ホンダN-BOXファッションスタイル プロトタイプ(FF/CVT)/ホンダN-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル 2トーン プロトタイプ(FF/CVT)
進化する“国民車” 2023.10.05 試乗記 ホンダが誇る軽スーパーハイトワゴンの人気モデル「N-BOX」が、いよいよフルモデルチェンジ! 一見すると、従来型とさほど変わりないように見える新型だが、その中身はどんな進化を遂げているのか? 3代目となった“国民車”の実力に触れた。絶対王者の3代目
連休初日の土曜日というのに、ホンダの栃木プルービンググラウンドに向かう。2022年の5月にも同じ場所を訪れた。「ステップワゴン」に試乗するためである。今回はN-BOX。クローズドコースなので、発売前に重要なモデルを披露するのに使われるのだ。平日は開発中のモデルをテストしているので部外者は立ち入ることができないが、この日は見られてはいけないクルマは屋内に収められている。
ミドルサイズミニバンのステップワゴンも話題となったが、N-BOXにははるかに高い注目が集まっている。2023年前半の国内販売台数でランキングトップのモデルなのだ。軽スーパーハイトワゴンと呼ばれる売れ筋のジャンルで、「ダイハツ・タント」「スズキ・スペーシア」といった強力なライバルを振り切って盤石の地位を築いている。ホンダにとっても、経営の根幹を支える存在といっていいだろう。ホンダ車の販売のうち、約40%がN-BOXなのである。
2011年にデビューしたN-BOXは、今回のフルモデルチェンジで3代目となる。「N-WGN」「N-ONE」などとともにNファミリーを形づくっているが、長男坊としてダントツの売り上げを誇る。地方のスーパーマーケットの駐車場では、N-BOXがずらりと並ぶ光景が珍しくない。絶対王者であり、このジャンルでのデファクトスタンダードともいえる存在なのだ。そのことは開発陣も意識していて、“国民車”という言葉を使って説明していた。プライドと責任感がにじみ出ている。
すでに内外装は発表されていて(参照)、先代からの変化のなさが取り沙汰されていた。実物を目の当たりにすると、確かに似ている。クルマに興味のない人なら見分けがつかないかもしれない。軽自動車の規格のなかで最大限の室内スペースを確保しようとしているのだから、変えようがないともいえるだろう。そして、N-BOXユーザーに安心して買い替えてもらうために、あえて変えないほうがいいという判断もある。
シンプルで愛らしい
フォルムが同じでも、ディテールが変われば印象は少し異なってくる。丸みを帯びたシルエットにして優しげな空気をまとわせ、シンプルですっきりとしたラインがアップルのジョナサン・アイブ的なデザイン感覚に近い。従来どおり、スタンダードモデルと「カスタム」の2タイプが用意される。新デザインの特徴がわかりやすく表現されているのがスタンダードだ。フロントグリルには小さくて丸い穴が整然と並べられ、愛らしさと親しみやすさを演出する。
カスタムはより立体感を強調したつくりになっているが、威圧感や過度なダイナミックさは目指していないようだ。一時期はこのジャンルでオラオラ系といわれる派手でゴージャスな意匠を競い合う傾向があったが、いき着くところまでいって調整期に入っているのかもしれない。ヘッドランプはスタンダードが丸型リングを採用しているのに対し、カスタムは横一文字につながってシャープさを強調。スタンダードのランプカバーが凹型になっていることは、遠くからでは気づかない。
試乗コースは3つのエリアに分かれていた。1つ目は市街地を模したもので、信号機も設置されている。実際に使われることの多いシチュエーションを再現したものだ。そして、郊外の道に似た外周路、バンクを持つ高速オーバルコースという構成である。自然吸気(NA)エンジンのスタンダードとターボのカスタムが用意され、さらに現行車にも乗ることができた。乗り比べて進化を実感してほしいというわけだ。よほど自信があるのだろう。
最初に乗ったのは、現行のターボモデル。久しぶりだったが、やはり出来のいいクルマであると感じた。市街地での取り回しがしやすいのはもちろん、120km/hまで出していいと言われた高速コースでも安定した走りっぷりである。ハンドリングは穏やかなしつけだし、車内にノイズが満ちるようなこともない。これならば、そのまま販売していても競争力は保てるのではないか。実際に、モデル末期でも販売成績は落ちていないのだ。
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フラット化で広い視界を実現
新型に乗り込む前に、テールゲートを開けてみた。技術説明会ではあまり目を引くようなトピックは語られなかったなかで、わかりやすい変更が示されていたのがこの部分だったのだ。右にズレていたハンドル位置が中央に移され、さらに70mm下げられた。それによって、開ける時にゲートが体に当たりにくくなるという説明である。やってみると、本当に開けやすい。こういう細かいところにまで気を配ることが、人気に結びついているのだろう。
運転席に座ると、明らかに風景が違う。ダッシュボードの上端がフラットになっているのだ。現行車ではメーターがステアリングホイールの上に見えていたが、一般的な“インホイールメーター”にしたことで、完全な水平ラインを実現することができた。小柄な女性にとっては、視界を妨げるものがなくなることで運転のしやすさが大幅に向上するのだという。メーターの情報より視界を優先したともとれる変更だが、ホンダセンシングが進化したことで、運転にまつわるあれこれの一部をクルマに任せられるようになった今、メーターも多くの情報を表示することより、必要な情報をわかりやすく伝えるほうが重要という判断に至ったそうだ。
視界がよくなったのはいいことだが、走行性能はどうなのか。初代から2代目になった時はエンジンとプラットフォームを刷新するという常識はずれの大改革だったが(参照)、今回はいずれも引き続き同じものを使っている。普通に考えれば大きな違いを生み出すのは難しい。しかも、現行モデルの出来がいいのだから、どこまで上積みできるのか。
走りだしてみると、やはり大きな差は感じられない。同じように取り回しがしやすく、高速走行での安心感も引き継がれている。走行中の室内はより静かになったと思ったが、大騒ぎするほどのことではない。現行車も新型もいいよね、という感想になってしまうのかと困っていたら、テストコースの終わり近くに新旧の明確な違いを実感させる仕掛けが待っていた。
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踏切横断で進化を実感
リアルな道を再現しているのだから、なめらかな路面だけではない。ざらついていたり、段差があったりする。最大の難関が、踏切だった。実際に電車が走っているわけではないから止まらずに進み、結構なスピードで線路を横断する。現行車で走った時はかなり大きな衝撃を受けたが、新型で同じように進入すると明らかに揺れが緩和されているのがわかった。不快感は相当に軽減されている。特に後席では改善が顕著だった。足まわりの改良に加え、シートの構造を変えて表皮を柔らかくしたことも効いているらしい。
同じような体験をしたことがある。2015年に4代目「トヨタ・プリウス」に試乗した時だ。悪路ゾーンで新旧の違いを実感させようという試みで、目を見張る進化に驚いたことを覚えている。ただ、4代目プリウスはトヨタが新世代技術として打ち出したTNGAを初採用したクルマで、プラットフォームを含むアーキテクチャーを一新していたのだ。新型N-BOXは先代を引き継ぎながら細部をブラッシュアップすることで同様な進化をもたらした。エンジニアの地道な試行錯誤があったのだろう。
スタンダードモデルも新旧2台に乗った。高速コースではパワー不足からエンジン回転を上げざるを得ず、騒音が気になったが、乗り心地に関しては改良の恩恵を享受することができた。街乗り主体なら十分な性能を持っているので、デザインのかわいさを優先するならこちらを選んでもいい。試乗車は「ファッションスタイル」という新設のグレードで、イエローのボディーカラーとホイールキャップの組み合わせがオシャレ感をもたらしていて魅力的だった。
先日、新型「トヨタ・アルファード」に乗り、快適性と走りの進化に驚嘆した。大きさも価格帯も違うが、もう一つの“国民車”ともいうべき存在である。いずれも日本で特殊な発展を遂げたジャンルだ。自動車は100年に一度の転換期を迎えているといわれるが、ユーザーの声をすくい取って改良を続けることの大切さは変わっていない。
(文=鈴木真人/写真=本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ホンダN-BOXファッションスタイル プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1790mm
ホイールベース:2520mm
車重:910kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:58PS(43kW)/7300rpm
最大トルク:65N・m(6.6kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:21.6km/リッター(WLTCモード)
価格:174万7900円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:987km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダN-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル 2トーン プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1790mm
ホイールベース:2520mm
車重:940kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64PS(47kW)/6000rpm
最大トルク:104N・m(10.6kgf・m)/2600rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:20.3km/リッター(WLTCモード)
価格:222万9700円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1012km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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