スズキ・ワゴンR 20周年記念車(FF/CVT)/ホンダN-WGN G・Aパッケージ(FF/CVT)/三菱eKワゴン G(FF/CVT)
「ニッポンのスモール」の今とこれから(前編) 2014.08.11 試乗記 日本における小型大衆車のスタンダードである軽トールワゴン。人気モデルの3台を徹底的に比較し、その実力を検証した。変化を見せる軽市場の勢力図
全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の発表によれば、今年6月の販売が12カ月連続のプラスとなるなど、増税後も好調さをキープしている軽自動車。昨今のトレンドは全高1700mmを超える「スーパーハイトワゴン」だが、現在の市場発展の礎(いしずえ)となったのは、全高1600mm台の「軽トールワゴン」にほかならない。今回は、このクラスの元祖でもある「スズキ・ワゴンR」、新興勢力として人気沸騰中の「ホンダN-WGN」、“日産との協業”という新しいビジネスモデルの基に登場し、このほど一部改良を行った「三菱eKワゴン」の3台をピックアップした。
まずそれぞれを比較する前に、軽自動車(乗用車)の市場変化、特に各社の動静について知っておく必要がある。わずか3年前の2011年を振り返ってみると、そのシェアはダイハツが37.5%、スズキが31.6%と、両社の“2強時代”であった。しかし、2012年になるとその勢力図に大きな変化が現れる。それがホンダの「Nシリーズ」の登場である。これにより、2011年にはわずか8.6%だった同社のシェアは18.5%と大きく伸長。ダイハツとスズキは自社のシェアをほぼキープしながらも、新興勢力の登場に頭を悩ませることになる。一方、スズキなどからのOEM供給により軽自動車販売を行っていた日産も、2011年時点では10.7%とまずまずのシェアを誇っていた。これが2012年に入ると7.9%へと大きくダウン。しかし三菱自動車との合弁で軽自動車の企画・製造を行うNMKVを設立したことが、後のシェア回復につながることになる。
こうした変遷を経て、今日ではホンダが好調を維持しつつ、日産も2011年以上のところまでシェアを回復。一方、トップの2社については、スズキは「ハスラー」、ダイハツは「タント」と、それぞれのヒット作を出しながらも、シェアをやや落としているのが軽自動車界の現状である。
前述したように、世の中の軽自動車トレンドはスーパーハイトワゴンに向かっているが、2014年6月の販売データを見ると、ワゴンRが2位、「ダイハツ・ムーヴ」が4位、N-WGNが6位と健闘。NMKVが生産する兄弟車の「日産デイズ」と三菱eKワゴンについても、前者が5483台、後者が2515台、合算すれば7998台とかなりの販売台数になる。つまり、数字から見れば決してこのジャンルが衰退しているわけではなく、軽トールワゴンは現在では“デファクトスタンダード=これが普通”としてユーザーに支持されているのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
似ているようで、結構違う
さて、もともと全長と全幅に制限のある(正確に言えば全高にも2000mm以下という制限はある)軽自動車の規格内において、全高を上げることで居住性と使い勝手を大幅に向上させた軽トールワゴン。今回は街乗り中心、言い換えれば普段使いでの比較をメインに据え、エンジンは自然吸気、価格帯も実際の売れ線である120万円代のグレードを用意した。ただし、ワゴンRのみ諸般の事情で特別仕様車となっており、価格差が発生している。これに関しては特別装備分のアドバンテージを頭の中で差し引きながら、他2車とのバランスを取って比較するということで了承いただきたい。
まずクルマに乗り込む際の乗降性からチェックしてみる。昨今の自動車は路面からフロントシートまでの高さ、いわゆるヒップポイントが高いものが多い。少し前の話だが、初代「トヨタ・ヴィッツ」が登場した際、590mmという従来のクルマよりやや高めのヒップポイントが評価され、後のクルマづくりに大きな影響をもたらした。今回の3車はすべてこの数値を超えており、一番低いeKワゴンでも640mmの高さがある。もちろんルーフやピラーが気になるということもなく、乗降性は良好である。実際に着座してみると、視野や運転姿勢などから感じられる「運転席の高さ感」は、やはりeKワゴンが3車の中では低め、逆にN-WGNが高めに感じる。もちろんテスト車にはシートリフターとチルトステアリングが標準装備されているので、好みによって一定量の調整は可能だ。
一方、軽トールワゴンの魅力のひとつである広々感に関しては、3車とも感覚が異なる。その中でも頭ひとつ抜き出ているのがN-WGNである。特に運転席に座った際の右頭上斜め(助手席で言えば左頭上斜め)の空間に余裕があり、圧迫感が少ない。さらに外観から想像する以上にヘッドクリアランスにゆとりがある点も好印象だ。
次に視界についてチェックしてみた。特に助手席側の三角窓(車種によっては多角形だが)から見える側面の視界に関しては違いがある。見やすさではワゴンRとN-WGNが優位である。最大の理由はAピラーの傾斜角が緩やかかつ、三角窓の後部(最近では「Aダッシュピラー」と呼ぶメーカーも出てきている)が両車とも細く、視界面積を広く取っていることが大きい。eKワゴンの場合はピラーの傾斜がきつく、三角窓も小さいので目に入ってくる情報量は少なめである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ユーティリティーはホンダに軍配
後席シートについてチェックしてみると、各車ともここの快適性を重視していることがひしひしと伝わってくる。主観はあるが、「いい座り心地だ」と感じるのはN-WGNとeKワゴンだ。特にeKワゴンは、座面部の厚みが十分取れていながらも、太ももから膝にかけての圧迫感やふくらはぎに対する当たりが少なく、よくできている。さらにリクライニング機構も左右独立で12段とピッチが細かく、快適な姿勢を作りやすい。N-WGNも同様に快適。ワゴンRは体をホールドするというよりは、少しベンチ的というか平板な感じを受けた。
日常使いでのユーティリティーに関しては、N-WGNのほぼ圧勝である。「ほぼ」とあえて書いたのは、後席のスライド機構が左右独立ではないからだ。しかし200mmのスライド量(ワゴンRは160mm、eKワゴンは170mm)だけでなく、リアシートを後端まで下げた際の荷室の奥行きもライバルより100mm近く大きいなど、まさに「ワゴン」としての使い勝手の良さが光る。
補足だが、ホンダのNシリーズはモデルごとにリアシートの構造を変えることで、それぞれに特徴的なアレンジを用意している。N-WGNのそれは比較的オーソドックスな左右一体スライド&分割可倒式。「N-ONE」や「N-BOX」のような座面の跳ね上げ機構はないが、リアシート座面下には幅99cm×奥行き33cmの大型アンダートレーを設置しており、ぬれた傘などを置くのに重宝する。
と、ここまで引っ張るだけ引っ張って、ようやくイグニッションスイッチに手を伸ばす。すでに猛暑と言っても差し支えないほどの外気温なので、エアコンはオートでフル稼働。試乗はストップ&ゴーの多い都内の一般路を中心に行った。(後編につづく)
(文=高山正寛/写真=荒川正幸)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
スズキ・ワゴンR 20周年記念車
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1660mm
ホイールベース:2425mm
車重:790kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:52ps(38kW)/6000rpm
最大トルク:6.4kgm(63Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)155/55R15 75V/(後)155/55R15 75V(ブリヂストン・エコピア EP150)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)
価格:138万2400円/テスト車=151万9398円
オプション装備:ボディーカラー<スチールシルバーメタリック>(2万1600円)/スマートフォン連携ナビゲーション(7万5600円)/※以下、販売店装着オプション ETC車載器(1万9656円)/フロアマット(2万142円)
テスト車の年式:2013年型
テスト開始時の走行距離:4763km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ホンダN-WGN G・Aパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1655mm
ホイールベース:2520mm
車重:820kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:58ps(43kW)/7300rpm
最大トルク:6.6kgm(65Nm)/4700rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:29.2km/リッター(JC08モード)
価格:128万5715円/テスト車=136万5635円
オプション装備:ディスプレイオーディオ(6万4800円)/※以下、販売店装着オプション フロアカーペットマット(1万5120円)
テスト車の年式:2013年型
テスト開始時の走行距離:2388km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
三菱eKワゴン G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1620mm
ホイールベース:2430mm
車重:830kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:49ps(36kW)/6500rpm
最大トルク:5.7kgm(56Nm)/5500rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)
価格:127万5480円/テスト車=145万6530円
オプション装備:ステアリングオーディオリモコンスイッチ+2スピーカー(1万800円)/※以下、販売店装着オプション ワイド2DIN-7型AV一体メモリーナビゲーション<ベーシック>(12万6230円)/ETC車載器(2万4451円)/フロアマット(1万9569円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1753km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

高山 正寛
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
アウディA6アバントTFSIクワトロ200kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.5 今も昔もアウディの中核を担うアッパーモデル「A6」。その最新世代の「アバント」に試乗した。堂々とした優雅なボディーに最新のハイブリッドシステムを搭載したステーションワゴンは、いかなる走りを見せてくれるのか。その実力をリポートする。
-
ホンダN-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル2トーン(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.3 フロントグリルとメッキパーツの面積が大きくなって迫力が増した最新の「ホンダN-BOXカスタム ターボ」に試乗。マイナーチェンジで進化した内外装の仕上がりと、軽四輪車の販売で11年連続の首位を誇る“絶対王者”の走りを報告する。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション
2026.10.9webCG Moviesホンダを代表するSUV「CR-V」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきたエンジニア、多田哲哉さんが試乗。その仕上がりにどんなことを思ったのか、動画でリポートします。 -
NEW
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く
2026.10.9デイリーコラムパナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。 -
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.10.8試乗記フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。 -
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る
2026.10.8デイリーコラムスバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。 -
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、10月15日(木)の夜、19時半から実施します。 -
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか?
2026.10.7デイリーコラムいよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。




































