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第275回:モミ上げ伸ばして胸毛を生やせ

2024.01.15 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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今やセダンはスポーツカーの一種

典型的中高年カーマニアである私は、数年前、突如セダンに目覚めた。それまでセダンに乗ろうなどという気はほとんどなく、実用車には、より知的で活動的な(気がする)ステーションワゴンを選んでいたが、50代になって、セダンが猛烈にカッコよく感じられるようになったのである。

時まさにセダン真冬の時代。ドイツ車を除いて、続々とセダンが消滅していった。絶滅しそうになるとカーマニアは燃える。結局、少数派でいたいのかもしれない。

絶滅寸前のセダンは、特殊な車型になったがゆえに普遍性は必要なくなり、スタイリッシュな方向に向かった。「今やセダンはスポーツカーの一種」というのが私の持論である。

先般発表された「クラウン セダン」はその典型。従来のクラウンの枠をブッ壊して、スタイリッシュなファストバックスタイルになり、サイズも5mを超えた。思い切りがよろしい!

クラウン セダンは、大変いいクルマになっていた。乗り心地がすごくいい。適度にフンワリしているけれど適度にダンピングが効いているし、超ロングホイールベースの恩恵もあってピッチング方向の揺れがほとんどない。この乗り味は、かつて私が愛したハイドロ系シトロエンに近い。そういえば見た目的にも、どこか「シトロエンC6」に近い香りがなくもない。まさかクラウン セダンがこんなにも私の好みに近づくなんて! カーマニアの天変地異。

2023年11月に発売された「クラウン セダン」。新世代トヨタ・クラウンシリーズの第3弾モデルだ。燃料電池車とハイブリッド車をラインナップする。
2023年11月に発売された「クラウン セダン」。新世代トヨタ・クラウンシリーズの第3弾モデルだ。燃料電池車とハイブリッド車をラインナップする。拡大
「クラウン セダン」のサイドビュー。FRプラットフォームを生かした水平基調の伸びやかなプロポーションが特徴だ。
「クラウン セダン」のサイドビュー。FRプラットフォームを生かした水平基調の伸びやかなプロポーションが特徴だ。拡大
ハイブリッドパワートレインを搭載する「クラウン セダン」のエンジンルーム。245PSのシステム最高出力を誇る。
ハイブリッドパワートレインを搭載する「クラウン セダン」のエンジンルーム。245PSのシステム最高出力を誇る。拡大
「クラウン セダン」は、とにかく乗り心地がいい。テイストは、かつて私が愛したハイドロ系シトロエンに近い。
「クラウン セダン」は、とにかく乗り心地がいい。テイストは、かつて私が愛したハイドロ系シトロエンに近い。拡大
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クラウン セダンはあのクルマに似ている?

シルバーの「クラウン セダン ブラックパッケージ」に試乗中、大黒PAに立ち寄り、真横からシルエットを眺めて、私は電気に打たれた。

「オレのクルマにソックリじゃないか!」

オレのクルマとは、「プジョー508セダン」のことだ。

いやもちろん違うところはいっぱいある。サイズも違うし駆動方式も違うし、ウエストラインも水平基調vs前傾姿勢。サイドに入ったラインも違う。

しかし、ボディーカラーがシルバーのスタイリッシュなファストバックセダンという点はまったく同じだ。今日び、絶滅危惧種のセダン同士で、これだけ共通項があれば「ソックリ!」と断言できる。そう、現在の私の好みは、ボディーカラーがシルバーのスタイリッシュなファストバックセダンなのである!

「なぜシルバー?」

そう問われるかもしれないが、汚れが目立たないのでとってもラクなんです。

サイドビュー限定だが、わがプジョー508と比較して、クラウン セダンのほうがカッコいい部分が2点ある。

その1:より長い。ファストバックセダンはボディーが長大なほうが、おおらかでカッコいい。軍艦の種類でいえば戦艦だ。長大なセダンに乗った中高年は、戦艦の艦長である。対するプジョー508は重巡洋艦クラスにとどまる。

その2:タイヤ径がデカい。タイヤがデカいだけで、あらゆるクルマはカッコよくなる。

しかしそれでも、私は確信した。「オレのクルマのほうがカッコいい!」と。なぜなら、オレのクルマのほうがガイジン(≒西洋人)っぽいからだ!

スタイリッシュなファストバックスタイルが特徴となる「クラウン セダン」。トランクは独立しており、ハイブリッド車の容量は450リッターで、ゴルフバッグを3つ収納できる。
スタイリッシュなファストバックスタイルが特徴となる「クラウン セダン」。トランクは独立しており、ハイブリッド車の容量は450リッターで、ゴルフバッグを3つ収納できる。拡大
「クラウン セダン」のサイドビュー。時代の流れに合わせたシンプルなサイドパネル面で、目立ったラインはない。ボディーサイズは全長×全幅×全高=5030×1890×1475mmで、ホイールベースは3000mm。
「クラウン セダン」のサイドビュー。時代の流れに合わせたシンプルなサイドパネル面で、目立ったラインはない。ボディーサイズは全長×全幅×全高=5030×1890×1475mmで、ホイールベースは3000mm。拡大
愛車ちょいワル特急こと、わが「プジョー508 GT BlueHDi」のサイドビュー。サイドの峰がスカしたエリート感を醸し出している。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4750×1860×1420mmで、ホイールベースは2800mm。
愛車ちょいワル特急こと、わが「プジョー508 GT BlueHDi」のサイドビュー。サイドの峰がスカしたエリート感を醸し出している。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4750×1860×1420mmで、ホイールベースは2800mm。拡大
神奈川・横須賀の記念艦「三笠」前にて。三笠は明治36年に連合艦隊の旗艦となった戦艦である。ファストバックセダンはボディーが長大なほうがカッコよく、軍艦でいえば戦艦だ。そんな長大なセダンに乗った中高年は、戦艦の艦長といえる。敬礼!(写真=池之平昌信)
神奈川・横須賀の記念艦「三笠」前にて。三笠は明治36年に連合艦隊の旗艦となった戦艦である。ファストバックセダンはボディーが長大なほうがカッコよく、軍艦でいえば戦艦だ。そんな長大なセダンに乗った中高年は、戦艦の艦長といえる。敬礼!(写真=池之平昌信)拡大

セダン界では生き残るためには

プジョー508のサイドには、アウディ的なラインの峰がピューッっと走っている。もはや陳腐ともいわれるサイドの峰だが、この峰がスカしたエリート感を醸し出している。

その点クラウン セダンは、時代の流れに合わせたシンプルなサイドパネル面で、目立ったラインはない。そのぶんちょっとだけ優しく穏やかで、スカしてる感が弱い。

伝統的な国産おっさんセダンスタイルは、クラウンのリボーンとともに絶滅した。もはやセダン界には「センチュリー」を除いて日本人はおらず、ガイジンだけだ。セダンはガイジン的にスカしていればスカしているほどカッコいい。よってわが508の勝ちである。

フロントビューとリアビューも総合すると、差はさらに広がる。クラウン セダンは顔とお尻の表情が弱い。どっちもランプ類が弱い。フロントはヘッドランプが薄すぎて目がないみたいだし、リアにはちょっとだけ昭和のクラウン感が残っている。

その点508の顔は、モミ上げまでついてスカしまくりだ。尾崎紀世彦である。私は子供の頃、テレビで尾崎紀世彦を見て「なんてカッコいいんだ!」と思った。「ガイジンみたい!」と。プジョー508はまさに典型的ガイジン! クラウン セダンもだいぶガイジンっぽくなったが、508には及ばない。

いや、新型クラウン セダンは、信じられないほどガイジンっぽく仕上がっている。なにしろ全長5m超だし、タイヤ径デカいし。けど、もう一歩足りない。もっともっとガイジンになり切ってくれ! モミ上げ伸ばして胸毛を生やしてけろっ! そうでなければ、セダン界では生き残れないぜっ!

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

「クラウン セダン」のフロントマスク。ヘッドランプが薄すぎて目がないみたい見える。反対にリアにはちょっとだけ昭和のクラウン感が残っている。
「クラウン セダン」のフロントマスク。ヘッドランプが薄すぎて目がないみたい見える。反対にリアにはちょっとだけ昭和のクラウン感が残っている。拡大
「プジョー508」のフロントマスク。目鼻立ちがハッキリした特徴的なデザインが目を引く。さすがプジョー!
「プジョー508」のフロントマスク。目鼻立ちがハッキリした特徴的なデザインが目を引く。さすがプジョー!拡大
全64色に色替え可能なLED照明を各所に配置。行燈(あんどん)のような柔らかい間接照明で、車内の奥行き感や心地よさが得られるようにしたという「クラウン セダン」のインテリア。
全64色に色替え可能なLED照明を各所に配置。行燈(あんどん)のような柔らかい間接照明で、車内の奥行き感や心地よさが得られるようにしたという「クラウン セダン」のインテリア。拡大
セダンはスカしていればスカしているほどカッコいい。よって「クラウン セダン」とのセダン対決は、わが「プジョー508」の勝ちである。
セダンはスカしていればスカしているほどカッコいい。よって「クラウン セダン」とのセダン対決は、わが「プジョー508」の勝ちである。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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