お急ぎの向きはホンダへ!? 国産自動車メーカーの最新納期情報
2023.03.24 デイリーコラム何でも納期が長いとは限らない
クルマを買うときの悩みとして、今は納期が挙げられる。以前は特殊な車種を除くと、契約から納車されるまでの期間は1~2カ月だった。それが今は、半年から1年に達する車種が多い。
納期が遅れている一番の原因は、新型コロナウイルスだ。半導体などさまざまなパーツやユニットの供給が滞っている。そのために生産と納期が遅延した。webCGのコラムでは、2023年3月8日に「トヨタの最新納期情報」を公開したから、今回はほかのメーカーについても述べてみたい。
前回も触れたが、納期はカテゴリーによって異なる。軽自動車は、コストを抑えるためにパーツやユニットの共通化が進み、特殊な部品が少ないこともあって納期は短めだ。逆に小型/普通車のSUVは、人気が高いこともあって納期が長引く傾向にある。新型車も同様だ。
例えばトヨタの新型「プリウス」は、正式発売は2023年3月だが、販売店によっては2022年12月から価格を明示して予約受注を開始していた。この影響で、正式に発売された2023年3月には、既に受注が多くたまっていた。今では、販売店では「納車の早いグレードでも9カ月、遅ければ1年半以上を要する」としている。
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値引きが拡大できるケースとは?
トヨタ以外では、日産も納期が遅れ気味だ。2023年3月中旬時点において、販売店は以下のように述べた。「『エクストレイル』と『アリア』は、納期が約1年半まで延びたから、やむを得ず受注を停止した。再開するメドは立っていない。また軽自動車は納期が比較的短いが、『サクラ』は電気自動車とあって約5カ月を要する。『セレナ』も約9カ月で、もう少し延びる可能性がある」。
ホンダは前述のとおり、カテゴリーによって納期が異なる。販売店では以下のように説明した。「軽自動車は納期が比較的短い。以前の3カ月よりは長いが、『N-BOX』や『N-WGN』は半年を少し超える程度で1年には達しない。その一方で『ステップワゴン』『ZR-V』『ヴェゼル』は、大半のグレードが1年に達している」。
2023年3月は決算期だが、いわゆる決算フェアは行っているのか。「今は納期が遅延して、販売促進を行っても大量に売ることはできない。従って基本的には3月も通常どおりの値引き販売を行うが、『フィット』や『フリード』であれば在庫車も用意されている。特にフリードは発売から6年以上が経過したこともあり、3月中に登録できるのであれば、値引きを拡大できる」。
つまり納期の短い車種であれば、販売店も積極的に売るから、値引きなども拡大させやすいわけだ。
欲しいときに売らないと……
軽自動車が中心のダイハツやスズキを除いて、比較的納期が短いのがマツダだ。販売店は以下のように述べた。「『CX-60』は新型車だが、一部のボディーカラーを除くと、契約から4カ月程度で納車できる。『CX-5』や『CX-8』も同様だ。『ロードスター』など、納期の長い車種でも半年に収まる」。
納期が長引くと、ユーザーの購買意欲にも影響を与える。例えばコロナ禍による自粛が始まったころ、最初の3カ月くらいは「遊びに行きたい!」「皆とお酒を飲みに出かけたい!」などと考えた。ところが半年も経過すると、次第に自粛生活にも慣れてきて、遊びや飲み会に対する欲求が薄れてきた。
クルマは生活のツールだから、古くなれば乗り換えが必要になるが、それでも積極的に新しいクルマに乗りたい意欲は薄れる。「まだ十分に使えるから、もう一度車検を取ろう」という判断になりやすい。
このような経緯で売れ行きが下がると、メーカーの新型車投入も滞り、ますます販売が低迷する。実際に最近は、以前に比べると、新型車の予定があまり聞かれない。従って今のような時代にこそ、低コストで話題や需要を喚起できる特別仕様車の追加設定などが求められる。ユーザーのクルマに対する関心を高く保つことが大切だ。
(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ/編集=藤沢 勝)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。