クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

トヨタ・ランドクルーザー“70”AX(4WD/6AT)/ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)

信頼される理由がある 2024.05.28 試乗記 山田 弘樹 「トヨタ・ランドクルーザー」ファミリーのなかでも、フラッグシップモデルにあたる“300”と、究極のワークホースである“70”に試乗。オフロードコースでのチャレンジを通して両モデルの実力に触れ、世界中で信頼される理由を垣間見た。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

兄弟そろって質実剛健

みんな大好き、ランドクルーザー! 「さなげアドベンチャーフィールド」で開催されたオフロードチャレンジは、いよいよ後編に突入だ。前半ではランクル3兄弟の中核モデル“250”を試したが(参照)、ここでは長兄“300”と、ナンバリング的には末弟にあたる“70”の走りを確認しながら、シリーズの全容をつかんでみよう。……ん? その歴史から考えると“70”が長兄で“300”が次男か? もしかしたら“70”はお父さんかも。

とにもかくにも2021年にフルモデルチェンジを果たしたランクル“300”は、シリーズのトップレンジモデルだ。トヨタも“300”が属する「ステーションワゴン」系を「ランクルを象徴する存在」と位置づけており、常に最新・最高の技術を投入するモデルだとしている。

ちなみに“250”は生活に根ざした「ライトデューティー」で、“70”は普遍的な「ヘビーデューティー」。そしてなにより大切なのは、これらすべてのモデルが、おしゃれSUVではなく生粋のオフローダーだということだ。タフだからこそ世界中の人たちの生活を支えられるわけで、その質実剛健さから、ユーザーとの間に信頼が生まれている。

トヨタもそれがわかっているから、高級路線へとシフトし、SUVブームの波に乗った「200系」や「プラド」から原点回帰するため、今回ブランディングを刷新したのだろう。そしてそのテストフィールドに、素人にはちょっとタフな“さなげ”を選んだのだ。

1951年の「トヨタ・ジープBJ型」を起源に持つクロスカントリーモデル「ランドクルーザー」。ランドクルーザーという名前となったのは1954年のことで、今日に受け継がれる車名としては、日本最古の歴史を誇る。
1951年の「トヨタ・ジープBJ型」を起源に持つクロスカントリーモデル「ランドクルーザー」。ランドクルーザーという名前となったのは1954年のことで、今日に受け継がれる車名としては、日本最古の歴史を誇る。拡大
日本で販売される「ランドクルーザー」のラインナップ。今日では、ライトデューティー系の“250”(写真中央2台)が“生活実用”のための基幹モデルとされており、ヘビーデューティー系の“70”(写真向かって右)は業務用途や過酷な環境下での使用を主体とした“普遍”のモデル、ステーションワゴン系の”300”(同左)は、最新の技術により率先して進化する、ランクルの“象徴”として位置づけられている。
日本で販売される「ランドクルーザー」のラインナップ。今日では、ライトデューティー系の“250”(写真中央2台)が“生活実用”のための基幹モデルとされており、ヘビーデューティー系の“70”(写真向かって右)は業務用途や過酷な環境下での使用を主体とした“普遍”のモデル、ステーションワゴン系の”300”(同左)は、最新の技術により率先して進化する、ランクルの“象徴”として位置づけられている。拡大
オフロードコースを走行する“70”(写真左手前)と“300”(同右奥)。ヘビーデューティー系の“70”と、“300”を含むステーションワゴン系の「ランドクルーザー」は、それぞれ累計290万台がグローバルで販売されてきた。
オフロードコースを走行する“70”(写真左手前)と“300”(同右奥)。ヘビーデューティー系の“70”と、“300”を含むステーションワゴン系の「ランドクルーザー」は、それぞれ累計290万台がグローバルで販売されてきた。拡大
トヨタ の中古車webCG中古車検索

まさに王者の貫禄

そんなさなげでランクル“300”は、素晴らしい走りを見せた。特に今回はサスペンションを超ロングストローク化した「GRスポーツ」仕様だったから、岩場やモーグルでの足つきのよさが、“250”とは言葉どおりに段違いだった。

専用に仕立てられたスプリングとスタビライザー。特にスタビは前後で独立制御され、今回のようなオフロードではフリー(締結を解除)とすることでホイールストロークを稼ぐ。4WDのモードはローギアードの「L4」に設定。マルチテレインセレクトを使えば適宜路面に応じたモードを選択可能だが、オフロードビギナーの筆者は「オート」で固定。ナビゲーターの指示に従いハンドルを切って、言われたとおりにアクセル開度を合わせて悪路をクリアした。

ランクル“300”は、その都度電子制御ブレーキを利かせながらトラクションを稼ぎ、トルクを上手に伝えて急斜面を登って行く。車体がどんなに傾いても4つのタイヤが路面を離さない。可変ダンパー「AVS」がゆっくりとそのロールを制御する走りは快適を通り越して包容力に満ち、王者の貫禄。ランクル“250”ではその高い走破能力に喜ぶ筆者だったが、“300”の走りには圧倒された。

さなげのインストラクター、熟練のおじちゃんいわく、昔はラインを考えて、必要があればいったんクルマから降りて様子を見たりしたという。「ハンドルをグリグリこじって路面を探りながら、頭を使って走るのが面白いんだけどねぇ!」と笑っていたが、こちらとしてはこの岩場をこともなげに走り切ったランクル“300”の走破性にすごみを感じた。

「ランドクルーザー“300”」のなかでも、今回試乗した「GRスポーツ」は悪路走破性を突き詰めた上級グレードである。フロント、センター、リアにデフロックを備え、電子制御ダンパー「AVS」や、前後スタビライザーのロック/フリー機構「E-KDSS」なども標準で装備される。
「ランドクルーザー“300”」のなかでも、今回試乗した「GRスポーツ」は悪路走破性を突き詰めた上級グレードである。フロント、センター、リアにデフロックを備え、電子制御ダンパー「AVS」や、前後スタビライザーのロック/フリー機構「E-KDSS」なども標準で装備される。拡大
ブラックとダークレッドでコーディネートされた「GRスポーツ」のインテリア。操作系は大幅に電動化されているが、使いやすさ、わかりやすさ、そして確実に操作・入力できることを重視して、物理スイッチを多用している。
ブラックとダークレッドでコーディネートされた「GRスポーツ」のインテリア。操作系は大幅に電動化されているが、使いやすさ、わかりやすさ、そして確実に操作・入力できることを重視して、物理スイッチを多用している。拡大
「ランドクルーザー“300”GRスポーツ」のホイールアーティキュレーションは、「SDM」を備えた“250”より実に2割も大きく、前後リジッドアクスルだった「80系」をも超える数値を実現している。
「ランドクルーザー“300”GRスポーツ」のホイールアーティキュレーションは、「SDM」を備えた“250”より実に2割も大きく、前後リジッドアクスルだった「80系」をも超える数値を実現している。拡大

パワートレインに感じる上位モデルの説得力

ご存じランクル“300”は2種類のエンジンを持つが、このロック/モーグルセクションをガソリン仕様の3.4リッターV型6気筒ツインターボエンジン(415PS/650N・m)で走れたのはよかった。結局のところ、オートモードやクロールコントロールのおかげで繊細なアクセルワークは必要とされなかったが、「レクサスLS」由来のV6ユニットに、約2.5tの車重を急斜面で支えながら、滑る岩場をジワジワと登り切れるだけのタフさもあるとわかったからだ。これが3.3リッターディーゼルターボ(309PS/700N・m)だったら、「さすがのトルクだ!」で終わってしまっただろう。

もちろん、林道で走らせたディーゼルは素晴らしかった。ローギアードでの“すり足”に合わせて、遠鳴りにフワーッと響くサウンドは耳に心地よく、こういう場所だとノイジーどころかむしろ頼もしい。ぬかるんだ急な坂道を一気に駆け上るときの瞬発力はもちろん、その後のアクセルコントロールもガソリンエンジン並みに上々なのは、Vバンク内にタービンを備えるターボチャージャーのレスポンスゆえか。その力強さと制御のスムーズさに触れると、やはりこちらが上級機種なのだと実感する。

……とランクル“300”をベタ褒めするいっぽうで、同じプラットフォームを持ち、100kgほど軽く見切りもよい“250”にGRスポーツの足まわりを与えたらどうなるのだろう? とも感じた。もっとも“300”が見切りが悪いわけではないし、最小回転半径はむしろこちらのほうが10cm小さいくらいだから、ニーズがない限りはそれをあえて試す必要はないだろう。トヨタの言い分どおり、ランクル“300”は先進技術を率先して試す機体であり、“250”は民生機なのだ。レースでいえば開発タイヤとカスタマータイヤの関係に似ていて、すなわちランクル“300”で得た知見が、“250”に安定供給されるという構図が成り立つのではないかと思う。

「さなげアドベンチャーフィールド」の林間コースを走る「ランドクルーザー“300”」。ボディーは巨大だが最小回転半径は5.9mに抑えられており、車体の見切りもいいので、こうしたコースでも意外とストレスがない。
「さなげアドベンチャーフィールド」の林間コースを走る「ランドクルーザー“300”」。ボディーは巨大だが最小回転半径は5.9mに抑えられており、車体の見切りもいいので、こうしたコースでも意外とストレスがない。拡大
センターディスプレイの「マルチテレインセレクト」画面。選択中のドライブモードや、副変速機/デフロックの状態、車両の姿勢などが一目でわかる。
センターディスプレイの「マルチテレインセレクト」画面。選択中のドライブモードや、副変速機/デフロックの状態、車両の姿勢などが一目でわかる。拡大
パワーユニットは、3.4リッターV6ガソリンターボエンジン「V35A-FTS」(右)と、3.3リッターV6ディーゼルターボエンジン「F33A-FTV」(左)の2種類だ。
パワーユニットは、3.4リッターV6ガソリンターボエンジン「V35A-FTS」(右)と、3.3リッターV6ディーゼルターボエンジン「F33A-FTV」(左)の2種類だ。拡大
一部では「“250”が出たら“300”の人気も落ち着くのでは?」と推測されていた「ランドクルーザー“300”」だが、関係者いわく「現状はまったくそんなことはない」とのこと。依然として膨大なバックオーダーを抱えており、今も新規の受注を止めているという。
一部では「“250”が出たら“300”の人気も落ち着くのでは?」と推測されていた「ランドクルーザー“300”」だが、関係者いわく「現状はまったくそんなことはない」とのこと。依然として膨大なバックオーダーを抱えており、今も新規の受注を止めているという。拡大

ファッションで乗るにはいささか本気すぎる

そしていよいよ、お待ちかね。筆者も大好き、アナタも大好き、クルマ好きが愛してやまないランクル“70”のインプレだ。2014~2015年に行われた期間限定販売の終了から数え、約9年ぶりにカタログモデルとして日本国内で“再”復活となった。

その“70”が、熱心なファン以外の間でも注目されている。理由はものすごく乱暴に言って、まずは500万円を切る価格設定だろう。ランクル“300”もベースグレードは510万円と現実的だが、フラッグシップモデルの魅力に憧れるなら、770万円からのGRスポーツにどうしても目がいく。価格設定は“250”もほぼ同じで、ベースグレードの「GX」は520万円だが、「ZX」のディーゼルまで積み上げれば735万円が必要になる。対して“70”は「AX」のモノグレードで480万円。選択肢がなく、迷いようがない。今日のラインナップで車両価格が500万円を切る、唯一のランクルだ。

次いで理由に挙げられるのが、1984年以来、大きくその姿を変えていないルックスだろう。ツウな感じもするし、今どきむしろレトロな趣が新しい。だがしかし、ランクル“70”はファッションで乗ることが恥ずかしくなってしまうほど、ガチでピュアなオフローダーだった。

走りだして真っ先にうれしくなるのは、そのコンパクトさだ。1440mmしかない室内幅。アイポイントは高く車体は四角く、フロントガラス越しにボンネットの両端がハッキリと確認できる。

“300”から乗り換えると、乗り心地は笑えるほどに対照的だ。路面の凹凸を長足でいなす“70”だが、その入力は当たりこそ丸いものの遠慮なくコックピットを上下左右に揺さぶってくる。リサーキュレーティングボール式ステアリングの作動はマイルドだが、パワーステアリングは油圧式だから、コツコツと入力が伝わる。キックバックでハンドルもとられる。

1984年の発売以来、一度もモデルチェンジすることなく販売されている「ランドクルーザー“70”」。ラダーフレームに前後リジッドアクスルの足まわり、前後直結のパートタイム式4WDと、昔ながらのクロスカントリー車のかたちを今日に受け継ぐモデルだ。
1984年の発売以来、一度もモデルチェンジすることなく販売されている「ランドクルーザー“70”」。ラダーフレームに前後リジッドアクスルの足まわり、前後直結のパートタイム式4WDと、昔ながらのクロスカントリー車のかたちを今日に受け継ぐモデルだ。拡大
インテリアは各所にハードプラを用いた素っ気ないものだが、それだけに本物感がただよう。エアコンは昔懐かしの、スライドレバーのマニュアル式だ。
インテリアは各所にハードプラを用いた素っ気ないものだが、それだけに本物感がただよう。エアコンは昔懐かしの、スライドレバーのマニュアル式だ。拡大
シート表皮は合成皮革とファブリックの組み合わせ。2014~2015年に“再販”された30周年記念車とは異なり、リアシートの可倒機構は3:2の分割式となっている。
シート表皮は合成皮革とファブリックの組み合わせ。2014~2015年に“再販”された30周年記念車とは異なり、リアシートの可倒機構は3:2の分割式となっている。拡大
サスペンションは前後ともに車軸式で、フロントにコイルスプリング、リアにリーフスプリングを採用。複雑なギミックなしでも、ご覧のとおり圧巻の路面追従性を実現している。
サスペンションは前後ともに車軸式で、フロントにコイルスプリング、リアにリーフスプリングを採用。複雑なギミックなしでも、ご覧のとおり圧巻の路面追従性を実現している。拡大

運転の主役はドライバー

駆動モードがローレンジだと、停車中はエンジンの振動がブルンブルンと伝わってくる。ただしそれは悪路をゆっくり走るために、あえてアイドリング付近の回転を落としたマッピングを採用しているからだ。だから平地の岩場では、ゾウの歩み並みにゆっくりと歩を進めることができる。オンロードでは少し緩慢なフロントのリジッドアクスルが、モーグルでもタイヤをきちんと接地させる。

ちなみに“250”や“300”に装備される、車両下の路面を可視化するような多機能カメラの設定は、“70”にはない。おっちゃんが言ったように、必要なら外に出て自分の目で確認しなければならないというわけだ。面白いのはそんな“70”にも、タイヤの空転を抑えるブレーキ制御(アクティブトラクションコントロール)が付いたことだった。とはいえ“250”や“300”のように緻密な制御ではないから、ドライバーへの依存度は高い。

ということでロッククライミングでは、兄弟たちよりはるかに積極的にドライブする必要があった。激しく揺さぶられるコックピット。上り勾配がさらに厳しさを増す最終セクションでは、トラクションを途切れさせない運転がより強く求められた。

「止まらないように、止まらないように」

インストラクターの声に従いながら、左に右に暴れるステアリングを適度に押さえ込み、アクセルをグイグイと入れていく。そして頂きを乗り越えた後は、“250”のときよりも強い感動が得られた。その爽快感や達成感に「ハチロクみたいだ」とつぶやいたら、「確かにデビューした時期は近いから、それはあるかもしれないですね」とエンジニア氏に真顔で言われた。

だがそれと同時に、これがひとりでできるかな? とも感じた。大災害でもなければこうした場面に出くわすことはまずないが、仮に近い場面に遭遇したとして、筆者レベルであれば“250”のほうがはるかに安全だ。

勢いをつけて岩場を乗り越える「ランドクルーザー“70”」。同車には、悪路において自動で一定速走行を行う「クロールコントロール」などの機能は用意されておらず、ドライバーは自らの手足でクルマを操る必要がある。
勢いをつけて岩場を乗り越える「ランドクルーザー“70”」。同車には、悪路において自動で一定速走行を行う「クロールコントロール」などの機能は用意されておらず、ドライバーは自らの手足でクルマを操る必要がある。拡大
センターコンソールに備わるトランスファーレバー。ローレンジのギア比は2.488だ。
センターコンソールに備わるトランスファーレバー。ローレンジのギア比は2.488だ。拡大
フロントとリアに装備されるデフロックは、ステアリングコラム左脇の、ダッシュボードに備わるスイッチで操作する。
フロントとリアに装備されるデフロックは、ステアリングコラム左脇の、ダッシュボードに備わるスイッチで操作する。拡大
ダッシュボードに備わるダウンヒルアシストのスイッチ(写真中央)。同システムにブレーキ制御式のアクティブトラクションコントロールと、「ランクル“70”」にもいよいよ電制のアシスト機構が備わるようになった。
ダッシュボードに備わるダウンヒルアシストのスイッチ(写真中央)。同システムにブレーキ制御式のアクティブトラクションコントロールと、「ランクル“70”」にもいよいよ電制のアシスト機構が備わるようになった。拡大
「ランドクルーザー“70”」の3アングルは、アプローチアングルが33°、ランプブレークオーバーアングルが26°、デパーチャーアングルが23°。最大渡河深度は700mmとなっている。
「ランドクルーザー“70”」の3アングルは、アプローチアングルが33°、ランプブレークオーバーアングルが26°、デパーチャーアングルが23°。最大渡河深度は700mmとなっている。拡大

変わったことにも、変わらないことにも理由がある

ランクル“70”がいまだにこうしたプリミティブさを保っているのは、これを本当に必要とする国の人たちがいるからである。実際、日本仕様のリアのリーフスプリングは2枚と少なく、乗り心地を重視したものだ。対して海外には、荷物をオーバーロードする荒っぽい使い方を考えて、これを11枚に増やしている仕様もある。

全幅が長らく変わらないのも、現地から「変えないでくれ」という強い要望があるからだ。これは軽トラックでもよく聞く話だが、車幅が広がれば今まで通っていた道が通れなくなる可能性がある。彼らにとって、それは死活問題なのだ。初期のモデルに比べて現行“70”はボンネットが浮き上がっており、かつてを知るユーザーからはアグリーだと評されることもある。しかし、これも全幅を増やしたくなかったからだ。“70”は待望の2.8リッター直列4気筒ディーゼルターボ(204PS/500N・m)を搭載したことでエンジンの熱量が増えており、より大きなラジエーターを搭載する必要があった。それでもエンジンコンパートメントの拡大は避けたいので、ラジエーターをエンジンルーム内に斜めに積み、その影響でボンネットが膨らんだのだ。またこのボンネット形状は、歩行者保護基準への対応という役割も負っている。

つくりがシンプルなのも、直しやすいからだ。たとえ近くにディーラーがなくとも、最低限の知識と道具があれば修理ができ、いつまでも使い続けられるクルマである必要がある。開発陣のリサーチでは、走行距離が10万kmを超える頃にようやく純正部品の交換サイクルが始まる。40万kmは当たり前で、知り得るところではもう少しで100万kmに届くというオーナーがいたという。

「マツダ・ロードスター」が現行モデルになって原点回帰したと言われているが、その洗練っぷりは初代とは比較にならない。ひるがってランクル“70”は、言ってみればユーノスのまま現代に生き残り続けている、シーラカンスのような存在である。しかし、それがかたくなに守られているのは、生活に密着しているから。そんなリアリティーも含めてカッコよさだと思えるなら、ランクル“70”をファッションで乗るのも悪くない。月間販売台数は400台程度で、あっという間に2年分が売れてしまったということだが、ランクル“250”と同じ理由で、手に入るまでしぶとく待てばいいと思う。

(文=山田弘樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)

大きく盛り上がったボンネットの形状に注目。大幅改良を受けた「ランドクルーザー“70”」では、パワートレインの冷却性向上と歩行者保護の観点から、ボンネットの形状が変更された。
大きく盛り上がったボンネットの形状に注目。大幅改良を受けた「ランドクルーザー“70”」では、パワートレインの冷却性向上と歩行者保護の観点から、ボンネットの形状が変更された。拡大
パワーユニットには、最高出力204PS、最大トルク500N・mを発生する2.8リッター直4ディーゼルターボエンジン「1GD-FTV」を採用。シーケンシャルシフトマチック付きの6段ATが組み合わされる。
パワーユニットには、最高出力204PS、最大トルク500N・mを発生する2.8リッター直4ディーゼルターボエンジン「1GD-FTV」を採用。シーケンシャルシフトマチック付きの6段ATが組み合わされる。拡大
リアサスペンションは乗り心地を改善するため、“30周年記念車”(バン)で6枚だったリーフスプリングを2枚に削減。同時にロングテーパーリーフの“三日月”形状を最適化するなどして、十分な強度や耐久性を確保している。
リアサスペンションは乗り心地を改善するため、“30周年記念車”(バン)で6枚だったリーフスプリングを2枚に削減。同時にロングテーパーリーフの“三日月”形状を最適化するなどして、十分な強度や耐久性を確保している。拡大
ドライブトレインには「デュアルモードオートマチックロッキングハブ」を採用。マニュアル操作で前輪のハブをアスクルから切り離せば、2WD走行時における前軸用のドライブシャフト、ディファレンシャルギア、プロペラシャフトの回転抵抗が解消され、よりスムーズで効率のよい走りが可能となる。
ドライブトレインには「デュアルモードオートマチックロッキングハブ」を採用。マニュアル操作で前輪のハブをアスクルから切り離せば、2WD走行時における前軸用のドライブシャフト、ディファレンシャルギア、プロペラシャフトの回転抵抗が解消され、よりスムーズで効率のよい走りが可能となる。拡大
高い耐久性や堅牢(けんろう)さに加え、いまやプリミティブであること自体がひとつの魅力となっている「ランドクルーザー“70”」。プロはもちろん、クロカンを愛好する趣味人のなかにも、「このクルマでなければだめだ」という人は多いことだろう。
高い耐久性や堅牢(けんろう)さに加え、いまやプリミティブであること自体がひとつの魅力となっている「ランドクルーザー“70”」。プロはもちろん、クロカンを愛好する趣味人のなかにも、「このクルマでなければだめだ」という人は多いことだろう。拡大
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ拡大
 
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX/ランドクルーザー“300”GRスポーツ【試乗記】の画像拡大
 
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX/ランドクルーザー“300”GRスポーツ【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1990×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2520kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:415PS(305kW)/5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:7.9km/リッター(WLTCモード)
価格:770万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3万3190km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ拡大
 
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX/ランドクルーザー“300”GRスポーツ【試乗記】の画像拡大

トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1990×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2560kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:309PS(227kW)/4000rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:9.7km/リッター(WLTCモード)
価格:800万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

トヨタ・ランドクルーザー“70”AX
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX拡大
 
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX/ランドクルーザー“300”GRスポーツ【試乗記】の画像拡大
 
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX/ランドクルーザー“300”GRスポーツ【試乗記】の画像拡大

トヨタ・ランドクルーザー“70”AX

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1870×1920mm
ホイールベース:2730mm
車重:2300kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:204PS(150kW)/3000-3400rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1600-2800rpm
タイヤ:(前)265/70R16 112S M+S/(後)265/70R16 112S M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:10.1km/リッター(WLTCモード)
価格:480万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:720km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)

 
トヨタ・ランドクルーザー“70”AX/ランドクルーザー“300”GRスポーツ【試乗記】の画像拡大

◇◆こちらの記事も読まれています◆◇

トヨタ・ランドクルーザー“250”プロトタイプ【試乗記】
これぞ究極の現地現物  「トヨタ・ランドクルーザー」の開発者が語る相伝の“クルマづくり”
トヨタが「ランドクルーザー“70”」を発売 2015年以来の国内導入

山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

試乗記の新着記事
  • アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】 2025.9.17 最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。
  • トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.16 人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。
  • BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
  • スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.13 「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
  • トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】 2025.9.12 レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。
試乗記の記事をもっとみる
トヨタ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。