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第134回:アウディデザイン水掛け論 ―これが未来のアウディか? 「ヌヴォラーリ」と他のモデルに見る不整合―

2026.10.28 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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2026年6月に発表された「アウディ・ヌヴォラーリ」。499台限定で販売されるスーパーカーで、2027年前半から納車が開始される。
2026年6月に発表された「アウディ・ヌヴォラーリ」。499台限定で販売されるスーパーカーで、2027年前半から納車が開始される。拡大

微妙に迷いが見えていたアウディのデザインに、新しい潮流が? これまでとは異なるモチーフが取り入れられた「ヌヴォラーリ」の造形は、次世代のフォーシルバーリングスを指し示すものなのか? カーデザインの識者と、アウディデザインの未来について考えた。

「ヌヴォラーリ」のリアからの俯瞰(ふかん)。フラットな面構成とシャープなプレスラインが目を引くが……。
「ヌヴォラーリ」のリアからの俯瞰(ふかん)。フラットな面構成とシャープなプレスラインが目を引くが……。拡大
2025年9月にミラノで発表された「コンセプトC」(上)との比較。フロントマスクの構成やクオーターウィンドウのないリアカウルまわりに面影は残るが、その他のモチーフや面の造形はことごとく異なっている。
2025年9月にミラノで発表された「コンセプトC」(上)との比較。フロントマスクの構成やクオーターウィンドウのないリアカウルまわりに面影は残るが、その他のモチーフや面の造形はことごとく異なっている。拡大
「ヌヴォラーリ」のデザインスケッチ。フロント側の塊に対して、リアのカウルやフェンダーが覆いかぶさるような造形を意図しているのが分かる。
「ヌヴォラーリ」のデザインスケッチ。フロント側の塊に対して、リアのカウルやフェンダーが覆いかぶさるような造形を意図しているのが分かる。拡大

ヌヴォラーリに見る次世代アウディの方向性

webCGほった(以下、ほった):今回は、最近のアウディデザインについて議論しましょう。アウディについてはこれまでにも何度か取り上げてきましたけど、その後もいろんなモデルが出て、新しい動きが見えてきたっぽいので。

渕野健太郎(以下、渕野):次世代のアウディデザインとしては……まずは「コンセプトC」というのが出ましたよね。

ほった:ちょうど1年くらい前ですね。

渕野:あれを見たとき、アウディはミニマルなデザインに回帰しようとしているんだなと思いました。ただやりたい世界観は分かるのですが、昔のデザインモチーフを寄せ集めたようで、新しさをあまり感じませんでしたね。

清水草一(以下、清水):初代「TT」と「R8」を合体させたみたいでしたね。そんで顔はモアイ像(参照)。

渕野:なおかつ、グリルから始まるフロントの面が奥に入っていて、それを包むようにサイドの面が飛び出しているもんですから、オーバーハングがすごく長く見えたんですよ。

ほった:はいはいはい。

渕野:それに対して、今度は「ヌヴォラーリ」なるクルマが登場しましたよね。こちらは顔と全体がひとつの塊になった印象があって、「アウディが次世代でやりたい表現はこんな感じなのか」というのが見えてきた気がしました。

清水:丸じゃなくて四角だと。

渕野:立体構成は分かりやすいんですよ。デザインスケッチを見ると、フロントの塊にドアの後ろの部分でリアの塊がかぶさるような構成になっています。それがすごく分かりやすい。ただやっぱり、サイドから見たときのフロントのオーバーハングの長さが気になります。

清水:オーバーハングの長さ、さらにハンパないですよね。こりゃ段差に気をつかうだろうなー。

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初代R8のころの輝きはいずこ?

渕野:このクルマ、ランボルギーニの「テメラリオ」がベースですよね? フロントガラスも多分同じパーツだと思います。で、ランボルギーニのようにフロントオーバーハングが長いパッケージの場合、できるだけフロントを軽く見せるために、顔を下げるんですよ。でもヌヴォラーリは、割と顔のボリュームも強い。だから、どうしてもちぐはぐな感じがするんです。

清水:スーパーカーなのに顔がモアイ像ですから!

渕野:このままのパッケージでいくんだったら、顔をもうちょっと下げたいし、この顔でいくんだったら、フロントタイヤをもうちょっと前のほうに動かしたい。現状はちょっとズレてますよね。

ほった:キャブフォワードに加えて顔が重いから、重心がだいぶ前に寄って見えます。

渕野:テメラリオに比べると、どこか無理しているというか……。そういう違和感はありますけど、次世代のアウディの表現がこれだというんだったら、一つ納得感はあるなと思いました。

清水:いやー、全然納得できないですよ!「なんじゃこれ?」ですよ。初代R8が出たときは、アウディデザインは飛ぶ鳥を落とす勢いだったし、R8自体も「すごいのが出てきた!」「スーパーカーデザインの革命だ!」って感じがあったじゃないですか。それと比べると、後退しか感じません。

渕野:そうですね。20年ぐらい前のコンセプトカーに見えますよね。でも、この表現を一般的なアウディ車に生かせば、それはそれでひとつの個性として出るかなと。

清水:確かに「顔は全部モアイ像でいく!」ってことなら、個性は出るかな。このクルマ自体は全然ダメだけど。

ほった:モアイ像が次世代アウディの個性ですか? かんべんしてくださいよ。次世代BMWのグラサンしたケツアゴドクロといい(参照)、デザイナーはホントにこれをカッコいいと思って描いてるのかな。

「ランボルギーニ・テメラリオ」(上)と「アウディ・ヌヴォラーリ」(下)の比較。ホイールベースが同一なので、そこで縮尺をそろえてみたのだが……。 
清水「やっぱり頭がデカすぎる!」 
ほった「というか、そもそも全体にぜい肉が付きすぎているのでは?」
「ランボルギーニ・テメラリオ」(上)と「アウディ・ヌヴォラーリ」(下)の比較。ホイールベースが同一なので、そこで縮尺をそろえてみたのだが……。 
	清水「やっぱり頭がデカすぎる!」 
	ほった「というか、そもそも全体にぜい肉が付きすぎているのでは?」拡大
2006年登場の初代「アウディR8」。今から実に20年前のクルマだが、そのデザインはいまだに新鮮さを失っていない。
2006年登場の初代「アウディR8」。今から実に20年前のクルマだが、そのデザインはいまだに新鮮さを失っていない。拡大
清水「ほった君はどっちのほうが新しくて、カッコいいと思う?」 
ほった「上ですな(即答)」
清水「ほった君はどっちのほうが新しくて、カッコいいと思う?」 
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清水「そもそもアウディは、本当にこのモアイ顔でやっていくつもりなのかなぁ?」
清水「そもそもアウディは、本当にこのモアイ顔でやっていくつもりなのかなぁ?」拡大

他のニューモデルとの間にある乖離

渕野:ただアウディも、果たしてこれがどれだけ市販車に生かされるのか疑問ではあるんです。今のアウディのラインナップを見ると、これとは方向性が全然違うじゃないですか。一体どういうことなんだろう、本当にこの流れになっていくのかな? と。

ほった:なにしろヌヴォラーリの発表後に、Q9だとか「A2 e-tron」みたいなモデルが出てるわけですからね。

渕野:いやいや。A2 e-tronはグリル以外はミニマルな感じで、ヌヴォラーリの方向性(というか初代TT)に近い印象を持ちました。やっぱり少しずつ変わっていこうとしているんでしょう。

Q9もプロポーションはそんなに悪くないんです。ただやっぱり顔が強すぎる。ミニマル感は全くないようなデザインなので、ヌヴォラーリとの整合性が取れないんです。

清水:Q9は顔がシロナガスクジラ。モアイ像とは水と油だ。

渕野:リアもスタンスがよくシンプルにまとまってますよね。この顔を見ると、やっぱり北米や中国がメインターゲットなんでしょう。

ほった:サイズ的にも。

渕野:じゃあこの下のクラスがどうかというと、最近出た「Q3」も、やっぱり顔が結構強いですよね。ボディーやリアまわりは割とスッキリしている感じがあるんだけど、顔のイメージは、さっきのヌヴォラーリとは全然違う。

清水:そもそも最近のアウディデザインって、ヌヴォラーリ以外はヌメヌメした方向に走ってますよね?

渕野:ヌヴォラーリは無機質なのに、それ以外の市販車の表現は、有機的でマッチョです。一般的なアウディのイメージというと、知的で緻密で、BMWやメルセデスに比べても客層がジェントルな印象だったのに、そことの落差がありますね。

ほった:禁止薬物を打っちゃったみたいな。

清水:グリルが化け物になっちゃったもんね。それでいてアウディって、バカになりきれていないじゃないですか。今のBMWやメルセデスって、ある意味バカ丸出し(笑)で開けっぴろげなんだけど、アウディはカッコつけつつ化け物になっている。そこが好きになれないなぁ。

最近デビューした新世代アウディの一例。まずは2025年6月に発表された3代目「Q3」。
最近デビューした新世代アウディの一例。まずは2025年6月に発表された3代目「Q3」。拡大
フルサイズSUVの「Q9」。 
清水「フロントグリルが、本当にシロナガスクジラみたい」
フルサイズSUVの「Q9」。 
	清水「フロントグリルが、本当にシロナガスクジラみたい」拡大
渕野「『Q9』は、プロポーションやリアまわりはそんなに悪くないと思うんですが……」 
ほった「というか、このリアクオータービューからあのフロントマスクが思いつかないですよ」
渕野「『Q9』は、プロポーションやリアまわりはそんなに悪くないと思うんですが……」 
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こちらは2026年9月にデビューしたエントリーレベルの電気自動車「A2 e-tron」。シンプルなボディーの造形には「ヌヴォラーリ」との共通性を感じるものの……やっぱり“顔”が気になる。
こちらは2026年9月にデビューしたエントリーレベルの電気自動車「A2 e-tron」。シンプルなボディーの造形には「ヌヴォラーリ」との共通性を感じるものの……やっぱり“顔”が気になる。拡大
清水「アウディってこう、オラオラ系でいこうとしている割には、どうにも吹っ切れられていないんだよね」 
ほった「仕方ないですよ。根が優等生なんだから」
清水「アウディってこう、オラオラ系でいこうとしている割には、どうにも吹っ切れられていないんだよね」 
	ほった「仕方ないですよ。根が優等生なんだから」拡大

期待のA6オールロードクワトロは……

渕野:こうして写真を並べてみると、最新のアウディって、サイドから見ると結構スッキリしているんですよね。気になるのはやっぱり顔ですよね。セダン系はまだ許せると思うけど、SUV系の顔がすごい。

ほった:エグさで勝負しようとしている。

渕野:シグネチャーランプを表現の主体にして、ヘッドランプを脇役にして隠すのは、最近のトレンドでどこもやってることです。なおかつ、アウディのSUV系モデルは、表情としてのランプの扱い方が統一されている。Q3も「Q5」も怒ったような顔です。この怒った顔がアウディらしいのか? という疑問を感じます。まだセダン系の方がいい。

ほった:その辺はセダン系も同じじゃないですかね、特に「A6」とか。

渕野:A6もA5も、デザインとしてはそこまで大きくは変わってないんです。私が期待しているのは、「A6オールロードクワトロ」ですね。A6に対して全幅が110mmぐらい広がっていて、めちゃくちゃフェンダーが出ている。これはカッコいいと思いますよ。

清水:Q9を見た後だと、全部カッコよく見えちゃうけど(笑)。

渕野:A6オールロードクワトロ、日本には入らないんですか?

ほった:悲しいかな、日本には来ないです。Q9も正直来ないんじゃないかと思いますけど。あまりにもデカすぎて。

清水:Q9は来なくていいよ(笑)!

(後編へ続く)

(語り:渕野健太郎、清水草一、webCG堀田剛資/まとめ=清水草一/写真=アウディ、newspress、webCG/編集=堀田剛資)

ミドルサイズSUVの「Q5」。アウディのSUV系のモデルは、いずれもグワッと開いたフロントグリルと細い釣り目のシグネチャーランプでコワモテに仕上げられている。
ミドルサイズSUVの「Q5」。アウディのSUV系のモデルは、いずれもグワッと開いたフロントグリルと細い釣り目のシグネチャーランプでコワモテに仕上げられている。拡大
シャクレあごの巨大なフロントグリルが目を引く「A6」。実車を見ると、そこまでおどろおどろしくはなかったが……。
シャクレあごの巨大なフロントグリルが目を引く「A6」。実車を見ると、そこまでおどろおどろしくはなかったが……。拡大
「A6アバント」をベースに、悪路走破性能を付与した「A6オールロードクワトロ」。1999年から設定のある定番の派生モデルだが……。
「A6アバント」をベースに、悪路走破性能を付与した「A6オールロードクワトロ」。1999年から設定のある定番の派生モデルだが……。拡大
ほった「アウディ ジャパンによると、先代同様、日本導入の予定はないそうです」 
渕野「そ、そうなんですね。カッコイイんだけどなぁ……」
ほった「アウディ ジャパンによると、先代同様、日本導入の予定はないそうです」 
	渕野「そ、そうなんですね。カッコイイんだけどなぁ……」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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