第647回:コンフォート性能を追求したブリヂストンのSUV用タイヤ「アレンザLX100」を試す
2021.04.21 エディターから一言 拡大 |
ブリヂストンが2021年2月1日に発売した「アレンザLX100」は、静粛性の向上や乗り心地の良さを追求したというSUV用のコンフォートタイヤ。オンロード向けに特化して開発されたその背景や、試走の第一印象をリポートする。
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オンロード性能にフォーカス
これまでブリヂストンのSUV用タイヤとして知られてきたのが、DUELER(デューラー)である。デューラーはSUV用のみにとどまらず、本格的な4WDオフローダー向けなどもカバーする幅広いラインナップ展開が自慢で、長年にわたりオンロード/オフロード用タイヤとしてブランドを確立させてきた。
いっぽう、同様にSUVをターゲットとしながらも、オンロードで優れた性能を発揮することに特化したのがALENZA(アレンザ)だ。ブランド名は、「向かう」という意味を持つラテン語の造語“AL”と、「エレガンス」という英語の造語“ENZA”を組み合わせたものだという。その第1弾は2016年12月に登場した「001」で、ドライ/ウエット性能に加え、低燃費性能やロングライフ性能にも重点を置いたプレミアムSUV用のハイパフォーマンスモデルという位置づけであった。
今回アレンザに追加されたLX100は、SUV向けのコンフォート性能に特化したモデル。前出001の登場からは4年という時間が経過しているが、このタイミングでのローンチの理由をブリヂストンの開発陣は「2016年以降、特に日本のオンロード特化型SUVモデルが多数発売され、それらがタイヤ交換の時期に差しかかってきたため」と説明している。さらに2024年には、交換用タイヤの需要が2019年の2倍以上に拡大することが見込まれているという。
今後、「オンロード系SUVタイヤのブランドを一手に担うことになる」というアレンザのバリエーション拡充は、まさにそうしたタイミングで敢行されたのである。
SUV向けに専用設計
ブリヂストンのコンフォート性能特化タイヤといえば、まず誰もが思い浮かべるのはREGNO(レグノ)であろう。実際、LX100にその知見、テクノロジーが数多く投入されていることは、面構え(トレッドパターン)がレグノに類似したものであることからも容易に想像できる。
摩耗が進行しても高周波ノイズの抑制を持続させる「シークレットグルーブ」や2本のストレートグルーブにまたがる消音器によって気柱共鳴音を低減させる「3Dノイズ抑制グルーブ」、トレッドの振動をサイド部に伝えにくくする「3Dノイズカットデザイン」などは、いずれもレグノで先行採用がうたわれてきた技術だ。
車両重量が比較的かさみ車高も高く、同時に運動性能に優れたシティー派SUVが多いことを踏まえ、ケース部材を2枚にしたうえでビードフィラー部のプライ折り返し部分を高めに設定。ケースの剛性アップを図るという、SUV専用設計が採用されている。
さらに、これまでデューラーのラインナップ内でコンフォート志向の強かった「H/L850」に対して、路面から内部のベルトまでの距離をより大きく確保することで入力の伝搬を低減。これは、乗り心地面の改良を狙ったLX100に独自の設計でもある。
スポーティーなモデルには001
東京・臨海エリアをベースとしたテストドライブでは、「アウディQ5」を用いて既存の001と新しいLX100というアレンザ同士での比較と、「トヨタ・ハリアー」を用いて前述のデューラーH/L850とLX100との比較を行った。ただし、いずれもごく短時間・短距離の“チョイ乗り”ドライブ。強いGを試せるような状況もなかったことを、あらかじめお断りしておきたい。
Q5で先に001を試した後、LX100に乗り換えると、やはり第一印象は「こちらのほうが静かだナ」というものだった。001とて特にうるさいというイメージはないが、それでも「コー」っという踏み込み音のボリュームは多少大きいし、30~40km/hでは軽いパターンノイズも認められる。それに比べると、LX100では「ノイズを包み込むオブラートの層を増やした感じ」である。ただし人によっては、それゆえに発生したノイズを無理やり抑え込んでいるという感想を抱く可能性もありそうだ。
路面凹凸を乗り越す際の“アタリ”も、やはりLX100のほうが多少マイルド。反対に、微舵操作に対する応答性は001が確実に上回っていた。コーナリングでは「LX100は応答遅れのぶんを切り足す結果、余計に切り過ぎる傾向にある」と、極端に表現すればそうした印象でもある。例えば「ポルシェ・マカン」などスポーティーなモデルには、001のほうがマッチングに優れるかもしれないと感じた。
見た目も都会派
デューラーとの比較では、数あるSUVのなかにあっても屈指の流麗なルックスを有するハリアーには、「ゴツさが皆無でより洗練されたデザインのLX100のほうが、マッチングや見栄えの点で確実に上をいく」と感じた。こちらも“極端に言えば”ではあるものの、ハリアーとデューラーの組み合わせには、まずは見た目において違和感を覚えるほどである。
走りはじめてもデューラーのほうは、どことなく“ゴロゴロザラザラ”という路面とのコンタクト感がつきまとう。スタート時の蹴り出し感も、こちらのほうがやや重々しい。これのみしか知らなければ恐らく何の不満も生じないだろう。が、両者を直接比べてしまうと少なくともハリアーには、「どうやってもLX100のほうがマッチングがいい」と誰もが納得するはずだ。
LX100自慢の静粛性の高さは、実は低速域ではさほど大きな差を感じなかった。しかし、60km/h付近から踏み込み音が急増するデューラーに対し、LX100でのノイズは漸増傾向にあるといえ、トリッキーなものではない。それゆえ、高速道路の長時間クルージングといったシーンでは、疲労感に差が出ることにもなりそうだ。
かくして、「なるほどプレミアムなSUVタイヤ」としてなかなかわかりやすいキャラクターであると思えるアレンザシリーズ。ブリヂストンのタイヤラインナップに、新たな柱ができそうだ。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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