第330回:「マカン」のことは忘れましょう
2026.03.02 カーマニア人間国宝への道最新のポルシェの走りを味わう
私事で恐縮ですが、どんどん時代に取り残されています。クルマの進歩にココロもカラダもついていきません。どんどんパワフルになる新型車に興味が持てません……。これは明らかな老化。オイル(老いる)ショック!
ただ、ポルシェに関してはちょっと違う。「911カレラT」という、オイル(老いる)ショックを乗り越える古典的な魅力を持ったスポーツカーが、現行モデルに存在するからだ。
カレラTはスバラシイ。なにしろ、930時代の香りすらほのかに残っている。ウットリ。
しかし他の911はそうでもない。デザインやインテリアはじめ、「ポルシェ!」という雰囲気はビンビンだが、乗ると「速くてカイテキだなぁ」という印象が先にくる。これなら「マツダ・ロードスター」のほうが濃いんじゃないか。
他のポルシェ、なかんずくSUVは言うに及ばず。中高年カーマニアは、郷愁に浸るしかない。
しかしまあ、自動車ライターですので、最新のポルシェも多少は知っておかねばなるまい。そこで、JAIA(日本自動車輸入組合)の大試乗会にて、2台のポルシェに試乗させていただきました。
1台目は「911タルガ4 GTS」。頭上のルーフ部だけがパッカーンと電動で開くタルガトップボディーに、4WDと新開発の「T-ハイブリッド」が組み合わされたゴーカな仕様である。
具体的には、3.6リッターの水平対向6気筒エンジンに、電動シングルターボを装着。8段PDKには56PSを発生するモーターを内蔵し、トータル最高出力は541PS、同最大トルクは610N・mとなっている。
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パワーを使い切れる911タルガ4 GTS
500PSオーバーというスペックをみただけで、なんかちょっと嫌な予感がする。これは速すぎるのではないか。パワーを使い切れないんじゃないか。
それは杞憂(きゆう)だった。911タルガ4 GTSは、4WDの安定性と車両重量の増加(1760kg)により、思ったほどは速すぎず、中高年でもちゃんとパワーを使い切ることができた(一瞬ですが)。
ただし、911らしい濃さがあるかと言われればそうでもない。やっぱりなんか快適すぎるし、重いボディーを馬力にモノをいわせてプッシュするという、いかにも現代的なあり方に新鮮味を感じない。やっぱ911は、いやポルシェは911カレラTのMTに限りますね! なにしろ1510kg+394PSですから。
最後に電動タルガトップを開けてみようとスイッチを押したら、途中で止まってしまいました。じゃ閉めようと思っても反応しない。ディスプレイにはなんと、「タルガルーフの故障」という表示が! 「引き続き走行が可能、整備が必要です」とあるので、じゃこのまま会場に戻ろうかなと思ったが、スピードを上げたら強大なリフトが発生して、後輪が浮くかもしれない。その前に持ち上がったリアゲート部が風でもげるかも? ゆっくり走ればいいんだけど。
そうだ、イタフラ車で故障の表示が出たときに真っ先にやる、エンジン再始動を試みよう。いったんエンジンを止めて、コンピューターに悪い記憶を忘れさせる作戦である。ポルシェに通用するだろうか。
成功! 開けるのはダメだったけど、閉めるほうは動いた!
無事会場に戻ってもう一度試したら、今度は完全オープン&クローズが可能になっていた。一時の気まぐれだったのね。現代のポルシェでも、こういうことがあるんだな。ちょっとほのぼの。
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新型「マカン」は意外なほど普通っぽいBEV
続いて「マカン ターボ」に乗る。「タイカン」に続くポルシェのBEVだ。マカンのような主力モデルを全面的にBEVにするなんてヤバくないか? というやじ馬根性も湧くが、個人的には、「マカンの内燃エンジンモデルに残ってほしい!」みたいな思いは特にないので、結構でございます。
で、電動マカンの印象はというと、「なんだか普通っぽいBEV」でした。
タイカンが出た当時は、スポーツモードにすると「ピョイィィィィ~ン」とSFみたいな電子音が鳴り響き、加速もUFO並みでとっても面白かったんだけど、こちらはそういう音は控えめ。加速も狂ったほど強烈じゃない。ポルシェにしては、ビックリするほど普通っぽいBEVだった。
これ、売れるんですかねぇ。これをわざわざ買うお客さまって、いらっしゃるんですかねぇ。そりゃまぁグローバルではそれなりにいらっしゃるんでしょうけど、ここ日本では、あまり多くないのではないでしょうか。
忘れましょう、マカンのことは!
先代マカンが日本に上陸した時は、まだデフレだったので、「600万円台から買えるポルシェ」がウリでしたが、現在は諸物価高騰の影響もあり、この電動マカン、価格は1038万円から1541万円となっております。「BYDラッコ」の発売が待ち遠しいな。
(文=清水草一/写真=清水草一、田村 弥、峰 昌宏、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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