第868回:ウエット路面での実力は? ブリヂストンの新スタンダードタイヤ「フィネッサ」を試す
2026.04.22 エディターから一言 拡大 |
2026年1月に発表されたブリヂストンの「FINESSA(フィネッサ)」は、次世代の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する最新のスタンダードタイヤだ。前回の一般路を中心としたドライ路面での試走報告(参照)に続き、自慢のウエット性能をクローズドコースで確かめた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
雨の日の運転に安心を
「雨の日の運転はどうも苦手」という人は多いのではないだろうか。実は私もそのひとりで、視界が悪化するのに加えて、ブレーキの利きやコーナーでの動きがいつもと違うと感じる。そうした印象が、不安や苦手意識につながるのだろう。
実際、雨の日の運転はリスクが高いことがわかっている。雨天時の交通事故件数は晴天時の約6倍に達するというデータもある。視界の悪化に加え、タイヤと路面との間に水膜ができることでタイヤが路面から浮く「ハイドロプレーニング現象」により、グリップが低下し、制動距離が伸びてしまうことが主な原因だ。しかも、このハイドロプレーニング現象は、溝が減ったタイヤや高速走行時に起きやすい。
それだけに、梅雨時を前に、タイヤの溝の深さをぜひ点検しておいてほしいのだが、もしこれからタイヤを買い替えるなら、雨に強いタイヤを選ぶというのもひとつの手だ。ブリヂストンの新商品「フィネッサHB01」も、まさにその点に着目したタイヤである。
ただ、以前の試走時には、残念ながらウエット路面を試すチャンスがなく、私を含めて試走後に「ウエットコンディションでも試したい」という声が寄せられたという。それに応えるように、今回は栃木・那須塩原にあるブリヂストンプルービンググラウンドで、ウエット路面での試走の機会を用意してくれた。雨が降る日が多くなるのを前に、その実力を確かめるには絶好のチャンスといえる。
安全性と快適性を両立するフィネッサ
試走に入る前に、フィネッサについて簡単におさらいしておこう。
フィネッサは、2026年1月にブリヂストンが立ち上げた新ブランドである。名前の由来は「FINE」と「SAFETY」を組み合わせた造語で、上質さと安心・安全を両立するというコンセプトが込められている。
同社のラインナップでは、「エコピア」と「レグノ」の中間にあたる存在となる。低燃費性能を軸とするエコピアから一歩上の、快適性や安心感を高めたブランドである。
今回試したフィネッサHB01は、その第1弾にあたる。最大の特徴はウエット性能の強化で、排水性を高める「スプラッシュラグ」や、摩耗後も性能を維持する「スクエアグルーヴ」を採用。エコピアとの比較では、ウエットブレーキ性能が新品時で15%、2万km走行後でも12%向上しているという。
加えて、接地圧の均一化やノイズ低減技術も盛り込まれており、単に雨に強いタイヤにとどまらず、日常での快適性も重視している点は見逃せない。
3つの異なるステージでフィネッサとエコピアを比較
今回の試走会では、フィネッサのHB01とエコピアの「NH200」「NH200C」を、ドライ、ウエットハンドリング、ウエット旋回の3つの異なるプログラムで試すことができた。使用する車両もそれぞれ異なり、ドライが「ホンダN-BOX」、ウエットハンドリングが「トヨタ・シエンタ」、ウエット旋回が「トヨタ・プリウス」だ。装着されるタイヤはフィネッサがすべてHB01であるのに対して、エコピアはプリウスがNH200、N-BOXとシエンタが軽・コンパクトカー用のNH200Cで、フィネッサHB01が幅広い車種をカバーしているのがわかる。
まずはドライ路面での比較から。おおむね40km/hでパイロンスラロームやレーンチェンジを試す。エコピアNH200Cを装着したN-BOXは、スラロームもレーンチェンジもそつなくこなし、これだけを運転しているかぎりでは、とくに不満はない。
しかし、フィネッサHB01で同じコースを試すと、明らかにフィネッサのほうが扱いやすい。ステアリング操作に対する反応が素早く、スラロームではより小さな舵角で車両の向きを変えることができるので、運転に余裕が生まれる。また、レーンチェンジではロールが抑えられ、スムーズな走りが楽しめる。さらにフィネッサHB01のほうがロードノイズも小さく、乗り心地も一段上。ブリヂストンの狙いどおり、エコピアのワンランク上の快適性を感じさせる仕上がりだった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ウエットで本領発揮
シエンタを使ったウエットハンドリングの比較では、フィネッサHB01とエコピアNH200Cの差がより明確になった。
あえてアクセルペダルを大きく踏み込んで発進すると、フィネッサのほうが明らかにスリップは少なく、トラクションがしっかりしている。コーナーでも、ステアリング操作に対する応答がリニアで、アンダーステアも弱い。しかも、エコピアに比べて挙動が落ち着いているため、安心してステアリングを操作したり、アクセルペダルを踏めたりするのがうれしいところだ。
スキッドパッドを使った試走には、プリウスを使用。新品のエコピアNH200と2万km走行後相当のトレッド面が摩耗したフィネッサを乗り比べる。実際にヨーロッパで使われていたすり減った石を敷き詰めた路面に水をまき、摩擦係数が低い状態で円旋回を行った。ステアリングを切りながら30km/hを目標に加速するが、新品のエコピアの場合は25km/h付近で挙動が不安定となり、スピンしそうな気配が漂う。当然、ステアリングを修正する必要が出てくる。
これに対して2万km走行後相当のフィネッサでは、30km/hで安定して旋回できるうえに、滑り出しも穏やかでコントロールもしやすい。それだけに運転のしやすさはフィネッサのほうが格段に上である。しかも、このようにタイヤが減った後でも安心が長続きする点は、ユーザーにとっては大きなメリットになるだろう。
一連の試走を通じて、フィネッサが日常の快適さと運転のしやすさに加え、雨天時の安心も高いレベルで両立していることが実感できた。雨の日はいつも以上に慎重な運転を意識しつつ、タイヤ選びにも気を配りたいとあらためて感じながら、テストコースをあとにした。
(文=生方 聡/写真=ブリヂストン、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ! 2026.5.15 「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。
-
第869回:思わぬサプライズもいっぱい! クルマ好きのための祭典「シン・モーターファンフェスタ2026」で“最旬ニューモデル”に触れる 2026.4.24 日本最大級の“クルマ好きのための祭典”「シン・モーターファンフェスタ2026」に、発売を間近に控えるさまざまな注目モデルが終結! 会場の様子や、そこで得られた最新情報をお伝えしよう。
-
第867回:ハイエースオーナー必見! スマホで操作できる可変ダンパー「KYBアクトライド」を試す 2026.4.22 KYBからスマートフォンのアプリで操作できる可変ダンパーシステム「ActRide(アクトライド)」が登場。まずは「トヨタ・ハイエース/レジアスエース」用からの展開となるこのシステムの仕上がりを、実際に試乗して確かめた。
-
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す 2026.4.17 スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ編
2026.6.5webCG Movies三菱の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」が多くの人に支持される理由は、個性的なルックスだけなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが、人気の秘密に迫る。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。











































