第220回:俺のナローはリアがナロー
2021.11.22 カーマニア人間国宝への道奇数側ギアがブッ飛んだ
「俺のナロー」こと5年落ち走行約7万kmの自家用車、「ルノー・トゥインゴ」。このところもっぱら家人の足として、都内(主に杉並区内)で活躍していたが、その家人から注進が入った。「故障っぽいマークの電気がついた」と。
フランス車の警告灯なんて、どーせ警告灯そのもののエラーだろとタカをくくって数日放置したのち、一応確かめてみようと思いなおし、久しぶりにナローに乗った。
すると、修理マークはついているが、以前よりもDCTが滑らかに感じる。俺のナローは距離を走っているせいか、低速域でのDCTのマナーが悪く、ガクガク感がかなりキテいたのだが、それがカイゼンされている!
そのまま近所を走っても、特に異常は感じられない。そこで国道に出て、アクセル全開をカマしてみた。
すると、なんかちょっとおかしい。DCTをマニュアルモードにしてもう一度全開にしたところ、「げえっ!」となった。
奇数ギアに入らないのである。2→4→6速としか変速しない! 奇数側ギアがブッ飛んでる!
低速域でスムーズになったと感じたのは、2速発進だったからなんだ! 俺のナローよ、いつのまにか古き良きメルセデスになっていたのかぁ!
ガックリ……。
DCTは壊れたら最後といわれている。壊れたら即アッセンブリー交換だと。その金額は数十万円以上と聞いている。ってことは……。
「廃車」という単語が脳内を駆け巡った。
取りあえず修理に出す
115万円だった俺のナロー。現在の残存価値、すなわち下取り価格はせいぜい60万円か。修理代がそれを上回る可能性は高い。
となれば、いっそのこと廃車にして次に行こう! 俺のナローよ、ありがとう! 取りあえずトゥインゴを所有するという目標は実現できた! 次行くぞ次!
でも一応、修理屋さんで診てもらおう。ちょうど5年目の車検も近い。診てもらって「100マンエンですね」と言われたら、車検を通さず次行こう! 事実が判明して5分後にはそのように決断し、購入したお店(横浜市都筑区のMAMA)に連絡した。
「DCTのギアが偶数側しか入りません~」
東條店長から返事が届いた。
「トゥインゴでは初めてのケースです! センサー類の故障だと思いますが……」
いやぁ、そんな軽症ではなかろう。アッセンブリー交換だろう。ジ・エンドだろう。でもとにかく診てもらうことになった。
末期の盃(さかずき)気分でトゥインゴを入庫させて1週間後。東條店長から連絡が入った。
「ATのトラブルでしたので、経験の少ないところでは、すぐにアッセンブリー交換と言ってくるので、付き合いのある各工場に確認したところ、ディーラーのメカさんが経験ありだったので、やってもらうことにしました!
第1段階→クラッチモーター交換
それがダメなら第2段階→ECU 交換
それがダメなら第3段階→クラッチ本体交換
の手順に進めるとのことです。センサーがおバカになっているだけではなさそうです。あらためて見積もり出ましたらご連絡致します!」
買ったときから前後が逆
それから2週間。奇跡の吉報が届いた。
「第1段階のクラッチモーター交換で直りました! 費用は約6万円になりますがよろしいですか?」
マジで~~~~~っ!?
最低60マンエン、つまり残存価値0円につき廃車、次行こ! と諦めていたのが、生き残ったぁ~~~っ!
こうして俺のナローは奇跡の生還を果たし、車検も取った。
その乗り味は、故障前より明らかにギクシャク感が減少! 特にECOモードを解除したときの減速でのガクッ、ガクッってのは激減! DCTだから多少はギクシャクするけど許容範囲だ。これでメルセデスみたいに2速発進にできればもっといいんだけど!
そのような満足感に浸ったわたしは、久しぶりに取材の足に俺のナローを使った。撮影現場で「やっぱりカワイイしステキだよなぁ」と、俺のナローを見つめていたとき、ふと違和感を抱いた。
タイヤ……。前後タイヤ……。なんかちょっとおかしくないか?
げえっ! 前後逆じゃん! 前が太くて後ろが細いっ! 前が185で後ろが165!
車検で間違えて前後ローテーションしちゃったのか? と思ったが、その記録はナシ。そこで納車時の写真を見返して、タイヤサイズを拡大・凝視した。
買ったときから前後逆に付いとった~~~~!
今の今まで気づかなかった。お店も気づかなかった。今回車検通したディーラーも気づかなかった。今まで誰も気づかなかった~~!
RRの俺のナロー。前輪のほうが後輪より太ければ、当然オーバーステア傾向になるはずだが、そんな気配はみじんもナシ! 超絶ニュートラルステアを誇り、首都高を走れば操縦性抜群、水色のロケットだった!
つまり、あんまりクルマの細かいことを気にしてもしょーがないってことですね。ダッハハハハ!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。