第338回:古臭いほどイイに決まってる
2026.06.22 カーマニア人間国宝への道8代目はミドシップスーパーカー
担当サクライ君よりメールが届いた。
「次回、『コルベットZ06コンバーチブル3LZ』がご用意できますが、いかがでしょう」
シボレー・コルベット。ミドシップになった現行コルベット(C8)が登場したのは、何年前のことだろう。調べたら7年も前! ええーっ! そんなにたつのー!? つい最近のような気がしてたのに!
個人的には、コルベットのミドシップ化には反対だった。買う気もないのに反対する権利などないが、コルベットはフェラーリの対極であってほしい、という思いがあったが故である。
ただ、実際にC8コルベットに乗ったら感動した(参照)。見た目は田舎のフェラーリっぽいけど、6.2リッターV8 OHVのデロデロっとした吹け上がりはアメリカンの極致! ミドシップ化でトラクション性能が大幅に向上(FRはホイールスピンしちゃって怖かった)したうえに、それほど速くはないから、自由自在にアクセル全開を楽しめた。つまり、アメリカンOHVを味わい尽くす点に限れば、C8コルベットは最高であった。
そのC8コルベットのパワーアップ版がZ06であるらしい。その上には「ZR1」もあるみたいだが、そっちは日本に導入されていないので、国内ではZ06が最強のコルベットだ。
当日夜。サクライ君はアメリカンV8の咆哮(ほうこう)とともに来訪した。さすがのド迫力だ。騒音規制(日本は国連基準です)をクリアしているとは到底思えないが、そんなの知ったこっちゃない。これはコルベットなのだから。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
これじゃまるでフェラーリだ
オレ:ボディー、真っ黒だね。
サクライ:はい。真っ黒でド迫力です。
と言われても暗闇では迫力もわからないが、全幅が85mmも拡大されているというから、明るいところで見ればド迫力なのだろう。
なにはともあれ走りだす。
オレ:あれ、なんとなくOHVのデロデロ感が薄らいだね。
サクライ:はい。このクルマ、DOHCですから。
オレ:ええーーーーーーーっ! コルベットなのにOHVじゃないの!?
サクライ:はい。DOHCで646PSです。
ショック……。
思えばC6コルベットのZR1もスーパーチャージャーで武装して647PSだったけど、アレはノーマルとはボディーからして別物で、操縦性も信じられないほどハイレベルで、完全にレーシングカーって感じだった。これはホントにすごいと脱帽したが、このクルマはそもそもコンバーチブルだし、そこまでは本気じゃない。ちょっと流した程度だと、ノーマルに軽くツインカム載せました、くらいにしか感じない。
なんとなく釈然としない思いを抱きつつ、Z06コンバーチブルは首都高を流す。前が空いたところでアクセル全開! 5.5リッターV8 DOHCがビイィィィィィーンと回って猛ダッシュをかます。そろそろレッドゾーン……と思ったらまだまだだった。
オレ:ええーーーーっ! このエンジン、8500rpmまで回るの!?
サクライ:はい。DOHCですから。
オレ:こ、これじゃまるでフェラーリじゃん!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
コルベットは合衆国の宝
フェラーリエンジンは高回転高出力型の典型。どこまで回るかが勝負である。対するコルベットは本来、低回転バカトルク型が持ち味。それが8500rpmも回っちゃうのだ。わが「フェラーリ328」は7800rpmからレッドになる。コルベットのほうが高回転高出力なんて困っちゃう!
オレ:サクライ君、俺はさ、スポーツカーは古臭いほどイイと思ってるんだよ。だからこのクルマは間違ってるよ!
サクライ:僕はその真逆です。スーパーカーは、とんがってるほどイイと思います。
オレ:現代の技術でとんがり続けてどこ走るの! 宇宙まで飛んでっちゃうじゃない!
サクライ:それくらいでいいと思います。
まあ、そういう考え方もあるだろう。C8コルベット、ルマン24時間レースでクラス優勝も果たしたし。
しかし私としては、C8なら絶対ノーマル(OHV)のほうがイイし、どうせならFRがイイのでC7のほうがイイし、となるとC6のほうがさらにイイ。行き着くところは初代、ということになるが、現実的にはC6の中古(300万円台からアリ)あたりが一番お買い得かな~、みたいな結論になる。
本国アメリカでは、スーパーカーの頂点クラスに君臨するために、ミドシップやDOHCで武装することも必要だろう。コルベットは合衆国の宝なのだから。
しかし、私のように首都高を流すだけの日本人は、コルベットは古臭いほどイイに決まってる。まぁ、フェラーリもなんですけどね。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=ゼネラルモーターズ・ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第337回:「ルーチェ」に比べればタダ同然 2026.6.8 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで3代目に進化した「日産リーフ」を夜の首都高に連れ出した。「非常に良くなった」「静かで快適」といった評判を耳にする量販・量産BEVのパイオニアに、カーマニアは何を感じた?
-
第336回:やっぱり絶交! 2026.5.25 清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?
-
第335回:水平尾翼が効いてるのかな 2026.5.11 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで2代目となった「シトロエンC5エアクロス」で、夜の首都高に出撃した。最新のデザイン言語を用いて進化した内外装とマイルドハイブリッドの走りに、元シトロエンオーナーは何を感じた?
-
第334回:親でもここまではしてくれまい 2026.4.27 清水草一の話題の連載。先日試乗した「トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」はすごかった。MTと縦引きパーキングブレーキの組み合わせを用意してくれるトヨタは、カーマニアにとってもはや神である。
-
第333回:毛が生えようが、ハゲようが 2026.4.13 清水草一の話題の連載。「ジープ・アベンジャー」に追加設定された4WDモデル「アベンジャー4xeハイブリッド」で夜の首都高に出撃した。ステランティスで広く使われるマイルドハイブリッドパワートレインと4WDの組み合わせやいかに。
-
NEW
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】
2026.6.23試乗記三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。 -
NEW
これからの車両開発に人間のテストドライバーは必要か?
2026.6.23あの多田哲哉のクルマQ&AAI技術が急速に進化している今、そしてこの先、車両開発の最終段階でテストドライバー(人間)が試作車に乗って評価する必要はあるのか? 元トヨタのチーフエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド3リミテッド(6MT)【レビュー】
2026.6.22試乗記ハーレーダビッドソンのユニークな三輪モデル「トライク」シリーズが大幅に進化。お値段800万円超(!)の最上級モデル「CVOストリートグライド3リミテッド」の試乗を通し、新しくなった乗り味と、受け継がれる独創のファン・トゥ・ライドをリポートする。 -
「マツダ2」の生産終了と新型「CX-3」のタイ生産を公表 マツダの次世代コンパクトカー戦略を探る
2026.6.22デイリーコラム「マツダ2」を2026年8月に生産終了し、新型「CX-3」をタイで生産すると公表しているマツダ。コンセプトカー「ビジョンXコンパクト」をベースとするデザインが採用されるとうわさされる、マツダの次世代コンパクトカー戦略を探る。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(後編)
2026.6.21ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル/STIであまたのクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、ホンダの上級SUV「CR-V」に試乗! 北米を中心に、世界中で人気を博す最新SUVの仕上がりに、自身もかつてクロスオーバーSUVの走りをつくり込んだ辰己さんは、何を思うのか? -
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】
2026.6.20試乗記トヨタからワゴンのようなボディーの新型電気自動車「bZ4Xツーリング」が登場。いわば既存の「bZ4X」のロングボディー版だが、試乗した4WDモデルはよりパワフルになっているなど、長さ以外も結構違う。350km余りをドライブした印象を報告する。









































