BMW iX M70 xDrive(4WD)
あのころの未来 2026.03.23 試乗記 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車(BEV)「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。BMWが擁する技術のショーケース
BMWは幅広くBEVのラインアップをそろえており、その多くが、プラグインハイブリッド車(PHEV)を含むエンジン搭載車とプラットフォームを共有する。しかし、そのなかでもSUV系の最上位車種にあたるiXだけは、専用プラットフォームを採用する特別な存在だ。
そもそもは「iNEXT」という、ゼロエミッション化やAD/ADAS(自動運転/先進運転支援システム)の高度化、ネットワーク化などの将来を見据えたプロジェクトがあり、それを具現したのが2018年に公開されたコンセプトカー「ビジョンiNEXT」だった。これが2021年には、iXという車名で市販化される(参照)。当時の革新技術が先行して盛り込まれており、それを他のモデルへ波及させていく役割を担っていた。要はiXは、技術領域におけるBMWのショーケース的なモデルでもあったのだ。
2025年9月には、一部改良を受けた最新のiXが日本に導入される(参照)。デザインはさらに洗練され、ラインナップは「iX xDrive60」と「iX M70 xDrive」の2種類に。前者は、BMWのBEVでは最長となる723kmの一充電走行距離を実現。いっぽう後者は、システムトータルの最大トルクが1015N・m(ローンチコントロール作動時は1100N・m)とBMW最強のスペックを誇り、0-100km/h加速3.8秒を実現する「Mパフォーマンスモデル」となっている。
今回試乗したのは、そのiX M70 xDriveだ。従来モデルの「M60」と比較すると、前後モーターの最高出力はそのままに、システムトータルでの最高出力が619PS(455kW)から659PS(485kW)に引き上げられている。
また標準モデルのiX xDrive60と比べると、そちらのフロントモーターが最高出力258PS(190kW)、リアモーターが同313PS(230kW)を発生するのに対し、iX M70 xDriveはフロントが同一でリアモーターが489PS(360kW)と、リアの駆動力を重視したスペックなのがわかる。
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洗練された乗り心地とドライバビリティー
初期モデルに試乗したときは、圧倒的な静粛性の高さに衝撃を受けたが、4年たった今でも、それが世界トップクラスなのは疑いようもない。275/40R22という大径で太いタイヤを履くが、ロードノイズは極めて小さく、風切り音も最小。外界と隔絶されているかのような静けさで、不自然に思えるほどのレベルにある。今となっては「耳障りではない類いのノイズは少し許容したほうが、乗員が自然な走行感覚を得られる」とも言われるが、エンジン音がないがゆえに目立ちやすいロードノイズや風切り音を徹底的に抑え込んだ彼らの技術力は、素直に称賛できる。
車両重量は2610kgと重いが、市街地を走らせていると意外にも軽やかだ。アルミとカーボンの複合素材で構成されるボディーは、圧倒的な剛性感があり、4輪アダプティブエアサスペンションはMパフォーマンスモデルとしてはソフトタッチでスムーズにストロークしている。嫌な硬さがなく、1015N・mものトルクによる動力性能の余裕もあって、軽やかに感じられるのだ。乗り心地は至極快適で、静粛性の高さともども洗練された印象が強い。
いっぽうで、ペースを上げていくとBMWのハイパフォーマンスモデルらしさも見えてくる。市街地を流しているときは至ってジェントルで、あふれるパワーを誇示することもなかったアクセルに対するモーターの反応は、踏み込みを増すごとにトルクが上乗せされていき、床まで踏みつければ圧巻の加速を披露する。その漸進的なトルク特性が見事で、ハイパフォーマンスながら実に扱いやすい、良好なドライバビリティーの源になっている。試乗日は前夜の雨が路面に残っていたが、フル加速させても姿勢が乱れる様子をまったく見せないのは、4WDや賢い電子制御デバイスの恩恵だろう。
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その実力は今なお一級品
ハンドリングもまたiX M70 xDriveのハイライトだ。コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいけば、車両重量を感じさせない軽やかなフィーリングでノーズがインへ向いていく。「インテグレーテッドアクティブステアリング」によって後輪が操舵されているから、スムーズにコーナーをクリアできるという面もあるが、その挙動に違和感はない。初期モデルのiXでは、コーナリングのペースを上げると“重さ”が顔を出すこともあったが、今回はそれを感じることもなかった。サスペンションの細部の煮詰めや制御などが成熟したのだろう。
コーナーで立ち上がりに向けてアクセルを踏み込んでいけば、リアモーターの大きなパワーに後ろから押されつつ、強大なトラクションを感じられるのが痛快だ。まるで「M3」の「xDrive」など、FRベースの4WDのようなフィーリングを表現しているところが、洗練されたiXに「駆けぬける歓(よろこ)び」をトッピングした、Mパフォーマンスモデルならではの魅力といえるだろう。
BEVは進化のスピードが速いが、iXは洗練度や快適性、そしてハンドリングのよさなど、多方面で今なお一線級の実力を持ち合わせている。さすがは、未来を見据えて先行的に技術が投入されたモデルだけのことはある。間もなく登場する「ノイエクラッセ」シリーズは、また新たなBMWの未来像を見せることになるはずだが、近年、そのイメージを引っ張ってきたのは間違いなくiXだ。今もなお、技術的フラッグシップの役割をしっかりと果たしているのが感じられた。
(文=石井昌道/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=BMWジャパン)
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テスト車のデータ
BMW iX M70 xDrive
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4965×1965×1695mm
ホイールベース:3000mm
車重:2610kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:258PS(190kW)/8000rpm
フロントモーター最大トルク:365N・m(37.2kgf・m)/0-5000rpm
リアモーター最高出力:489PS(360kW)/1万3000rpm
リアモーター最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/0-5000rpm
システム最高出力:659PS(485kW)
システム最大トルク:1015N・m(103.5kgf・m)
タイヤ:(前)275/40R22 107Y XL/(後)275/40R22 107Y XL(ハンコック・アイオン エボSUV)
交流電力量消費率:209Wh/km(約4.78km/kWh、WLTCモード)
一充電走行距離:602km(WLTCモード)
価格:1998万円/テスト車=2039万3000円
オプション装備:ボディーカラー<BMW Individualフローズンディープグレー[メタリック]>(41万3000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:3643km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:239.9km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.0km/kWh
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石井 昌道
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