「レクサスRX」も交えた三角関係!? トヨタの「ハリアー」と「RAV4」はどこがちがう?
2020.05.11 デイリーコラム特別あつかいだった2代目ハリアー
先日に発表された新型「ハリアー」は通算4代目となる。ご記憶の向きも多いように、ハリアーはもともと「レクサスRX」の日本国内向け商品として生まれた。初代ハリアー(=初代RX)がデビューした1998年当時、日本市場ではレクサスがまだ展開されていなかったからだ。RX以外のレクサスも、大半がトヨタ名義の別車名で国内販売されていた。
しかし、2005年8月に日本国内でもレクサスが開業。RXも2009年の3代目から海外同様にレクサスRXとして売られるようになったが、国内では2代目ハリアー(=2代目RX)も継続販売された。ただ「セルシオ」「アリスト」「アルテッツァ」「ウィンダム」「ランドクルーザーシグナス」といった“本当はレクサスだけど日本ではトヨタ車”が、レクサス国内開業とともに姿をあらかた消したことを考えると、このハリアーへの措置は明らかに例外的だった。
その理由はハリアーが、トヨペット店あつかいだったことも無関係ではなかった。トヨペット店はレクサスの国内開業に合わせて旗艦セルシオを取り上げられてしまっていた。セルシオはトヨタ店とトヨペット店が売っていたが、トヨタ店が「クラウン」や「センチュリー」も抱えていたのに対して、当時の(東京や大阪以外の)トヨペット店にはそれに相当する高級車はなかった。そのうえハリアーまで……となれば大打撃だったのは間違いなく、ハリアー継続はトヨペット店救済の意味もあった。
RAV4の兄弟車に
こうしてレクサスと枝分かれした2代目ハリアーだが、その後も根強く売れ続けた。いっぽうで、従来のライトクロカンからさらにチャラい(?)クロスオーバーSUVが台頭して、「RAV4」の国内販売は伸び悩んだ。そこでトヨタは、3代目ハリアーを国内専用として、新たに海外向けに特化することになった4代目RAV4とプラットフォームを共用化しつつ、兄弟車として同時開発する。
その土台となった「MC」プラットフォームはCセグメントを想定した骨格設計だった。それは当時のRAV4では正常進化だったが、ハリアーから見ると“下級移行?”の感があったのも事実である。それ以前のハリアー=レクサスRXの骨格は「カムリ」系の「K」プラットフォームを使っていたからだ。
しかし、3代目ハリアーは長めのオーバーハングによる伸びやかなエクステリアと、レザー仕立てと木目調(どちらも本革、本木目でないのが非レクサスの証?)の加飾を大量にあしらったインテリア、充実したハイテク装備で、“元レクサス”の2代目に見劣りしない商品力を確保。その押し出しや質感のわりに価格は手ごろで、モデル末期まで売れ続けた。
ちがいは四駆と足まわり
6年半ぶりの完全刷新となった新型ハリアーの、同世代RAV4との関係性は従来と変わりない。プラットフォームはまったく新しいが、それをホイールベースを含めてRAV4と共用する点も先代と同じ。よって、RAV4より140mm長い全長は、今回もたっぷりとした前後オーバーハングによる。ほかのデザインキーの多くも「ハリアーにしか見えない」ことへの配慮が明確。いわゆる正常進化である。
現時点で判明している新型ハリアーの技術内容で注目すべき点は3つある。ひとつは2リッター車の4WDシステムが、一般的な「ダイナミックトルクコントロール4WD」のみであることだ。RAV4の2リッター車には左右後輪間でトルク配分する「ダイナミックトルクベクタリングAWD」もあるのだが、それはハリアーには用意されない。
もうひとつは“ピストンスピード2mm/s以下の極微低速域でもスムーズなストロークの動きを確保したショックアブソーバー”を採用する点だ。この説明を見るかぎり、それは「レクサスES」で初採用された「スウィングバルブショックアブソーバー」と思われるが、トヨタブランド車での前例は、350台限定の「マークX“GRMN”」だけだ。
こうした事実を見るに、ハリアーは悪路性能よりオンロードでの快適性を重視した高級クロスオーバーなのだ……という(しごく当然の)商品意図があらためてうかがえる。
そして、最後のポイントは、新型ハリアー(とRAV4)の土台が「GA-K」プラットフォームであることだ。GA-KはカムリやESを含めたDセグメント想定で、トヨタの横置きエンジン用としては最上級プラットフォームとなる。いうなれば、新型ハリアーの基本骨格は先代のCセグ用から“再昇格”となる。
鉄壁の布陣の頂点に
ハリアーを取り巻く環境は、6年半前の先代デビュー当時とはだいぶ変わっている。国内販売されるトヨタSUVも当時とは比較にならないほど増えた。「ランドクルーザー」や「ハイラックス」といった本格オフロード車は別格としても、ハリアーと兄弟のRAV4までもが国内復活したし、「ライズ」に「C-HR」、そして先日公開された「ヤリスクロス」などは6年半前にはカゲもカタチもなかった。ハリアーは今も昔もトヨタの高級クロスオーバーSUVであることは変わりないが、今後はライズ、ヤリスクロス、C-HR、RAV4……という水も漏らさぬ鉄壁のラインナップの頂点に君臨することになるわけだ。
ずいぶんと車種整理が進んだトヨタブランドの現行国内ラインナップでは、ハリアーはセンチュリーやクラウン、「アルファード/ヴェルファイア」に次ぐ高級車ということになる。それにしても、こうして高級機種がいまだに国内専用色の強い顔ぶれなのは、いかにもトヨタらしい。
ハリアーの環境変化といえば、もうひとつある。それはこの2020年5月から、トヨタが全販売系列で全車種の取りあつかいとなることだ。つまり、トヨペット専売だったハリアーもこの新型からトヨタ系の全販売店で営業されることになる。
……というわけで、ハリアーはもはや“元レクサス”どころか、トヨタブランドの国内市場では押しも押されもせぬ本流機種となった。明確にトヨタの旗艦クロスオーバーSUVと位置づけられたハリアーは、レクサスや輸入SUVとの競合も明確に意識していると思われる。その点では今回のプラットフォームの上級移行も大きな武器となるだろう。いずれにしても、新型ハリアーは「売れそうだな」と素直に思う。
(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
「日産テラノ」がPHEVで復活 往年のビッグネームを継承するSUVの特徴を分析するNEW 2026.5.28 日産自動車が「北京モーターショー2026」で、往年のビッグネームを継承する新型SUV「テラノPHEVコンセプト」を世界初公開した。初代「テラノ」で採用された「3スロット」を想起させる車両のデザインに加え、日産が新型テラノで狙うグローバル戦略に迫る。
-
まさしく桁違いの1169PS&2000N・m 新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が搭載する数々の新機軸 2026.5.27 2025年発表のコンセプトカー「メルセデスAMG GT XX」が新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」として正式にデビューした。その中身は100%電気自動車であり、上位グレードは最高出力1169PSという途方もないスペックを誇る。技術的ハイライトを解説する。
-
買った後にもクルマが進化! トヨタ&GAZOO Racingが提供するアップデートサービスのねらいと意義 2026.5.25 GAZOO Racingが「トヨタGRヤリス/GRカローラ」の新しいソフトウエアアップデートを発表! 競技にも使える高度な機能が、スマートフォンのアプリで調整できるようになった。その詳細な中身と、GRがオーナーに提供する“遊びの機会”の意義を解説する。
-
“ポチって”始まるブランド体験 「Amazonで買えるホンダ」って何だ? 2026.5.22 ホンダは2026年4月末、オンラインブランドストア「Honda Goods」をAmazon内にオープンした。その内容は? 「これは」と思うアイテムをピックアップしつつ、車両メーカーが力を入れる「グッズ販売」の意義について考えてみよう。
-
間もなく販売スタート 「シビックe:HEV RS」でホンダはかつての輝きを取り戻せるか? 2026.5.21 新型「プレリュード」に続き、「ホンダS+シフト」を搭載する「シビックe:HEV RS」が2026年6月に正式発売される。有段変速機のようなダイレクトで鋭い駆動レスポンスとシフトフィールが味わえるという同モデルの特徴を、開発担当者に聞いた。
-
NEW
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記
2026.5.27エディターから一言“世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。 -
NEW
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】
2026.5.27試乗記「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。 -
NEW
まさしく桁違いの1169PS&2000N・m 新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が搭載する数々の新機軸
2026.5.27デイリーコラム2025年発表のコンセプトカー「メルセデスAMG GT XX」が新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」として正式にデビューした。その中身は100%電気自動車であり、上位グレードは最高出力1169PSという途方もないスペックを誇る。技術的ハイライトを解説する。 -
NEW
第114回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(前編) ―「トヨタ・タンドラ」の導入に対する元カーデザイナーの本音―
2026.5.27カーデザイン曼荼羅「トヨタ・タンドラ」が日本にやってくる!? トランプ大統領のゴリ押しと、トヨタ&ホンダによるアメリカ生産車の日本導入決定により、今にわかに注目を集めている“アメリカのクルマ”。かの地で育まれた特殊な造形美を、カーデザインの識者はどう見ているのか? -
車載カメラが普及した今、“デジタルサイドミラー”が主流にならないのはなぜか?
2026.5.26あの多田哲哉のクルマQ&Aサイドミラーの役割をカメラが担う“デジタルサイドミラー”は、レクサスやアウディなどで採用例があったものの、普及するには至っていない。その決定的な理由はなにか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんが語る。 -
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】
2026.5.26試乗記販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。





































