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マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか?

2025.10.15 デイリーコラム 世良 耕太
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システムの多様化で線引きがあいまいに

エンジンとモーターの2つの動力源を組み合わせたハイブリッドシステムが多様化している。モーターの役割が弱いほうがマイルドハイブリッド、強いほうがストロングハイブリッドと分類するのが一般的だが、線引きの境界はあいまい。AIに聞いてみると、ストロングハイブリッドは高出力モーターと大容量バッテリーを備え、EV走行(モーターのみでの走行)が可能。一方、マイルドハイブリッドは低出力のモーターで発進時や加速時にエンジンをアシストする程度にとどまり、EV走行はできない、と回答してきた。

ところが、メーカー自らマイルドハイブリッドを標榜(ひょうぼう)しながら、EV走行ができるシステムもあり、ストロングハイブリッドでありながら、モーターの出力が小さいシステムもある。高出力と低出力の線引きはどこ? マイルドだけどストロングなシステムもあり、ストロングだがマイルドともいえるシステムも存在する。

感覚論になるが、筆者はEV走行がある程度できて、「EV走行している」実感が味わえればストロングハイブリッド、できなければマイルドハイブリッド。また、電源電圧が48Vまではマイルドハイブリッド、400V、800V、あるいは200Vクラスの高電圧の場合はストロングハイブリッドと捉えている。

スバルの「クロストレック」には2024年末にストロングハイブリッドの「S:HEV」が追加設定された。既存のマイルドハイブリッドモデルも併売されるため、両方が選べる珍しいモデル体系だ。
スバルの「クロストレック」には2024年末にストロングハイブリッドの「S:HEV」が追加設定された。既存のマイルドハイブリッドモデルも併売されるため、両方が選べる珍しいモデル体系だ。拡大
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DCTを使うステランティスの最新ハイブリッド

最近増えているのは、欧州ブランド系の、EV走行ができる48Vマイルドハイブリッドだ。「プジョー3008」「アルファ・ロメオ・ジュニア」「シトロエンC4」に設定されるシステムは最新事例のひとつで、エンジンは1.2リッター直列3気筒直噴ターボ。これを横置きに搭載し、6段DCTを組み合わせる。

マイルドハイブリッドといえば、オルタネーターをベルト駆動のスタータージェネレーター(BSG)に置き換えるシステムが多かったが、ステランティスのシステムはBSGに加え、6段DCTの内部に最高出力16kW(22PS)、最大トルク50N・mのモーターを内蔵する。BSGは主にエンジン再始動、DCT内蔵モーターは主にアシストの使い分けだ。正極材にニッケル、マンガン、コバルトを使用する三元系(NMC)リチウムイオンバッテリーの容量は約0.9kWhあり、ストロングハイブリッド顔負けである。

走らせてみると、EV走行はするものの、アクセルペダルを少し強めに踏むと(ドライバーの要求駆動力がモーターの能力を上回り)エンジンが始動する。そのため、「モーターの動力だけで電気自動車のように静かに、スムーズに走る」感覚は薄い。渋滞時、歩くような速度でゴー&ストップを繰り返すシーンではEV走行に終始し、このシチュエーションに限ってはハイブリッドらしさを感じる。ごく微低速に限ってモーターの存在を感じるのは、ブランドを問わず48Vマイルドハイブリッドに共通する印象だ。

ステランティスのマイルドハイブリッドは1.2リッター3気筒ターボエンジンにモーター内蔵のデュアルクラッチ式ATを組み合わせる。写真は2025年10月に国内導入が発表されたばかりの新型「シトロエンC3ハイブリッド」。
ステランティスのマイルドハイブリッドは1.2リッター3気筒ターボエンジンにモーター内蔵のデュアルクラッチ式ATを組み合わせる。写真は2025年10月に国内導入が発表されたばかりの新型「シトロエンC3ハイブリッド」。拡大

大がかりなシステムの「アウディMHEVプラス」

アウディが2025年に国内導入した新型「A5」にも、ディーゼルの「2.0TDI」と高性能版の「S5」に「MHEVプラス」と呼ぶ48Vマイルドハイブリッドが適用された。MHEVプラスは縦置きに搭載する7段DCTの後端に「パワートレインジェネレーター(PTG)」と呼ぶモータージェネレーターユニットを付け加えた格好。ギアトレインでトランスミッションの出力軸とつながっており、ドッグクラッチで動力伝達系から完全に切り離すことができる。

ラゲッジルーム下に搭載するリチウムイオンバッテリーは三元系ではなく、正極材にリン酸鉄リチウム(LFP)を使用し、容量は約1.7kWhもある。BSGを併用するのはステランティス系マイルドハイブリッドと同様。PTGは力行(アシスト)側で最大18kW(24PS)、回生(発電)側で最大25kW(34PS)を発生する。システムの機能的には、低車速時にEV走行を行い、140km/hまではエンジンの出力をアシスト。85km/h以上で定常走行する際はドッグクラッチを切り、PTGの引きずりによる損失の低減を図る。

EV走行はノロノロ走行時に限られるし、Dレンジ選択時のアシストはアクセルペダル開度が約80%以上、もしくはキックダウン時に限られるなど、モーターの出番は意外と少なく、ステランティスのマイルドハイブリッドと同様、大仰なシステムを積んでいる割に存在感は希薄だ。

アウディの「MHEVプラス」は「A5」のほか新型「Q5」にも採用。7段DCTとはドッグクラッチを介してつながっており、ある一定以上の速度では切り離されて引きずりによる損失低減を図る。
アウディの「MHEVプラス」は「A5」のほか新型「Q5」にも採用。7段DCTとはドッグクラッチを介してつながっており、ある一定以上の速度では切り離されて引きずりによる損失低減を図る。拡大

公式発表よりもEV走行領域が広いルノー

一方、モーターの出力は小さいのに強い存在感があるのは、「フルハイブリッドE-TECH」と呼ぶルノーのストロングハイブリッドシステムだ(「アルカナ」「キャプチャー」「ルーテシア」に設定)。このシステムは1.6リッター直列4気筒自然吸気エンジンに4段、メインモーターに位置づけるEモーターに2段のギアをあてがい、変速はドッグクラッチで行う。変速時の回転合わせと発電用に「ハイボルテージスタータージェネレーター(HSG)」と呼ぶモーターを備える2モーター方式だ。三元系リチウムイオンバッテリーの電圧は250V、容量は1.2kWhである。

発進は常にEV走行。70~75km/hでエンジンが始動するというのがルノー側の説明だが、発進から100km/hまでずっとEV走行だったという経験を、複数回の試乗で何度も経験した。Eモーターの最高出力は36kW(49PS)、最大トルクは205N・mで数字は小さいが存在感は抜群。アクセルペダルを踏み増した際にシートに背中を押しつけるような加速感を覚えるほどモーターの主張は強い。

繰り返しになるが、モーターの存在感が強いモーターリッチな走りを提供してくれるシステムをストロングハイブリッド、EV走行はするけれども、エンジンリッチ(別の言い方をすればモーターリーン)なシステムをマイルドハイブリッドと呼びたい。モーターリッチかエンジンリッチかは電源電圧と連動する傾向で、EV走行ができたとしても、大容量のバッテリーを積んでいたとしても、48Vまではエンジンリッチなのが実情。あくまでマイルドハイブリッドである。

(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=スバル、ステランティス ジャパン、アウディジャパン、ルノー・ジャポン/編集=藤沢 勝)

ルノーの「ルーテシア」「アルカナ」「キャプチャー」はエンジンに4段、メインモーターに2段の変速機構を設けた独自のハイブリッドを搭載。国内初導入時は「E-TECHハイブリッド」だったが、その後「E-TECHフルハイブリッド」になり、最新モデルでは「フルハイブリッドE-TECH」と、微妙に呼称が変化している。
ルノーの「ルーテシア」「アルカナ」「キャプチャー」はエンジンに4段、メインモーターに2段の変速機構を設けた独自のハイブリッドを搭載。国内初導入時は「E-TECHハイブリッド」だったが、その後「E-TECHフルハイブリッド」になり、最新モデルでは「フルハイブリッドE-TECH」と、微妙に呼称が変化している。拡大
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