スバル・フォレスター アドバンス(4WD/CVT)/フォレスターX-BREAK(4WD/CVT)
森の人、街へ 2018.09.14 試乗記 電動アシスト機構付きパワーユニット「e-BOXER」を搭載した「スバル・フォレスター アドバンス」がいよいよ発売された。比較試乗で浮き彫りになった2.5リッターガソリン車との違いと、従来モデルとは趣を異にする、フォレスターの“新しい一面”をリポートする。最上級グレードはe-BOXERモデル
「フォレスター アドバンス」の公道での初お披露目は、「STEP体感試乗会」と銘打たれていた。スバルが2018年7月に発表した中長期経営ビジョンが「STEP」で、「Speed」「Trust」「Engagement」「Peace of mind & enjoyment」の頭文字をとったもの。<「スピード」感をもった取り組みで、「信頼」を取り戻すとともに、お客様に「共感」していただける「安心と愉(たの)しさ」という価値を提供する>という意味だそうだ。昨年10月以来いろいろあったので、心機一転して企業風土改革に取り組もうという決意なのだろう。
試乗会にもみそぎ的な意味を込めているのかと思ったら、全然違った。こちらは「SGP+SUV」「TOURING ASSIST」「e-BOXER」「PUBLIC ROAD」の頭文字。スバルグローバルプラットフォームを用いたSUVの公道試乗会で、新しいパワーユニットのe-BOXERと運転支援機能のツーリングアシストを体感するということである。
新型フォレスターは2018年7月に販売を開始していたが、e-BOXERを搭載したアドバンスは遅れて同年9月14日が発売日。公道で試すのはこれが初の機会となった。現行型フォレスターには9月2日の時点で1万2073台の受注があり、そのうちの40%がアドバンスだという。もうひとつのパワーユニットである2.5リッターエンジンのモデルが60%ということになる。e-BOXERモデルはアドバンスのみだが、2.5リッターモデルにはベーシックな「ツーリング」と上級の「プレミアム」、SUVらしさを強調した「X-BREAK」の3グレードがある。
最も高価なのがアドバンスで、最上級グレードという位置づけと考えられる。受注の32%が次に高価なプレミアムとなっていて、フォレスターもワイルドなSUVというより都市型のイメージが強くなってきたようだ。最初に試乗したのはX-BREAK。オレンジのアクセントカラーでアクティブさを際立たせるデザインを施したモデルである。シートやカーゴフロアがはっ水仕様になるなど、アウトドア用途を配慮した装備も追加されている。
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車線中央維持制御の機能が向上
内装にもシートのステッチなどにオレンジが使われていて、ポップな印象だ。“森の人”という出自を最も色濃く残しているグレードである。とはいえ、普通に乗る限りでは快適な今どきのクロスオーバーSUVだ。乗り心地がいいのは、SGPの恩恵なのだろうか。静かさも十分なレベルにある。よくしつけられていて、マナーがいい。
でも、こんなにお行儀のいいクルマだったっけ? 記憶の中のフォレスターとはずいぶんギャップがある。それもそのはず、前に乗った先代モデルは280psの2リッターターボエンジンを積んでいた。「SI-DRIVE」で「スポーツシャープモード[S#]」を選ぶと、活発すぎるほどの走りを楽しめたのだ。新型フォレスターにはターボモデルが設定されていない。2.5リッター直噴エンジンは184psの最高出力で力強い加速を見せるが、先代ターボモデルのようなヤンチャさは影を潜めた。成熟して大人びた振る舞いである。
STEPのTはツーリングアシストである。アクセル、ブレーキ、ステアリングの操作を自動的に制御することで、ドライバーの負担を軽減するシステムだ。以前からスバルのシステムは定評があるが、車線中央維持制御の機能がさらに向上したという。最大位置偏差が0.18mから0.10mになったということで、これは「トップクラスの数値」だとか。さすがにその差を体感することはできなかったが、精度の高さはあらためて実感した。運転支援機能はどのメーカーでも採用しているけれど、性能差は結構大きいのだ。
川崎から横浜まで走り、アドバンスに乗り換える。こちらはノーマルな外観で、正直言って先代との違いはよく見ないとわからない。フロントグリルが大きくなったことが目立つぐらいだ。極端にスポーティーでもエレガントでもなくて印象に残りにくいが、イヤみがないので嫌われることは少ないだろう。従来モデルより、サイズ拡大が最小限に留められているのは好ましい。
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モーターアシストの効果は限定的
e-BOXERは2リッター直噴エンジンにモーターを組み合わせたシステムである。要するにマイルドハイブリッドで、モーターアシストは主にアクセルレスポンスの向上のために使われる。発進とごく低速での走行ではモーター走行になるが、すぐにエンジンがかかるから電動車っぽさは薄い。ある程度のスピードに達したらエンジンパワーだけで走る。
加速の際にモーターがアシストする場合もあり、低中速走行時に効果が最も大きく表れる。「SI-DRIVE」でSモードを選んだ時は、40km/hからの追い越し加速でガソリン車より1秒ほどレスポンスが早くなるという。ただ、明確に体感できたかと問われるといささか心もとない。エンジンの最高出力145psに対してモーターのそれは13.6ps。最大トルクも65Nmしかないのだ。
試乗したのは首都高速と市街地を組み合わせたコースである。ワインディングロードや都市間高速道路では差が表れにくいので、わざとそういう設定にしたと説明された。意図はわかるが、この日はやたらに渋滞が多くてストレスがたまった。そこでツーリングアシストの登場である。0km/hから約120km/hまでの速度域をカバーしているので、渋滞で威力を発揮する。ガソリン車とe-BOXERの両方で渋滞にハマり、差を実感した。確かに、e-BOXERのほうが素早く反応する。スバルに限らず、アダプティブクルーズコントロールとモーターは相性がいい。
減速時には回生ブレーキが働いて電力を補充するが、ブレーキフィールに影響はなかった。ガソリン車とまったく同じ感触で、不自然さは感じない。ハイブリッド車にありがちなクセがないのはいいけれど、メリットも限定的である。WLTCモード燃費は14.0km/リッターで、13.2km/リッターのガソリン車と大差ない。市街地モードのWLTC-Lではリードするが、郊外モードのWLTC-Mや高速道路モードのWLTC-Hでは逆転されてしまう。
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あえてアウトドアイメージを隠す
高速走行はガソリン車のほうが得意なのだ。モーターの力をあてにできなければ、排気量の大きさがものをいう。加速でも高速巡航でも、静粛性ではガソリン車に分があった。キビキビ感のe-BOXERと穏やかで力強いガソリン車というはっきりとした性格分けができている。
新型フォレスターのカタログで、最初に紹介されているのはX-BREAKである。親子でキャンプに出掛けたり、雪道を走ってウインタースポーツを楽しんだりする光景がイメージとして描かれる。対して、アドバンスは自宅の前に止まっていて親子が楽しそうにほほ笑んでいる絵柄だ。加えて上質なインテリアが見開きの大きな写真で紹介されている。アウトドア、ワイルドというイメージを意図的に隠しているようだ。
アドバンスも走りのシステムはほかのグレードと変わりはない。スバル伝統のシンメトリカルAWDが採用されているのはもちろん、悪路走破性を高めるX-MODEも装備されている。SUVとしての性能は同等だが、アドバンスははっきりと都会志向だ。砂利道やぬかるみでも走れるという能力は、ファミリーカーとしての安心と楽しさに寄与するために使われる。
かつてのフォレスターは、オンロードでのスポーティーな走りとオフロードでのタフな走破性を両立させている高性能SUVというイメージが強かった。たくましい森の人である。今はSUVがごく普通の選択肢となり、ユーザーの幅が広がった。スバルというブランドも、水平対向エンジンよりもアイサイトによって知られている。森の人も、街での生活に対応することが求められているのだ。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スバル・フォレスター アドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145ps(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:65Nm(6.6kgm)
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:14.0km/リッター(WLTCモード)/18.6km/リッター(JC08モード)
価格:309万9600円/テスト車=343万4400円
オプション装備:本革シート(10万8000円)アイサイトセイフティプラス<視界拡張>(6万4800円)/パワーリアゲート(5万4000円)/大型サンルーフ(5万4000円)/ルーフレール<シルバー加飾ロープホール付き>(5万4000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:960km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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スバル・フォレスターX-BREAK
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:184ps(136kW)/5800rpm
最大トルク:239Nm(24.4kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)225/60R17 99H/(後)225/60R17 99H(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
燃費:13.2km/リッター(WLTCモード)/14.4km/リッター(JC08モード)
価格:291万6000円/テスト車=319万6800円
オプション装備:キーレスアクセス&プッシュスタート<暗証コード式キーレスエントリー付き>+運転席&助手席8ウェイパワーシート+運転席シートポジションメモリー機能+リバース連動ドアミラー+ドアミラーメモリー&オート格納機能(10万8000円)/アイサイトセイフティプラス<運転支援>(5万4000円)/アイサイトセイフティプラス<視界拡張>(6万4800円)/パワーリアゲート(5万4000円)/ルーフレール(0円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2232km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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