ケータハム・スーパーセブン600(FR/5MT)
進化するシーラカンス 2025.04.12 試乗記 今もなお、1950年代にルーツを持つプリミティブなスポーツカーをつくり続けるケータハム。そんな彼らの最新モデルが「スーパーセブン600」だ。このクルマの確かな進化からは、クラシックな英国のスポーツカーメーカーに起きている、好ましい変革が感じられた。いつの間にやら日本資本に
2021年に日本のVTホールディングスが経営権を取得したケータハム(参照)は、その後、本社工場を移転し(参照)、電動スポーツクーペのプロジェクトも発表(参照)。積極的な動きをみせていて、着実に改革が進んでいることを実感する。2024年に追加された「スーパーセブン600/2000」も、そんな流れのなかで生まれたモデルといえるだろう。
そもそもセブンは、ロータスが1950年代に開発した、そのままでアマチュアレースを戦えるプリミティブなスポーツカーがルーツである。そのころからスーパーセブンという車名はあったが、それはセブンの高性能モデルのことだった。その後、1970年代にケータハムがこのクルマの製造・販売の権利を引き継ぎ、現在に至るわけだが、僕が1990年前後に趣味的なクルマを扱う雑誌の編集部員として接していたときは、すべての車種がスーパーセブンと名乗っていた記憶がある。近年のケータハムが、この名前を「クラシカルなセブン」という位置づけにしているのは、そのころを知るエンスージアストに対するメッセージという意味もあるだろう。
車名の数字は、“スーパー”が付かない「セブン170/340」が車重1tあたりの最高出力を示しているのに対し、こちらはおおよその排気量を示していて、600=0.66リッター=170、2000=2リッター=340になる。確かに1990年前後の車種も、「1700スーパースプリント」など排気量をそのまま数字にした車名を冠していたので、ネーミングでもあのころの雰囲気を出そうとしているのではないだろうか。
今回乗ったのは軽自動車登録のスーパーセブン600だ。イエローナンバーのケータハムは、デビュー直後に「セブン160」に何度か乗ったことがあるが、VTホールディングス傘下になった2021年にセブン170に切り替わってからは初めてだ。
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見ても乗っても感じられるクルマの進化
エクステリアはやはり、クラムシェル型のフェンダーと、格子のフロントグリルの組み合わせが目立つ。僕が取材でひんぱんにセブンに接していたころは、この外観がスタンダードだったので、ちょっと懐かしい気分になった。後ろ姿もあのころと同じで、スペアタイヤを背負い、給油口はクラシックスタイルとしてある。軽さにこだわるなら、スペアタイヤは降ろしたほうがいい。でも昔を知るひとりとしては、このビジュアルは大事だと思う。
取材日は霧雨模様。ソフトトップを開けたのは撮影のときだけで、試乗はすべてクローズで行った。ホロを閉じたセブンの乗り降りが大変なことは、これまでの試乗記でも語られてきたとおり。ただ僕は何度か体験していたこともあり、よわいを重ねて節々が固くなった身であっても、なんとかアクセスできた。
車内は2人の大人にとって最小限の空間であり、足もとは細身のシューズでないと3枚のペダルを踏み分けられないほどに狭いが、仕立てはモーガンを思わせるほど上質だ。そこにモトリタのステアリング、クロームメッキ仕上げのシフトレバーやパーキングブレーキレバーが、クラシカルな装いを加えている。
ソフトトップは密閉性が上がっていて、雨粒が滴り落ちてくるようなことはなかったし、サイドスクリーンは下端がロックを兼ねたアームレストになっているなど、至る所できめ細かいつくり込みの進化を実感できた。
スズキ製658cc直列3気筒ターボエンジンは、セブン170と共通で、最高出力は85ps/6500rpm、最大トルクは116N・m/4000-4500rpmとなる。エンジン型式名は「R06A」型で、以前のセブン160が積んでいた「K6A」型より、ひと世代新しい。ジムニーでいえば、現行型の登場とともに搭載されたユニットだ。
エンジンの違いは、走りはじめてすぐに実感した。記憶のなかにあるセブン160より、滑らかかつ静かになったうえに、ターボの段つきも控えめになっていた。ロングストローク化の効果が実感できる。最大トルクの発生回転数から想像するより、はるかにフレキシブルなキャラクターだ。車両重量が440kgにすぎないので、アクセルペダルを大きく踏み込めば、排気量を忘れるようなダッシュを体感できる。その点を優先するならスーパーセブン2000のほうがよさそうだが、雨模様だったので手の内に収まる速さが好ましかった。
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クルマからも感じられる改革の成果
5段MTのシフトレバーは、相変わらずストロークが最小限で、手首のスナップだけで変速できる。コクッコクッというタッチも小気味よい。インパネに並んだスイッチも手から近いので、ウインカーを戻すことを忘れなければ、操作性に問題はなかった。
乗り心地も快適になった。スーパーセブン600はセブン170同様、リアサスペンションはリジッドアクスルだが、「つらい」という言葉とは無縁。相応の時間をここで過ごすことができそうという気持ちを抱いたほどだ。
助手席側のサイドミラーはちょっと見えづらいけれど、ソフトトップを閉めていても斜め後方の視界は良好だし、自分のすぐ後ろが車体後端なので問題ない。オートライトが付いていて驚いたが、時代に合わせた進化をしている証拠だろう。
それでいて操縦感覚はセブンそのもの。ステアリングは重くはないものの、パワーアシスト付きでは得られない手応えがあり、コーナーの出口では意識的に戻していくなど、独自の流儀がある。路面に近い場所でそれを扱い、長いノーズをコーナーに導き、出口が見えたところで右足に力を込め、後輪の挙動をお尻で感じながら脱出していく体験は、セブン一族ならではのものだ。
なのでスーパーセブン600のアピールポイントは、やはりビジュアルになる。ベースとなったセブン170が、ロータス・セブンの「シリーズ1」あたりを想起させるのに対して、こちらの姿を見て連想するのはやはり、日本での注目度が一気に上がった1980~1990年代のケータハム・スーパーセブンだ。上質になった仕立ては、あのころは子育てなどでこのクルマを買えなかった人が、自由な時間を得て、趣味の時間を満喫するのにふさわしい仕様に思える。
やはりこれは、ジャパンプロデュースがいい方向で形になったモデルといえる。これからも「VT改革」がケータハム・セブンをどう進化させていくか、楽しみになってきた。
(文=森口将之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ケータハムカーズ・ジャパン)
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テスト車のデータ
ケータハム・スーパーセブン600
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3380×1470×1090mm
ホイールベース:2225mm
車重:440kg(乾燥重量)
駆動方式:FR
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:85PS(62.6kW)/6500rpm
最大トルク:116N・m(11.8kgf・m)/4000-4500rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75T/(後)155/65R14 75T(エイヴォンZT7)
燃費:--km/リッター
価格:866万8000円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1096km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(10)/高速道路(0)/山岳路(0)
テスト距離:86.2km
使用燃料:5.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.9km/リッター(満タン法)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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