第781回:今年で誕生30年! ホンダの純正用品ブランド「モデューロ」の新製品を試す
2024.04.03 エディターから一言 拡大 |
今年で誕生30周年を迎えるのが、ホンダの純正アクセサリーブランドである「Modulo(モデューロ)」だ。アニバーサリーイヤーを記念した取材会では、発売前のカスタムパーツを試すことができたので、その効能をモデューロの開発思想とともにリポートしよう。
拡大 |
30周年を迎える「Modulo」の足跡
ホンダの純正アクセサリーブランドであるモデューロ。その特徴は、ホンダの子会社であるホンダアクセスが開発を手がけていることにある。そのため、ホンダ車と同様の高いクオリティーと信頼性、安全性を備えていることが大きな魅力となる。
そのスタートは、1994年の「ビガー」用アルミホイールだった。翌1995年には車両法の規制緩和が行われ、世のアフターパーツのニーズが大いに拡大していく。それにあわせて、ホンダアクセスもエアロパーツやサスペンションを開発。1999年より、モデューロは正式にホンダの純正アクセサリーブランドとして展開されることになったのだ。
そんなモデューロの製品開発思想は、最初期から現在まで変わっていない。求めているのは「クルマを操る楽しさ」=「FUN」だ。その実現のために目指すのが、4輪の接地バランスである。どんな路面、状況でも、しっかりと4輪を接地させることで、意のままのコーナーリングとしなやかで上質な乗り味を実現させる。そして最適な4輪の接地バランスを生むために、エアロパーツ、サスペンション、アルミホイールが貢献する。これがモデューロの開発思想となっている。
「ホイールもサスペンションのひとつ」という開発思想
そんなモデューロブランドのアニバーサリー取材会で用意された目玉商品が、新型アルミホイール「MS-050」であった。これは2024年春にマイナーチェンジ予定の「ヴェゼル」用の製品で、発売のタイミングは車両とあわせることになる。取材時は、無論まだ発売前であった。
そのコンセプトは、「アルミホイールもサスペンションの一部」というホンダアクセス独自の開発思想をもとに、「ホイールをしならせることでタイヤの接地面圧を高め、タイヤのパフォーマンスを最大限に引き出すこと」だという。
開発を担当したホンダアクセスのスタッフは、「ステアリングを切ってから、ちょっと遅れてクルマが曲がるような印象を避けようと考えました。ホイールのどこか一部だけが強いと、弱いところだけがしなってしまいます。剛性のバランスをとって、ホイール全体をしならせることで、クルマがリニアに動くことを目指しました」と説明する。実際の開発では、コンマ何mm単位で厚みの異なるホイールを用意し、実走で比較して最終的な仕様を決定したという。ホイールに求められる基本性能を確保しながら、わずかな差で乗り味の違いを生み出すのだ。
ちなみに、筆者としては1960~1980年代を感じさせるどこか懐かしいデザインは、入社まもない若手が手がけたものであるという。ファッションのトレンドが何度も繰り返されるように、クルマのパーツもトレンドが復活するのだろう。
新型のホイールの効果を体感
取材会には広い駐車場を使った試乗コースが用意されていた。パイロンによって、定常円走行ができるようになっている。そのコースを、純正ホイールを装着したヴェゼルと、新型ホイールのMS-050を装着したヴェゼルを走らせて比較を行った。ちなみに、純正ホイールとMS-050の重量差はほとんどないという。異なるのは、MS-050は“しなり”を意識したつくりになっているという点だ。
比較試乗をしてみると、確かに純正ホイールとMS-050の違いを体感することができた。
まず、走り出した瞬間から「お、ほんの少し路面がよくなったのでは?」と感じるほどに微振動が減っている。定常円走行でタイヤの限界を超えるようなスピードで走れば、明らかにMS-050のほうがコントロールしやすい。重量の変わらないホイール同士でありながらも、フィーリングが異なるということに驚くばかりだ。
拡大 |
東京オートサロンでの反響が発売を後押し
続いて用意されていたのが、「シビック/シビックe:HEV」用のテールゲートスポイラーだ。これは、2023年の東京オートサロンに出品された「シビックe:HEVスポーツアクセサリーコンセプト」(参照)に装着されていたもので、形状は「シビック タイプR」用の製品と同じとなる。東京オートサロンでの評判のよさから商品化が決定され、2024年内の発売に向けて現在開発中であるという。
「ポイントはタイプR用と同じですけれど、ノーマルのシビックに最適化させています。ノーマルのシビックでも、タイプRに負けないような性能を求めるお客さんにも満足してもらえるように考えています」と開発担当のスタッフは説明する。
ウイングの裏側を見ると、タイプR用のそれと同様に“のこ刃(シェブロン)”形状の空力デバイスが備わっている。これは航空機のジェットエンジンから着想を得たもので、ギザギザののこ刃形状が空気の流れに干渉することで、乱流を車体から遠ざけ、高速走行時の安定感を高めるというものだ。また素材には樹脂を使用することで、手に入りやすい価格を狙うという。
日常生活でも効果のある“実効空力”
今回のシビック用空力パーツは、モデューロが得意とするもののひとつだろう。モデューロは2008年より「実効空力」という思想を提唱している。これは、風洞実験のみならず実走を重視する開発手法であり、日常の速度域でも体感できる空力効果を目指すというものだ。
取材時には、その実効空力を体感するための試乗メニューも用意されていた。それが「S660モデューロX」での、3種類のバンパーの比較試乗だ。ひとつは通称“ぬりかべ”と呼ばれる、真っ平らな前面を備えた状態のもの。続いてはノーマルバンパー。そして最後が、“実効空力バンパー”仕様だ。試乗はアルミホイールの比較時と同じで、定常円の特設コースを使用。速度は30~50km/hほどだ。
最初に試したのは“ぬりかべ”仕様だ。見た目はスゴいけれど、正直、違和感はなかった。ところがノーマルバンパー仕様に乗ると、クルマがぴたりと安定する。そして最後の“実効空力バンパー”仕様では、より運転が容易になるのだ。特に最後の一台は、後輪のグリップも非常にわかりやすくなっていた。フロントタイヤのグリップで曲がるのではなく、4輪を使って走る実感が強くなる。まさに、モデューロが提唱する“4輪の接地バランス”が体感できる比較試乗となった。
この日の取材では、新型のアルミホイールと開発中のテールゲートスポイラーを通し、モデューロの開発思想を体感することができた。単なるドレスアップのためのアクセサリーではなく、しっかりとした効果を提供するというのが、モデューロの大きな価値なのだ。
(文と写真=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
-
第850回:10年後の未来を見に行こう! 「Tokyo Future Tour 2035」体験記 2025.11.1 「ジャパンモビリティショー2025」の会場のなかでも、ひときわ異彩を放っているエリアといえば「Tokyo Future Tour 2035」だ。「2035年の未来を体験できる」という企画展示のなかでもおすすめのコーナーを、技術ジャーナリストの林 愛子氏がリポートする。
-
第849回:新しい「RZ」と「ES」の新機能をいち早く 「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」に参加して 2025.10.15 レクサスがラグジュアリーブランドとしての現在地を示すメディア向けイベントを開催。レクサスの最新の取り組みとその成果を、新しい「RZ」と「ES」の機能を通じて体験した。
-
第848回:全国を巡回中のピンクの「ジープ・ラングラー」 茨城県つくば市でその姿を見た 2025.10.3 頭上にアヒルを載せたピンクの「ジープ・ラングラー」が全国を巡る「ピンクラングラーキャラバン 見て、走って、体感しよう!」が2025年12月24日まで開催されている。茨城県つくば市のディーラーにやってきたときの模様をリポートする。
-
第847回:走りにも妥協なし ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を試す 2025.10.3 2025年9月に登場したミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」。本格的なウインターシーズンを前に、ウエット路面や雪道での走行性能を引き上げたという全天候型タイヤの実力をクローズドコースで試した。
-
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ・マカン4編
2025.11.14webCG Moviesポルシェの売れ筋SUV「マカン」が、世代交代を機にフル電動モデルへと生まれ変わった。ポルシェをよく知り、EVに関心の高いレーシングドライバー谷口信輝は、その走りをどう評価する? -
ホンダが電動バイク用の新エンブレムを発表! 新たなブランド戦略が示す“世界5割”の野望
2025.11.14デイリーコラムホンダが次世代の電動バイクやフラッグシップモデルに用いる、新しいエンブレムを発表! マークの“使い分け”にみる彼らのブランド戦略とは? モーターサイクルショー「EICMA」での発表を通し、さらなる成長へ向けたホンダ二輪事業の変革を探る。 -
キーワードは“愛”! 新型「マツダCX-5」はどのようなクルマに仕上がっているのか?
2025.11.14デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」でも大いに注目を集めていた3代目「マツダCX-5」。メーカーの世界戦略を担うミドルサイズSUVの新型は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 開発責任者がこだわりを語った。 -
あの多田哲哉の自動車放談――フォルクスワーゲン・ゴルフTDIアクティブ アドバンス編
2025.11.13webCG Movies自動車界において、しばしば“クルマづくりのお手本”といわれてきた「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。その最新型の仕上がりを、元トヨタの多田哲哉さんはどう評価する? エンジニアとしての感想をお伝えします。 -
新型「シトロエンC3」が上陸 革新と独創をまとう「シトロエンらしさ」はこうして進化する
2025.11.13デイリーコラムコンセプトカー「Oli(オリ)」の流れをくむ、新たなデザイン言語を採用したシトロエンの新型「C3」が上陸。その個性とシトロエンらしさはいかにして生まれるのか。カラー&マテリアルを担当した日本人デザイナーに話を聞いた。 -
第936回:イタリアらしさの復興なるか アルファ・ロメオとマセラティの挑戦
2025.11.13マッキナ あらモーダ!アルファ・ロメオとマセラティが、オーダーメイドサービスやヘリテージ事業などで協業すると発表! 説明会で語られた新プロジェクトの狙いとは? 歴史ある2ブランドが意図する“イタリアらしさの復興”を、イタリア在住の大矢アキオが解説する。









































