第342回:どうしてこんなに高いんですか
2026.08.17 カーマニア人間国宝への道日本市場にEVの巨人が突撃
わが家の近所にBYDの正規ディーラーができた。それはまさに、軽規格の電気自動車(BEV)「ラッコ」の発表(参照)に合わせたタイミングだった。
BYDは世界一のEVメーカー。耐久性に優れたリン酸鉄リチウムイオン「ブレードバッテリー」も自社製である。本格的なEV時代がやってくれば、おそらくBYDが世界の自動車業界をリードするだろうし、少なくとも中国製EVが覇権を握ることは確実だ。この差はもはや挽回不能と思われる。
かつて日本は太陽光パネルで世界をリードしたが、現在はほとんど絶滅寸前。今から挽回するのは極めて困難だ。それと似ている。
私は13年前、自宅屋根に太陽光パネルを設置する際、「絶対に国産を!」とこだわってパナソニック製を選んだが、無駄な抵抗だった。EV業界もそれと同じ道を歩むんじゃないか? 少なくとも車載バッテリーは、そのうち全世界ほぼすべて中国製になるでしょう。
BYDはすでに世界一のEVメーカーだが、常にチャレンジスピリットを忘れない。その象徴が軽BEVラッコだ。
日本の軽BEV市場なんつーアリンコみたいな世界に、あえて巨人が突撃してきた。ラッコを足掛かりに、全世界にミニマムなシティーコミューターBEVという、新たな大市場を創設しようという野望か? とにかくスゲエ! そんな元気、日本にはありません。補助金で国内市場を守るのが精一杯です~。
ということで私は、BYDを勇者として尊敬している。その勇者のディーラーが近所にできたのだから、足を運んでみないテはないだろう。
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走りは軽BEVのほぼベスト
ちょうど愛車の一台「ダイハツ・タント」の残クレ期間(5年間)が間もなく終わる。タントの代わりにラッコを買うってのは、かなり現実的な選択だ。じゃなかったら中古の「日産サクラ」(激安!)かな。私がBEVを買うなら、“ご近所専用の軽BEV”以外にあり得ない。
BYDディーラーに行くなら、当然ラッコに試乗したい。私は数日前にネットで試乗の予約を入れたが、その時点では開店前だったせいか返信ナシ。こりゃ予約入ってないかなと思ったが、時間通りに行ってみた。
タントでBYDディーラーに乗りつけると、すぐ営業マンに案内された。やっぱり予約は認識されていなかったが、私のほかに客はおらず、試乗車も空いていたので、無事試乗することができました。乗ったのは航続距離が短くてお安いほうの「200」です。
ラッコの詳しい試乗記は、他の記事を読んでいただくとして、私が近所をちょこっと試乗した印象は、「軽BEVのほぼベスト」というものだった。私のタント(ノンターボの福祉車両)と比べたら、走りは雲泥の差以上。走りはサクラも「ホンダN-ONE e:」 も十分いいけどさ、ラッコはスライドドアのハイトワゴンというハンデをまったく感じさせないんだよね。デザインもインテリアもシンプルでカーマニア好みだ。
そしてお値段(補助金含まず)は、ライバルに比して驚くほど安い。軽BEVの価格(最安グレード)を比較するとこうなる。
- ラッコ200:214万5000円
- サクラS(法人・レンタカー向け):244万8600円
- N-ONE e:G:269万9400円
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補助金の申請はそんなに大変?
N-ONE e:Gは、ラッコ200やサクラSに比べると航続距離が約1.5倍なので、対抗馬となるラッコは239万8000円の「300プラス」になるけど、それでもやっぱり30万円安い。それでいてラッコは、スライドドア付きのハイトワゴン。しかも輸入車。コスト競争力の差は歴然だ。
国産勢はもはや、BYDいじめともとれる補助金の差(国&各地方自治体とも)でリードを保つのみ。補助金が尽きればそれで終わりだ。
試乗を終えて、見積もりを取ってもらった。
値引きはゼロ。これは仕方ないだろう。しかし合計金額が思ったより高い。
よく見ると、「登録代行手続一式(補助金申請含む)」という項目が、15万9500円となっている。なんだこりゃ?
オレ:この手数料、どうしてこんなに高いんですか? 普通、2~3万円でしょう。
BYD営業:こちらはディーラーが独自に決めていい項目でして、補助金の申請手数料も含まれていますので。
オレ:ラッコの補助金の申請って、そんなに大変なんですか?
BYD営業:はい。記載に誤りがあると、はねられたりしますから(モロ言い訳)。
ラッコの国からの補助金(CEV補助金)は15万円。15万円もらうために15万9500円かかる、みたいなもんですかね? いやまぁ東京都の補助金も申請してくれるんでしょうけど、このディーラーはちょっとアレだな。サヨーナラ。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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