歩行者も検知してブレーキをかける「アクティブセーフティブレーキ」にグレードアップされているので、308にも間もなく導入されると思われるが、いま市場に出回っている登録済み未使用車は、問答無用に従来の「ないよりマシ」レベルだ。
しかも我が家には「DS 3」があり、プジョー308とはキャラがかぶるという話は前回書かせていただきました。
それら事象を総合的に考えて浮上したのが、「BMW 320dセダン」の中古車だったのであります。
ターゲットはBMW 320d!
それにしても自動ブレーキって、あえて利かせることってないじゃない? 一般ドライバーにとっては、開けることのないブラックボックス。その性能でクルマを選ぶのって、スペックだけでクルマをあーだこーだ夢想していた青春時代がよみがえったみたい……といえば聞こえはいいが、見た目や乗り味だけでクルマを決められた時代はヨカッタ~! と思ったりもする。
そういえばフェラーリ様って自動ブレーキあるんだっけ? ないよね!? 最新の「812スーパーファスト」でも! カスタマー的には要望が強い気もする「GTC4ルッソ」にも!
もちろん赤い玉号にはありませんよ。前期型なのでABSもナイ。いや~、美しすぎるルックスや神が見える炸裂(さくれつ)エンジンだけで、今でも即物的にクルマを選べるフェラーリ様ってスバラシイなぁ!
でも、でもでも今の私は、どんだけカネがあったとしても、足グルマにGTC4ルッソを買うことはないでしょう。やじ馬的には自動ブレーキ付けた方がいいような気がします、GTC4ルッソだけは。300km/hからでも完全停止できるヤツとか!!
では、次なるターゲットとなった320dの安全デバイスはいかがなものか。
実は、この分野はあまりにも日進月歩につき、いまひとつわからないのです。いま売ってる320dについて調べるのは簡単だけど、中古車は個体ごとに年式が違うので。
320dが日本に導入されたのは2012年。安全デバイスに関しては、それから何度か改良が加えられていて、中古車ファンを大混乱に陥れるのでした。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。