第708回:いつもの道が楽しくなる 素晴らしき通勤車5選
2022.07.18 エディターから一言![]() |
地域によっては、通勤や通学などに愛車を使用している方も少なくないだろう。週の始まりとなる月曜日は、職場に行くのがどことなくブルーで……と、多くの人が抱えそうなそうした気持ちを吹き飛ばし、いつものルートが楽しくなる「最高の通勤車」を考えてみた。この5モデルであれば、職場までの移動が至福のひとときになるはず!?
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素晴らしいクルマが最高の通勤車ではない?
筆者はフリーランスの自動車ライターという職業柄、ほぼすべての仕事関係の移動をクルマで行っている。お勤めをされている方であっても、お住まいの地域によっては「クルマ通勤」されている場合も多いだろう。都市部にお住まいの場合でも新型コロナウイルス感染症の流行などによって昨今は自宅にてリモートワークを行い、たまに出社する際はどさくさにまぎれて自分のクルマで行く──なんてことがあるのかもしれない。
いずれにせよ、その際に重要なことは「素晴らしいクルマで通勤すれば、通勤時間は“至福のひととき”に変わる」という事実だ。
人間に与えられた時間は長いようで短く、人生など「あっという間の出来事」である。そのためわれわれは「通勤のための時間」をも無駄にするべきではない。素晴らしいクルマでもって出退勤することで「素晴らしい時間の総量」を増やすべきなのだ。
だが、ここで重要になるのは「素晴らしいクルマ=最高の通勤車とは限らない」という事実だろう。
例えば「メルセデスAMG GT」や「ランボルギーニ・アヴェンタドールLP780-4ウルティメ」は間違いなく素晴らしいクルマである。だが、それでもって通勤した日には「燃料代で破産する」「会社の駐車場に入る際の段差でフロントスポイラーを破損する」「爆音のせいで女性社員に嫌われる」「性格に問題ありと判断され左遷候補にあがる」など、さまざまな問題が発生するだろうことは論をまたない(もちろん想像です)。
通勤車に求めたい5つの条件
そう、「真の通勤車」に必要な要素とは、アヴェンタドール的なアレではなく、以下に記すようなコレなのだ。
1:燃費がいい
仕事場とはカネを稼ぐための場所なので、そこへ行くためにカネを大気中にまき散らすのは本末転倒である。真の通勤車はWLTCモード燃費が20km/リッター以上であってほしいものだ。油種もレギュラーガソリンまたは軽油が望ましい。
2:サイズ的に大きくない
普段の生活においてはのんびりしていてもまったく構わないが、働く男ないし女にとっては「機動力」こそが生命線。路駐道にもとるあほうが道路をふさぐかのごとき止め方をしていても、そこを涼しい顔ですり抜け、余裕をもって約束時間の15分前には到着できるぐらいのボディーサイズであることが望ましい。
3:一応4人の人間を乗せられる
通勤自体は常時1人で行うものであろうが、働く男ないし女に「不測の事態」はつきもの。なんらかの事情により同僚や上司、あるいは得意先などを自分のクルマに乗せることもあるはずだ。その際、「いやぁ僕のクルマは2シーターなんで」などとやっていたら、出世はとうていおぼつかない。居住空間が「トヨタ・アルファード」のごとき広大である必要はないが、一応4人がサッと乗れる設計になっていることが望ましい。
4:高額ではない
燃費の話と同様である。仕事場とは「カネを殖やすための場所」であるゆえ、そこ行くために高いクルマを買い、手元のカネを大きく減らすのは本末転倒である。できればフタ桁万円、最大でも総額100万円台ぐらいで買えるクルマであることが望ましい。
5:そのうえで走行フィールが良い
以上の4条件を満たしていたとしても、最終的に凡庸きわまりない走行フィールのクルマではまったく意味がない。そんなクルマでは乗れば乗るほど、通勤すればするほど希死念慮が高まる恐れすらある。上記の4条件を満たしたうえで、「でも運転がめちゃ気持ちいい!」と感じられるクルマでなければならないのだ。
……以上5つの条件に合致する「素晴らしき通勤車」は5車種もあるのだろうか……とわれながら若干不安になったが、長考したところ、以下の5モデルが見事に合致することがわかった。順番にご紹介しよう。
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素晴らしき通勤車その1:ホンダN-ONE RS(FF/6MT)
フツーの現行型「N-ONE」もなかなか良き軽自動車だが、なかでも6段MTの「RS」は格別である。
絶対的な動力性能は大してホットではないが、最高出力64PSのターボエンジンをローギアードな6段MTで操る行為は、感覚的には往年のホットハッチを運転するのとほぼ同じ。血沸き肉踊り、アドレナリンが噴出する。
その結果として出勤後は、「アイツ最近ヤル気にあふれてるんじゃない?」と、同僚に感心されるほどエネルギッシュに仕事をこなすことができるだろう(想像)。
それでいてWLTCモード燃費は21.8km/リッターであり、油種は当然レギュラー。言うことなしである。車両価格は199万9800円と少々お高いのだが、中古車であれば、総額180万円ぐらいで走行1万km台の物件を見つけられそうだ。
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素晴らしき通勤車その2:スズキ・スイフト ハイブリッドSZ(FF/5AT)
「ホットな感触」という部分ではN-ONE RSのほうが上かもしれないが、総合力としては(当たり前だが)こちらが断然上。「スズキ・スイフト ハイブリッド」は、K12C型1.2リッター直4エンジンをベースとするフルハイブリッドシステムと高剛性ボディー「HEARTECT(ハーテクト)」により、コンパクトカーでありながらどこかエリート然とした通勤時間を過ごすことができる一台だ。
スイフト ハイブリッドのWLTCモード燃費は23.0km/リッターだが、新車価格は208万7800円と、通勤車としては少々お高い。
だが初期型となる「ハイブリッドSL」の中古車であれば、総額120万円ぐらいで「全方位モニター用カメラパッケージ装着車」が探せるはずだ。
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素晴らしき通勤車その3:マツダ2 XDプロアクティブ(FF/6MT)
国産Bセグメント唯一のディーゼルエンジン搭載車が「マツダ2」である。1500rpmあたりまでのトルク感は正直今ひとつだが、2000rpmを超えればこのクルマの独壇場となり、やや硬めの欧州車ライクな乗り味およびハンドリング性能、クラストップレベルとなる「インテリアのいいもの感」とともに、極上な出勤・退勤時間を堪能できるだろう。
6段AT車のWLTCモード燃費も21.6km/リッターと優秀だが、6段MT車であれば25.2km/リッターを誇る。比較的お安い軽油を使用するということもあり、真の通勤車としてのレベルは極めて高い。
新車だと車両本体だけで199万1000円と少々お高いが、総額160万円ほどで購入できる走行1万km台の中古車を探してみるのもアリだろう。
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素晴らしき通勤車その4:先代プジョー308アリュールBlueHDi(FF/6AT)
輸入車では「走りと燃費が良くて、しかし安くて、程よく小ぶりで」というモデルは少ないのだが、先代「プジョー308」の、特に「BlueHDi」系はまさにその条件に合致する。
さすがに1.5リッター直4ディーゼルエンジン+8段ATになった2019年モデル以降の中古車価格は総額240万円以上だが、それ以前の1.6リッター直4ディーゼルターボ+6段ATとなる2018年式「アリュールBlueHDi」であれば、走行3万km前後の個体を総額160万~190万円のゾーンで見つけることができる。
1.6リッターであっても力強さは十分以上で、燃費はWLTCモードで……じゃなくてJC08モードで21.0km/リッター。そこだけはほんの少し微妙かもしれないが、走りの素晴らしさに免じてすべてを許したい。
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素晴らしき通勤車その5:ダイハツ・ソニカ(FF/CVT)
多少年季の入った中古の軽自動車でもOKというなら、絶対の注目株となるのがコレだ。軽トールワゴンが主力になりかけていた、というかすでになっていた2006年の軽自動車界に、あえて背が高くない「爽快ツアラー」として打って出て、見事に討ち死にした悲運の名作軽自動車「ダイハツ・ソニカ」である。
新開発された直3ターボエンジンの吹け上がりは「……アルピナか?」と思うほどスムーズで、世界初の3軸構造となったCVTのプログラムも良好。当時の話ゆえWLTCモードではなく10・15モードではあるが、誇張抜きで爽快なツアラーであるにもかかわらず、カタログ燃費値は23.0km/リッターをマークした。
そして走行6万km台の禁煙車を総額40万~60万円で狙えるという、おサイフにやさしい真の通勤車でもある。超おすすめ……というか、私自身が「クリアブルークリスタルメタリック」のコレが欲しくてたまらんのですよ!
(文=玉川ニコ/写真=Newspress、メルセデス・ベンツ日本、アウトモビリ・ランボルギーニ、本田技研工業、スズキ、マツダ、ステランティス、ダイハツ工業/編集=櫻井健一)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport EX」。