「自動運転レベル4」解禁! それで何がどう変わる?
2023.03.27 デイリーコラム運転の主体がシステムに
2023年4月1日に改正道路交通法が施行され、自動運転レベル4の公道走行が解禁される。振り返れば、自動運転レベル3が解禁されたのは2020年4月1日のことだった。完全自動運転のレベル5が最終到達点だとすれば、法的には最終目的地のひとつ手前までたどり着くことになる。
自動運転の段階はレベル1からレベル5まである。レベル1は運転支援で、前後・左右いずれかの車両制御にかかわる運転操作の一部を実施する内容。レベル2は部分運転自動化で、システムが前後・左右両方の車両制御にかかわる運転操作の一部を実施する。前方を確認したうえで手放し運転を可能にする機能(日産の「プロパイロット2.0」など)はレベル2に該当する。
レベル2まではドライバーによる監視が必要だが、レベル3より上はシステムが運転を監視することになり、レベル3は「特定条件下における自動運転」に分類される。2021年3月5日に発売された「ホンダ・レジェンド」がこの機能を搭載。同年4月には「レクサスLS」のハイブリッド車と燃料電池車の「トヨタ・ミライ」に、限りなくレベル3に近いレベル2相当の機能「アドバンストドライブ」が設定された。特定の条件下で、ドライバー監視のもと、ハンズフリーでの移動が可能になる。
4月1日に解禁されるレベル4は「特定条件下における完全自動運転」だ。レベル3の場合はシステムが手に負えなくなった場合、ドライバーに運転の権限を委譲するが、レベル4はドライバーが関与する必要はなく、システムが安全に停止させる。レベル2までは運転主体がドライバー、レベル3はドライバーとシステムを行き来、レベル4より上は運転主体がシステムになる。
無人運転が可能になるのもレベル4の大きな特徴だ。法的には無人運転も可能。ただし、自動運転中のクルマに作動を監視する「特定自動運転主任者」を置く必要がある。この主任者は自動運転車に乗っている必要はなく、遠隔システムの監視でもオーケーだ。
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便利になるのは間違いない
レベル4の解禁は、2つの領域で利便性の向上が期待できる。ひとつはホンダ・レジェンドやレクサスLSなどで実用化しているレベル3・特定条件下における自動運転の進化だ。前述したように、レベル3ではシステムが手に負えない状況になると運転の権限をドライバーに委譲する。ドライバーとしては権限をシステムに委譲して気分が弛緩(しかん)しきっているところへ、急に「運転して」と振られても、そう簡単に意識が切り替わるわけではない。急な権限の委譲がかえってストレスになる場合もある。
ところが、レベル4になるとドライバーは運転操作から完全に解放されるので、高速走行時の移動ははるかにストレスが軽減されるはずだ。長時間の高速移動ではシステム任せ(レベル2のアダプティブクルーズコントロール+ステアリング制御)にすることが多い筆者にとっては、歓迎すべき進化の方向だ。同じように感じるユーザーも多いと思う。
もうひとつ、利便性向上が期待できるのは、移動サービスの領域だ。レベル4の解禁により、特定の地域で遠隔監視付きの無人バスを運行することが可能になる。公共交通サービスが整備されていなかったり、自家用の移動手段を持たない交通弱者が多かったりする地域での便利な移動手段になり得るわけだ。
東京の湾岸エリアを運行する新交通ゆりかもめはレール上を無人自動運転で走る。特定地域での無人自動運転サービスはその路上版ということになる。容易に想像できるように、レールの上を走るのに比べ、道路上を安全に運行するハードルははるかに高い。周囲を認識するセンサーと、センサーから得られた膨大な情報を短時間に高精度で処理する能力が求められ、システムのコストは高くなりがちだ。
システムのコストが高くなれば、サービスのコストも高くなる。それより前に、リアルワールドで安全に走行できる技術を確立することが先決。レベル4が解禁になったからといってすぐに実用的なサービスが利用できるわけではなく、まずは実証試験からのスタートになるだろう。
それでも、移動のストレスが軽減され、不便が解消し、生活がより豊かになる世界への扉が開くことに変わりはない。レベル4解禁後の動向に注目だ。
(文=世良耕太/写真=トヨタ自動車、本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)
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世良 耕太
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