トヨタ・ランドクルーザー“250”ZX(4WD/8AT)
“兄貴”よりイイかも 2024.09.14 試乗記 トヨタが誇るクロスカントリーモデル「ランドクルーザー」シリーズのなかでも、新たな中核モデルに位置する「ランドクルーザー“250”」。「原点回帰」を掲げてつくり込まれた新顔は、どのような一台に仕上がっているのか? 最上級グレード「ZX」で確かめた。同じプラットフォームではあるけれど
ランドクルーザー“250”は、3車種で構成される現行ランドクルーザー(以下、ランクル)シリーズのなかでも、真ん中に位置づけられるモデルだ。このポジションのランクルには、従来「プラド」という専用サブネームが与えられていたが、今回は34年5世代ぶりにその名を捨てた(海外では残されているマーケットもあるが)。
理由のひとつは、この250がランクルの現フラッグシップである“300(国内商品名は単純に「ランドクルーザー」)”とプラットフォームを共有しているからだろう。先代プラドまでは頂点のランクルとは別系統のプラットフォームだったが、新しい250は300と共通の「GA-F」プラットフォームを土台とする。
しかも、250は車体サイズも300にごく近い。2850mmというホイールベースは250と300で共通。1980mmの全幅や1925~1935mmの全高もほぼ同等。さすがに全長は250のほうが短いが、それでも、その差は25~60mmにすぎない。また、現在の300は国内受注停止中だが、販売当時の価格帯は510万円~800万円で、これもまた250のそれ=520万円~735万円とオーバーラップしてしまっている。
とはいえ、2台を見比べれば、250が300より1クラス下の商品としてつくられているのは明らかだ。搭載エンジンがガソリンとディーゼルの2本立てなのは両ランクルで共通だが、300が3.4リッター(ガソリン)と3.3リッター(ディーゼル)のV6ツインターボなのに対して、250は2.7リッター(ガソリン)と2.8リッター(ディーゼル)の直列4気筒で、ガソリンは自然吸気である。
変速機も300の10段ATに対して、250のそれは、ディーゼルではギアが2つ少ない8段AT、そしてガソリンは6段ATとなっている。そのココロは、開発担当氏によると「250のスペックを考えると、10段は過剰で逆に非効率的と判断した」そうだが、それ以外にもコストやスペースなどの現実的な都合もあったようだ。ランクルのような縦置きパワートレインでは、前後方向に関しては300のV6より250の直4のほうがかさばるので、物理的にコンパクトな8段が選ばれたという側面があるらしい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
端々に感じる設計年次の新しさ
また250では、固定減衰ダンパーや電動パワーステアリングなど、いくつかのメカニズムが300より簡素化される。そのいっぽうで、先進運転支援システム(ADAS)については250のほうが充実しているのは、約2年という設計年次の新しさもある。具体的には、渋滞時にハンズフリー運転も可能な「アドバンストドライブ」や、前方の交通状況を検知して自動的に緩やかなブレーキ操作や警告をしてくれる「プロアクティブドライビングアシスト」は、現時点では250だけの特権だ。
今回の試乗車は、250では最上級となるディーゼルエンジン搭載のZXだったが、タイヤが18インチ(標準は20インチ)だったのは興味深い。これは13万7500円安となるレスオプションで、タイヤ幅はそのままにハイトがより高いサイズとなるほか、銘柄も20インチのサマータイヤからオールテレインに変わる。
250のインテリアデザインは300より明らかにカジュアルになっているが、ソフトパッドの面積など細部の質感表現は300と大きな差はない。また、いかにも見切りがいいダブルバブル形状のフロントフードや、大型ディスプレイを標準装備としつつも、ダッシュボードの水平線がきっちりと視認できる視界性能など、ランクルのお約束もハズしていない。
ローレンジ付きのフルタイム4WDに加えて、ドライブモードや「マルチテレインセレクト(MTS)」、フロントスタビライザーを任意で解除できる「スタビライザー with ディスコネクション メカニズム(SDM)」などなど、250は走りの制御メカも300と大差ない豊富さである。しかし、それらのスイッチ配列は300よりこなれていて、より直感的に操作できるようになったのも、設計年次が新しいゆえのメリットだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
よりモダンで軽快なドライブフィール
250の乗り味は、とにかく鼻先が軽くて軽快だ。車重2.4tものクルマでなにが軽快だよ……とのツッコミはもっともだが、300と比較すると、そう形容せざるをえない。なにせ基本骨格や車体サイズが同等の300より、250は約200kgも軽いのだ。しかも、その主因はエンジンや変速機、あるいはショート化されたフロントオーバーハングなので、重量減のほぼすべてが前軸付近に集中している。
山田弘樹さんがリポートしておられたオフロード試乗会(その1、その2)には、筆者も参加していた。極限的な走破性能では300が250をわずかに上回るそうだが、とくにオフロードでの250の軽快さは如実で、オフロード素人の筆者がより安心して振り回せたのは250だった。
そんな鼻先の軽さは今回のような一般道でも明白だ。250には300のような可変ダンパーも備わらず、同「GRスポーツ」の「E-KDSS」も備わらないが、直進性や耐わだち性、あるいは接地感で、300に大きくは引けを取らない。別の機会に20インチを履いた250も試すことができたが、いずれにしても、車体各部がミシリともいわず、タイヤが先走るようなクセがまるで感じられないのは、ラダーフレームにリアリジッドアクスルという古典的構造を考えれば素直にたいしたものだ。
今回のような舗装路でも、可変ダンパーやE-KDSSなどを備える300のほうが、有利のはずである。E-KDSSは高速走行でも直進時にフロントスタビライザーを自動キャンセルしてサスペンションのストロークを助けるが、250のSDMは操作が手動で、しかもスタビのキャンセルは車速30km/h以下の場合にかぎられる。
それでも、250の乗り心地や安定性が300に肉薄しているのは、新しいぶん基本骨格がより煮詰められているほかに、250のほうがより細いタイヤを履いており、300では油圧メインだったパワステが完全電動化されたことが大きいと思われる。300のパワステは極限状態での信頼性を理由に油圧を残すが、一貫したステアリングフィールや滑らかな手応え、繊細な接地感では、今や電動パワステのほうが上回っているのは否定できない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
こだわりのカジュアルスタイル
既存の「1GD-FTV」の最新バージョンとなる2.8リッターディーゼルターボエンジンは、絶対的な動力性能こそ控えめでも、足指レベルの微妙なアクセルワークにもきっちりと応える柔軟性が素晴らしい。さすがランクルは、こういうところにも妥協しない。300より2段少ないATも、現実的には100km/hまでの速度域なら8速はまったく使わないほどだから、「250に10段は不要」という戦術の開発担当氏の言葉にウソはないと思った。
また、ランクルのようなクルマはどうしても慣性重量も大きくなってしまうものの、渋滞を含む全車速対応アダプティブクルーズコントロールや、渋滞時のハンズフリー運転なども、じつにソツなくこなすADAS技術は、率直に高度といっていい。高速クルージングなどでも、車線保持のステアリングアシストの介入がほとんど気にならないのは、クルマ自体の直進性が高いからだろう。
このように250のデザインや技術内容には新しいゆえの利点もあるが、「300のディチューン版!?」との指摘も、ある意味で正しい。重厚感やパワー感、静粛性、そして室内調度の豪華さ……においては、ヒエラルキーどおりに300にゆずる。ただ、いっぽうで軽快さやモダンさ、そしてデザインや乗り味に通底するカジュアル感など、250ならではのキャラ設定ができているのも印象的だった。まったくもって個人的嗜好でいえば、より気安く振り回せる250のほうに共感をおぼえた。このあたりのあんばいは秀逸で、やはりトヨタ車のなかでも、少なくともランクルだけは、そこいらのクルマオタクより、つくり手のほうがはるかに頑固でこだわりが強い。
ただ、2022年夏に受注停止したままの300の価格と比較すると、昨今の資材高騰の真っただ中で企画開発された250が、どうしても割高に感じられるのは否定できない。もっとも、300が受注再開されるあかつきには、マイナーチェンジなどを絡めた値上げをおこない、250とのヒエラルキー関係もしっかり再構築されることだろう。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・ランドクルーザー“250”ZX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4925×1980×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2390kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:204PS(150kW)/3000-3400rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1600-2800rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:11.0km/リッター(WLTCモード)
価格:735万円/テスト車=725万6500円
オプション装備:265/65R18タイヤ&18×7 1/2アルミホイール<マットグレー/センターオーナメント付き>(-13万7500円)/ルーフレールレス(-1万9800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ロイヤル>(6万3800円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1497km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:304.8km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:10.5km/リッター(車載燃費計計測値)
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆トヨタが新型SUV「ランドクルーザー“250”シリーズ」を発売
◆トヨタ・ランドクルーザー“250”プロトタイプ【試乗記】
◆“300”とはここが違う! 「トヨタ・ランドクルーザー“250”」はどんな人にオススメか?

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
ケータハム・スーパーセブン2000(FR/5MT)【試乗記】 2026.4.28 往年のスポーツカーの姿を今日に受け継ぐケータハム。そのラインナップのなかでも、スパルタンな走りとクラシックな趣を同時に楽しめるのが「スーパーセブン2000」だ。ほかでは味わえない、このクルマならではの体験と走りの楽しさを報告する。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.27 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。
-
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)【試乗記】 2026.4.25 世界的に好調な販売を記録している、昨今のアルファ・ロメオ。その人気をけん引しているのが、コンパクトSUV「ジュニア」だ。箱根のワインディングロードでの試乗を通し、その魅力をあらためて確かめた。これが新時代のアルファの生きる道だ。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS プロトタイプ(FF)【試乗記】 2026.4.23 一部情報が先行公開され、正式な発表・発売を2026年6月に控えた「ホンダ・シビックe:HEV RS」のプロトタイプにクローズドコースで試乗。2ドアクーペ「プレリュード」と同じ制御技術「ホンダS+シフト」が移植された、新たな2ペダルハイブリッドスポーツの走りやいかに。
-
日産アリアB9 e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.4.22 「日産アリア」のマイナーチェンジモデルが登場。ご覧のとおりフロントマスクが変わったほか、インフォテインメントシステムも刷新。さらに駆動用電池の温度管理システムが強化されるなど、見どころは盛りだくさんだ。400km余りをドライブした印象を報告する。
-
NEW
第959回:「うすらデカいフィアット」がもたらしてくれたもの
2026.4.30マッキナ あらモーダ!11年にわたりモデルライフを重ねてきた、フィアットのCセグメント車「ティーポ」が、ついに生産終了に……。知る人ぞ知る一台の終売の報を受け、イタリア在住の大矢アキオが、“ちょっと大きなフィアット”の歴史を振り返り、かつての愛車の思い出を語る。 -
NEW
BMWの新世代BEV「i3」の姿からエンジン搭載の次期「3シリーズ」を予想する
2026.4.30デイリーコラム「iX3」に続き、完全な電気自動車として登場した新型「i3」。BMWはノイエクラッセをプロジェクトの御旗に電動化を推進しているが、同社の伝統たる内燃機関搭載車「3シリーズ」のゆくえやいかに。 i3の成り立ちからその姿を予想する。 -
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.29試乗記「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。 -
第110回:新型BMW i3(前編) ―BEV版「3シリーズ」のデザインはなぜ「ノイエクラッセ」から変節したのか?―
2026.4.29カーデザイン曼荼羅いよいよ登場した新型「BMW i3」。スポーツセダンのベンチマーク「3シリーズ」がついに電気自動車となったわけだが、そのデザインにはどんな見どころがあるのか? ショーカー「ビジョン ノイエクラッセ」から様変わりした理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか?
2026.4.29デイリーコラムホンダが北米生産の「アキュラ・インテグラ タイプS」の国内導入を発表した。エンジンなどのスペックから、それが「シビック タイプR」にほど近いクルマであることがうかがえる。果たしてタイプSは入手困難なタイプRの代替になるのだろうか。 -
クルマの開発で「コストをかけるところ」と「割り切るところ」はどのように決まるのか?
2026.4.28あの多田哲哉のクルマQ&A車両開発において、予算配分は「顧客に最も満足してもらえるクルマ」をつくるための最重要事項である。では、それはメーカー内で、どんなプロセスで決まるのか? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。











































![トヨタの最新モデルだけに運転支援システムは充実。「ZX」には、高速道路・自動車専用道路において渋滞時のハンズフリー走行を可能とする「トヨタチームメイト[アドバンストドライブ(渋滞時支援)]」も標準で装備される。](http://webcg.ismcdn.jp/mwimgs/f/e/200/img_fefc36c5c326d88ac2a5060e408c034f166491.jpg)
















