レクサスLBX“クール”(FF/CVT)/LBX“リラックス”(4WD/CVT)
うたい文句に偽りなし 2024.01.30 試乗記 レクサスのSUV製品群に、ニューフェイスの「LBX」が登場。サイズのヒエラルキーを超え、これまでの高級車の概念を変える“小さな高級車”をテーマに掲げて開発されたBセグメントのSUVは、そのコンセプトを期待以上に体現したモデルとなっていた。お値段には理由がある
小さな高級SUVであるLBXは、1.5リッターハイブリッドのパワートレインで、メイングレードの本体価格はFFで460万円、4WDで486万円(税込み)。そこに今回の試乗車のように、先進運転支援システム(ADAS)の拡張機能や「マークレビンソン」名義の上級オーディオ、定番の便利装備を追加すると、FFで520万円前後、4WDで560万円前後に落ち着く。
そんなLBXと同価格帯の輸入SUVには「アウディQ2」や「MINIクロスオーバー」がある。車体サイズはQ2とほぼ同等で、(従来型の)MINIクロスオーバーより100mm以上短いが、パワートレインが複雑なハイブリッドとなることや、インテリアに高級なセミアニリンレザーを多用することを考えると、LBXのほうがわずかに割安といえるだろう。
ただ、国産スモールSUVとしてはあからさまに高額でもある。車体サイズや「GA-B」という骨格設計を見ると“ヤリス クロスのレクサス版”ともいえる成り立ちのLBXだが、プラットフォームこそ共有しつつも、ブランドごとに凝った設計を取り入れるのは昨今のトヨタ系ニューモデルに見られる特徴である。
実際、LBXも車体やフロアの各部が強化されるほか、ドライビングポジションも是正されている。着座位置を下げると同時に、ステアリングやペダル角度も最適化してアクセルペダルはオルガン式に変更された。さらには、3気筒エンジンにはバランスシャフトを追加。フロントストラットアッパーは先日公開された改良型「GRヤリス」同様の入力分離型3本ボルト締結に変更。ホイールハブはレクサスお約束のスタッドボルト締結型となっている。そしてフロントキャスタートレールの増大に、新開発のフロントロアアームとアルミナックル、オンデマンド加圧型ブレーキシステムの採用……などなど、基本ハードウエアの改変だけでも、これだけ手の込んだ内容であることを考えると、クルマ好きならある程度の高価格は受け入れられることだろう。
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細かなツッコミどころも
基本グレードには「クール」と「リラックス」の2種類があるが、あくまで内外装の雰囲気やインテリアトリムの肌ざわりの差異だけで、上下関係はない。LBXのインテリアはシート表皮やアームレスト、ダッシュボード、センターコンソールまでソフトパッドで覆われるが、それが“クール”ではスエード調(=東レの「ウルトラスエード」)がメインになるのに対して、“リラックス”ではシート表皮がセミアニリン本革で、ほかはスムーズな合成皮革となる。
ちなみに、さらに上級に位置づけられる「ビスポークビルド」は、その名のとおりホイールの種類やステアリングホイールも含めた内装色、シート素材、各部のステッチ、シートベルトの仕様などが細かくオーダーできるグレードだ。本体価格がほかより90万円高となるのは、このオーダーメイド代のほか、“クール”や“リラックス”ではオプションあつかいとなる「アドバンストドライブ」や「アドバンストパーク」といったADAS拡張機能、「おくだけ充電」などの細かな装備が、標準で搭載されるからでもある。
運転席は電動調整式だ。これも安価だがギクシャク感のある動作だったヤリス系のワンモーター式に対して、LBXのそれは上級のレクサスと同様、ごく滑らかに作動する。なるほどドラポジもちょっと低めなスポーツ風である。
リアシートは緊急用と割り切られた感が強い。ホイールベースはヤリス クロスより20mm長いが、その主たる理由は前輪の位置が大径18インチタイヤをおさめるために前方に移動しているからで、室内空間は広くなっていない……どころか、先述のドラポジ是正で前席が少し後退しているくらいで、後席の空間自体はヤリス クロスよりさらにタイトだ。まあ、デザインやコンセプト上、後席がせまいのはよしとしても、リアドアトリムがフロントとはちがって、安価で硬いプラ仕立てになるのは、500万円級のクルマとしてはちょっと残念かも。
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好印象だった静かさとコーナリング特性
そのほかにも、インテリアの細部(なかでもパワーウィンドウスイッチ周辺などは意外に目につく……というか、つい触ってしまいがち)が硬いプラになるのはちょっと気にならなくはない。しかし、シート表皮やステアリングホイール、スイッチ類などの主要なインターフェイス部品が、ことごとく上級のレクサス車と共有されることもあって、これまで“小さな高級車”を主張してきた国産車のなかでも、LBXは歴代でもっとも説得力のあるサンプルといえるだろう。
今回の取材で横浜周辺の市街地と都市高速を小一時間走らせても、そのLBXの印象は変わらなかった。ヤリス系の印象からすると、静粛性はあからさまに高い。サイズ的には1クラス上の「カローラ クロス」あたりと比較しても静かだ。ロードノイズも小さいのだが、とくにパワートレインの静かさは3気筒としてはかなり優秀と評するべきだろう。これは先述のバランスシャフトだけでなく、すき間なくシーリングされたエンジンフード、そしてマークレビンソンを選ぶと同時装着される「アクティブノイズコントロール」の効果もありそうだ。
トヨタブランドのGA-B車も総じて俊敏で快活な走りが身上だが、LBXはそれに輪をかけてステアリングが正確でリニアである。さらに、上下動がほどよく抑えられたフラットな乗り心地や、ベース車からの直進性の向上も明白だ。直進性といえば、LBXではフロントのキャスタートレールを増大させたのも技術的なひとつのキモとされるが、これは先述のように前輪を前方へ移動させつつ、ストラットアッパーの取り付け位置をそのままキープする(ストラットをやや寝かせる)ことで実現している。また、旋回中にステアリングを切り増したときの正確で強力な追従性も印象的で、これはストラットアッパー締結の3本ボルト化に加えて、新開発アルミナックル(タイヤ大径化によるバネ下重量の相殺が主目的)のタイロッド位置を高く設定して、ロールによるトー変化を抑制した結果だという。
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仕上がりは期待以上
トヨタ系のハイブリッドは反応がなまくら……という定説もすっかり“今は昔”だ。加速だけでなく減速側でも、右足の微妙な動きに合わせて忠実に反応してくれる調律は、その筋で定評のあったホンダと比べても今や遜色ない。専用のセッティングが施されたLBXでは、それがさらに煮詰まった感じすらある。また、GA-Bとしてはぜいたくなオンデマンド加圧式(他車はあらかじめ油圧をためておくタイプ)となったブレーキシステムもあって、ブレーキのタッチやリニア感も明確に進化している。
リアサスペンションはほかのGA-B車同様、FFがシンプルなトーションビーム、そこにモーターを抱える4WDがダブルウイッシュボーン形式の独立懸架となる。今回は両駆動方式を試乗できたが、重量やその前後配分、リアモーターの影響か、乗り心地、動力性能、静粛性、ステアリングの接地感……のすべてで、4WDのほうがわずかに味が落ちる印象だったのは事実。後席の空間はせまいが、シートの厚みや乗り心地が意外なほど快適なのもLBXの特色だが、それもFFのほうがより好印象だった。
それはもちろん微妙な差なのだが、LBXの4WDは最大トルク52N・mという控えめなリアモーターによる発進時スタック防止特化型(?)で、オンロード性能にはよくも悪くもほとんど影響しない。雪国といわれる地域に住む人か、冬季は毎週のように雪道・凍結路を走る人でないと、LBXで4WDを選ぶメリットはほぼない。
なんともマニア好みのクルマづくりをする昨今のトヨタ=レクサスらしく、LBXもその主張にたがわぬデキといっていい。すべてに調和のとれた乗り味に、客観的な文句もつけにくいが、では「レクサス味ってなに?」と質問されて、たとえばBMWやMINIほどの分かりやすさには欠けるのも否めない。高級車ブランドとしてはまだ若手のレクサスだけに、個人的には「キツネにつままれたような静かさ」とか「目地段差での乗り心地だけは絶品」、あるいは逆に「ゴリゴリに正確すぎるほどのステアリング」といった一点突破的なツボがほしい気がする。……なんてことをあえて書きたくなったのも、LBXが事前の期待以上に“小さな高級車”だったからでもある。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
レクサスLBX“クール”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1825×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:91PS(67kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:120N・m(12.2kgf・m)/3800-4800rpm
モーター最高出力:94PS(69kW)
モーター最大トルク:185N・m(18.9kgf・m)
システム最高出力:136PS(100kW)
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ヨコハマ・アドバンV61)
燃費:27.7km/リッター(WLTCモード)
価格:460万円/テスト車=517万9700円
オプション装備:Lexus Teammate Advanced Drive<渋滞時支援>+緊急時操舵支援<アクティブ操舵機能付き>+フロントクロストラフィックアラート[FCTA]+レーンチェンジアシスト[LCA]+ドライバーモニター連携(9万0200円)/Lexus Teammate Advanced Park<リモート機能付き>+パーキングサポートブレーキ<周辺静止物>[PKSB](4万8400円)/ドライブレコーダー<前後方>(4万2900円)/デジタルキー(3万3000円)/おくだけ充電(1万3200円)/カラーヘッドアップディスプレイ<連動ディスプレイスイッチ付き>(5万5000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム+アクティブノイズコントロール(25万1900円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W>(4万5100円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:630km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
レクサスLBX“リラックス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1825×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1400kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:91PS(67kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:120N・m(12.2kgf・m)/3800-4800rpm
フロントモーター最高出力:94PS(69kW)
フロントモーター最大トルク:185N・m(18.9kgf・m)
リアモーター最高出力:6PS(5kW)
リアモーター最大トルク:52N・m(5.3kgf・m)
システム最高出力:136PS(100kW)
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ヨコハマ・アドバンV61)
燃費:26.2km/リッター(WLTCモード)
価格:486万円/テスト車=560万4700円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックカッパー>(16万5000円)/Lexus Teammate Advanced Drive<渋滞時支援>+緊急時操舵支援<アクティブ操舵機能付き>+フロントクロストラフィックアラート[FCTA]+レーンチェンジアシスト[LCA]+ドライバーモニター連携(9万0200円)/Lexus Teammate Advanced Park<リモート機能付き>+パーキングサポートブレーキ<周辺静止物>[PKSB](4万8400円)/ドライブレコーダー<前後方>(4万2900円)/デジタルキー(3万3000円)/おくだけ充電(1万3200円)/カラーヘッドアップディスプレイ<連動ディスプレイスイッチ付き>(5万5000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム+アクティブノイズコントロール(25万1900円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W>(4万5100円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:729km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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