第44回:巨乳にも限度がある
2017.06.06 カーマニア人間国宝への道“行き止まり感”を覚えて
ということで、「458イタリア」から「328GTS」への乗り換えで、1220万円もゲットしてしまった不肖ワタクシである。
つまり、「プジョー308SW BlueHDi」どころか、「メルセデス・ベンツS300h」ですらキャッシュで買えるウルトラ大金持ちというわけだが、そういうお金って意外と使えないもんですね。ホントは自分で払ったお金が戻ってきただけなんだけど、神様からの贈り物にしか思えないのですよ! それを足グルマに流用していいもんだろうか?
それに、どんだけお金が戻ってきたっつっても、フェラーリを買ったことには違いない。つまり人生最大級のゼイタクをしたわけだ。人間、連続してゼイタクはできないです。バチが当たりそうで。
とにかく神様からの贈り物なので、神様に貢ぐのが一番ということで、納車されたらタイヤとかダンパー交換に使おうとは思ってますけど、それじゃどんだけゼイタクしても100万円くらいでしょうか? 本当にありがたいお話です。
ところで、なぜに458イタリアから328へ買い替えたのか、その理由を記さねばなるまい。
買い替えたくなったのは、単にココロの赴くままでありまして、漠然としているのですが、自己分析すると、“行き止まり感”ということになりましょう。
もう速さには何のロマンもない!
あまりにもすばらしすぎる458イタリアでございましたが、唯一にして最大の欠点は、速すぎることだった。
当初はその速さ、特にEデフによる異次元のコーナリングに震撼(しんかん)し陶酔したが、それを味わうためには、とてつもないコーナリング速度が必要になる。
458を買ったばかりの頃、スーパーカー乗りのパイロット軍団とツーリングに出掛け、箱根のワインディングで皆さまに助手席に乗っていただいたことがあるのですが、3名さまとも最初のコーナーで絶叫し、「死んだと思いました」とのたまった。
追い風なら対地速度時速1000kmを超える乗り物を操縦し、横風の中巨大な機体を時速240kmで着陸させるパイロット様たちが、そろって絶叫するコーナリング速度。そんなもんをそこらで気軽に発揮できるはずがなかろう!
しかも458イタリアは、フツーに走るとカイテキすぎてほとんど刺激がない。まさに宝の持ち腐れ。女優に着ぐるみを着せているような罪悪感!
クルマの性能向上に合わせて、制限速度も上がっていくなら話は別ですが、それはないわけで、つまり家のサイズは同じなのに、身長が5mになっちゃったみたいなもんだ。最初は5mの高さから見下ろすのが楽しかったけど、だんだん疲れてきた。
トドメは、458イタリアの後継モデル「488GTB」だった。ターボ化によって快感は薄まったのに、さらにとんでもなく速くなっていた!
これはもうダメだ……。ついて行けない。というかつまらん! もはや速さには何のロマンもない! これじゃオッパイをどこまでも大きくしていくみたいなもんじゃないか!
魅力的な“Cカップ”が欲しい
もちろん大きいオッパイは、速いスーパーカーのようなもので欲望をそそりますが、大きさにも限度というものがある。現代のスーパーカーはその限度を超えた。少なくとも私の限界を超えた。もーいーです勘弁してください!!
で、Cカップくらいの魅力的なオッパイを求めて買い替えを敢行することにしたのですが、最初狙ったのは「F355スパイダー」(6段MT)でした。
ただ、F355スパイダーの場合、ボディーカラーはブルー系じゃないとイヤ! だって以前乗ってた茄子(なす)色のF355スパイダーがステキすぎたから! もう一度あれが欲しい! とゼイタクを言ったところ、コーナーストーンズのエノテンこと榎本社長に「がんばって探しますけど、2~3年かかるかもしれません」と言われました。
そーかぁ、2~3年かぁ、それもいいかな~とも思ったのですが、そんな時、たまたま整備工場で見かけた赤い328に心を射抜かれたのです。
そうだ! 私の初恋のフェラーリは赤い328だったじゃないか! 具体的にはCGTVのオープニング映像に出てくるロッソコルサの328GTBじゃないか!
そう思ってネット動画でCGTVのオープニング映像を見直したところ、昔とまったく同じようにウットリしました。
30年たってもウットリは変わらなかった! これはスゴイ! 初恋は永遠だった! いま私が買うべきは、ロッソコルサの328だ! そうだそうだそうなのだ! 赤い328なら紺のF355スパイダーよりぐんとタマ数も多いだろうし!
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな 2025.9.22 清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている?
-
第318回:種の多様性 2025.9.8 清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
NEW
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】
2025.10.11試乗記新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。 -
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか?
2025.10.10デイリーコラム満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。 -
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】
2025.10.10試乗記今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? -
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】
2025.10.9試乗記24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。