まだまだ高いガソリン価格 ハイオク指定にレギュラーはアリなの?
2023.04.03 デイリーコラム今後もしばらくリッター168円!?
2022年の暮れ、経産省は、「ガソリン補助金の上限を、2023年1月から、2円ずつ段階的に引き下げる」と発表しました。「えっ、そんなの全然知らないよ!」と思われる方が多いでしょう。なにせ、これを書いてる私も知らなかったのですから。
政府は、ガソリンなどの燃料価格の上昇を抑えるため、石油元売り会社に補助金を支給しています。レギュラーガソリンの場合、168円/リッターを基準価格としたうえで、それを上回る分について、35円(上限額)までは全額を、上限を超えた分についてはその半額を支給しています。2022年の夏ごろは、35円を超えて支給していました。
しかし直近は、原油価格がかなり落ち着いているし、極端な円安もおさまりつつある。執筆時点での支給額は、ガソリン・軽油とも、1リッターあたり9.5円にまで減っています。だから、上限額35円を2円ずつ引き下げても影響はなく、レギュラーガソリンの価格は、今後もずーっと、全国平均で168円のライン(あるいはそれ以下)を維持することが予想されるのです。
「168円でも高い! 高すぎる! ハイオクなんてそれより11円高い179円だ。冗談じゃないヨ!」
そう思われている方もいるでしょう。ハイオクなんか入れたくない。愛車はハイオク指定だけど、ぜひともレギュラーを入れたい! でもそれって大丈夫だろうか? そんなことを考えてらっしゃる方もいるかもしれません。
一応おさらいしますと、日本で販売されているレギュラーガソリンは90オクタンで、ハイオクは100オクタンです。(※編集部注:オクタン価は、エンジン内でのガソリンの自己着火やノッキングの起こりにくさを示す値)
一方ヨーロッパは、91、95、98くらい(国によって微妙な差アリ)。ほとんどの欧州車が95指定で、高性能スポーツカーのみ98(プレミアム)指定です。通常は95オクタンあればいいものの、日本には90と100しかないから100を入れてください、となっているわけですね。
トラブル防止の備えはある
日本車にもハイオク指定のクルマはあるけれど、日本車の場合、レギュラーガソリンを入れてもノックセンサーが点火時期を遅らせてくれるので、問題はない。アクセルを全開近くにでもしない限り、ノックセンサーが働くほどの燃焼にもならないから、燃費にもほぼ影響はない。つまり、ハイオク指定のクルマにレギュラーを入れても大丈夫だ。「日産GT-R」は例外のようですが、さすがにGT-Rに乗ってる人は、そこまでケチらないでしょう。
じゃ輸入車はどうなのか。日本車みたいに、日本のガソリン事情を理解(?)して、自動的に調整してくれるのか? 20年くらい前の話ですが、中古車店を取材していて、こんな話を聞きました。
「『ゴルフ4』は、走行5万kmを超えるとエンジンに深刻なトラブルが出るケースが少なくないが、それはどうやらレギュラーガソリンを使い続けていた個体らしい。見分けがつかないので、扱うのが怖い」
マジで!? と思いました。やっぱ輸入車はガイジンなので、日本のガソリン事情がわかんないのか! と。
実は、ゴルフ4にも、ノックセンサーはちゃんと付いていました。現在のクルマには、ほぼ絶対に付いてます。ノックセンサーがあれば、ノッキングは起きないはず。輸入車だって、レギュラーを入れても大丈夫のはずだ。ゴルフ4の話は、中古車店側の勝手な臆測だったのではないか?
つまり、日本車だろうと輸入車だろうと、ハイオク指定のクルマにレギュラーガソリンを入れても、最高出力や最大トルクが低下するだけで、問題はないはずです。
![]() |
節約するのもバカらしい
それでもやっぱり、輸入車の場合、一抹の不安が残ります。国産のハイオク指定車は、ノックセンサーが働くと燃焼マップを90オクタン用に変更したりするけれど、欧州には90はなくて91。98前提の高性能車はさらにリスクが大きい気がする。まぁ、フェラーリにレギュラーを入れる人もいないでしょうが……。
思い起こせば1996年。私は自分の「フェラーリ348」で韓国に渡ったのですが、当時の韓国には90オクタンのガソリンしかなかったので、オクタン価向上剤を持参しました。給油の前にそれを混ぜて走ったのですが、それでもエンジンを切って数秒間、勝手にエンジンが回り続ける“ランオン”が発生しました。たぶん、燃焼室内が異常高温になっていたのでしょう。うひいっ、怖いっ!
現代の輸入車なら大丈夫だと思うけれど、インポーターに、「レギュラー入れてもいいですか?」と聞いても、「いいえ。ハイオクを入れてください」と答えるに決まってるので、本当のところはわかりません。
となると、せめて本来の指定オクタンである95は維持したい! となりますよね。よし、ハイオクとレギュラーを半々入れよう! と。実は私、それを実践していた時期があります。セルフスタンドで、おおむね半々ずつ給油していたんです(フェラーリではありません)。
でも、1年くらいでバカらしくなってしまいました。それで節約できる金額は、50リッター入れて300円弱。月に100リッター入れても600円にもならない。それよりも、クルマを買い替える頻度を減らせば、100万円単位で節約できる! これまで何十台もクルマを買ってきた自分が、いまここでレギュラーとハイオクを半々入れることにまったく意味はない! と。
私の結論は、「日本車はともかく、ハイオク指定の輸入車には、やっぱりハイオクを入れましょう。じゃなかったら日本車を買いましょう」というものになりました。どうもすみません。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=関 顕也)
![]() |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。 -
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起
2025.9.15デイリーコラムスズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。 -
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】
2025.9.15試乗記フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(後編)
2025.9.14ミスター・スバル 辰己英治の目利き万能ハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフ」をベースに、4WDと高出力ターボエンジンで走りを徹底的に磨いた「ゴルフR」。そんな夢のようなクルマに欠けているものとは何か? ミスター・スバルこと辰己英治が感じた「期待とのズレ」とは? -
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2025.9.13試乗記「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。