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夏に間に合うクルマはあるのか!? 国産新車の最新納期事情

2022.06.08 デイリーコラム 渡辺 陽一郎

在庫車も底をついてきた

新型コロナウイルスの影響で半導体が不足しており、クルマの納期が長引いている。今では常識になったが、自動車メーカーの開発者は「そんなに単純な話ではない」という。「半導体の不足は事実だが、一部の品目にすぎない。ワイヤハーネス、塗料など、いろいろな供給が滞る。しかも不意に遅れるから、今後の見通しも立たない」とのことだ。

新型コロナウイルスが問題化する前の納期は、特殊な車種を除くと1カ月から1カ月半だった。それが今は契約してから3カ月で納車できれば、かなり短い部類に入る。6カ月以上の車種が大幅に増えた。以前は在庫車もあったが、今は底をついてきた。

ここまで納期が長いと、モデルチェンジを控えた車種は販売を中断する。トヨタの販売店では以下のように述べた。

「今は『プリウス』の販売を中断している。2022年の末にフルモデルチェンジを予定するが、現時点(5月下旬)ではまだ受注できないからだ」

プリウスの納期は、半年以上に遅延している。5月下旬に契約しても、納車されるのは12月だ。その12月にフルモデルチェンジを実施するから、5月下旬に契約するなら、それは次期型になる。

しかし次期プリウスの内外装や各種の性能、グレード構成、装備、価格などは、まだ公表できる段階に至っていない。そこで現行型の販売を終えたのに、次期型は販売できず中断しているわけだ。

新型登場が近い「トヨタ・プリウス」。トヨタのウェブサイトには納期について「販売店にお問い合わせを」と書かれている。
新型登場が近い「トヨタ・プリウス」。トヨタのウェブサイトには納期について「販売店にお問い合わせを」と書かれている。拡大
トヨタ カローラ スポーツ の中古車

売り物がなくても顧客は逃せない

プリウスのような売れ筋車種は、通常はフルモデルチェンジのために受注を中断しても、1カ月から1カ月半だ。それが今は大幅に延びて、仮に次期型の予約受注を10月に始めても、約5カ月間はプリウスを販売できないことになる。

特にトヨタの場合、「シエンタ」や「クラウン」もフルモデルチェンジを控え、マイナーチェンジを実施する車種も多い。そのためにトヨタの販売店では「今は約10車種の販売が中断している。プリウスやシエンタは人気車だから、何を売ればいいのか分からない状態だ」と困惑する。

そして販売を中断すると、ユーザーが別のメーカーのライバル車を選ぶ可能性も生じる。そこで顧客を逃がさないために、予約受注の開始時期を従来以上に前倒しする動きも見られる。

ただし、そうなると試乗車はもちろん展示車もなく、販売店のスタッフも試乗していない状態で商談せねばならない。

例えば「マツダCX-60」は、2022年4月に車両の概要が公開されたが、発売は同年の秋としており、現時点で価格は正式には明らかにされていない。それなのに販売店では、4月下旬に顧客にだけ価格を明かして受注を開始した。

もちろんメーカーの指示に基づいており、販売店は「CX-60の主力エンジンは直列6気筒のディーゼルで、駆動方式は後輪駆動だ。いわば未知のマツダ車だから、試乗もしていない状態では、お客さまに何も説明できない。つらい商談をしている」と打ち明けた。CX-60の受注前倒しには、マツダ(メーカー)の社内でも疑問視する声が多い。いずれにしろ受注をむやみに前倒しすると、ユーザーと販売現場に迷惑をかけるから、無理をすべきではない。

「トヨタ・シエンタ」のモデルチェンジも近い。ウェブサイトでの納期情報は「プリウス」と同じ。
「トヨタ・シエンタ」のモデルチェンジも近い。ウェブサイトでの納期情報は「プリウス」と同じ。拡大
15代目「トヨタ・クラウン」は2018年のデビュー。次期型はSUV化や5ドアクーペ化などのうわさがあるが、いずれにしても現行モデルのモデルライフはかなり短いことになる。
15代目「トヨタ・クラウン」は2018年のデビュー。次期型はSUV化や5ドアクーペ化などのうわさがあるが、いずれにしても現行モデルのモデルライフはかなり短いことになる。拡大
マツダの新世代FRシャシーモデル第1弾の「CX-60」。試乗車も展示車もない状態ながらひそかに商談が始まっている。
マツダの新世代FRシャシーモデル第1弾の「CX-60」。試乗車も展示車もない状態ながらひそかに商談が始まっている。拡大

1週間後も分からぬ状況

それでも空白期間が生じると、競争の激しい市場では顧客を逃す心配が膨らむ。そこでダイハツの販売店では、5月上旬から次期型「ムーヴ キャンバス」の予約受注を開始した。正式発表は6月28日だが、軽自動車では珍しく、5月上旬から価格も明らかにして予約を受け付けている。ライバル車の「スズキ・ワゴンRスマイル」に向けた対策でもある。

このような状況だから、納期の短いクルマはない。強いて挙げれば、「スズキ・スイフト」や「スバル・インプレッサ」「トヨタ・カローラ スポーツ」は2~3カ月、マツダの「CX-5」「CX-30」や「ホンダ・フリード」などは4カ月という具合で、軽自動車には3~4カ月の車種も多い。

しかしこれも5月下旬現在の話で、1週間後にはどうなっているか分からない。例えば「ホンダN-BOX」は、最近までは販売店が「2~3カ月で納車できる」と説明していたが、今は半年近い。納期は頻繁に変わるから、その瞬間の状況にすぎない。

登録台数(軽自動車は届け出台数)も同様だ。通常と違って、その車種の人気を反映させている数字ではない。販売ランキングとか納期情報は、クルマのウェブサイトにとって定番の人気企画だが、今は成り立ちにくい。新型コロナウイルスの影響は、大小さまざま、いろいろなところに生じている。

(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車、マツダ、ダイハツ工業、本田技研工業/編集=藤沢 勝)

新型「ダイハツ・ムーヴ キャンバス」は6月28日にデビュー予定。「スズキ・ワゴンRスマイル」に負けられない。
新型「ダイハツ・ムーヴ キャンバス」は6月28日にデビュー予定。「スズキ・ワゴンRスマイル」に負けられない。拡大
軽乗用車の絶対的王者「ホンダN-BOX」だが、最新の納期は半年程度にまで延びている。
軽乗用車の絶対的王者「ホンダN-BOX」だが、最新の納期は半年程度にまで延びている。拡大
渡辺 陽一郎

渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。

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