第284回:自動車税の真実
2024.05.20 カーマニア人間国宝への道13年経過車の自動車税は15%割り増し
5月。自動車税納付の季節になった。この時期、カーマニアの間で必ず話題になるのが、日本の自動車保有税負担の重さだ。
私の元には、以下の自動車税納付書が届きました。
- フェラーリ328GTS:6万6700円
- プジョー508 GT BlueHDi:3万6000円
- ダイハツ・タントスローパー:1万0800円
私の「フェラーリ328GTS」は初度登録が1989年なので、車齢35年。当然13年経過の15%割り増しが適用されている。多くのカーマニアは、この上乗せに激しく反発している。
私も以前は、不合理に感じていた。上乗せによって新しいクルマへの買い替えを促せば、燃費は向上し排ガスはクリーンになり安全性は増し景気浮揚効果もあるのは認める。しかし、たとえば車齢25年を超えたら、それはもう旧車という名の文化遺産。維持費はかさみ、走行距離は少なくなる。そこから先は逆に半額くらいに割り引いてくれてもいいんじゃないか?
しかし今は考えを変えた。なにしろほとんどの旧車が高騰していて、売ればもうかる状況だ。投資対象として購入している人も少なくない。そういうクルマの自動車税を減免するのは一種の金持ち優遇にあたる。
私はもちろん投資目的じゃないけれど、328に関しては、自分にとっての価値の高さを考えれば、15%増しくらいはぜんぜん問題ない。年々割増率がアップしていくんなら別だけど、ずーっと15%増しのまんまだし! 逆に「フェラーリ様がこの程度の自動車税でありがたや~」くらいに思っている。
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日本も欧米を見習うべき?
「プジョー508 GT BlueHDi」の3万6000円も、高いとは思ってない。あれだけトルクがあって、2リッターのガソリン車と同額なんだから安いっ! クリーンディーゼルゆえに、1回目の車検時は重量税が免除だった。燃料は税負担の軽い軽油。クリーンディーゼルは超おトクだネ!
そして「ダイハツ・タントスローパー」。軽自動車ゆえに掛け値なしに安い。2016年に7200円から1万0800円に値上げされたけど、軽は以前からスーパーハイトワゴンが主流。これだけデカくなったんだから、まだ安すぎるくらいじゃないだろうか。
日本の自動車税制は、保有税が非常に高い。先進国中一番だ。クルマを走らせなければ、CO2は出さないし道路も傷めないのに、持ってるだけで払わされる保有税が高いのは、カーマニアとして憤懣(ふんまん)やるかたない。
環境負荷や道路などインフラの維持費を考えたら、保有税を下げて燃料税を上げるのが正しい方向性だろう。実際ヨーロッパ各国はそうしている。日本も見習うべきだ! と以前は考えていた。
でも、でもでも、それを実行したら、クルマがないと生活できない地方のドライバーや物流業者は増税になり、たまにしかクルマに乗らない都市部のドライバーは減税になる。保有税を減らして走行税を増やすのは、方向性としては正しいけれど、日本ではこれまた金持ち優遇。とても実現できない。あなたが総理大臣だったら実行しますか? 私にはできません。
「全部安くすりゃいいんだよ! 俺が総理大臣ならそうするね!」
そうおっしゃる方もいるでしょう。ぜひ総理大臣になってください。お願いします。
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都合の悪い真実
日本自動車工業会は、ずーっと以前から日本の自動車保有税の高さを問題視し、引き下げるように主張している。オフィシャルウェブサイトを見ると、「税負担の国際比較」と題したグラフが掲載されている。
それを見ると、2リッターの非エコカー(今どき珍しいけど)を13年間所有した場合、日本の保有税は総額62.8万円で断然トップ。イギリスは34万円、ドイツは11.3万円、フランスは0円、アメリカは2.2万円となっている。これを見れば、日本のドライバーは自動的に怒る仕組みである。
しかしよく見ると、隣には「取得」の薄いグラフがあり、そっちに関しては、日本は欧州の約半額だ。消費税率が日本は10%だけど、あっちは20%前後なので。
さらにいうと、このグラフには燃料税が入ってない。日本のガソリン税は、欧州各国の半額程度(軽油は3分の1くらい)。燃料税にも消費税がかかる二重課税ではあるけれど、それを入れても断然安い。
すべての税額をトータルすると、日本は欧州より安くなる。これは日本自動車工業会にとって都合の悪い真実なので、グラフに載せていないのである。
さらに、さらにいえば、日本には軽自動車がある。軽なら13年間の保有税は合計18.3万円ですみ、車両価格が安いぶん消費税も安い。燃費がいいから燃料税も安上がりだ。
軽自動車の販売割合は4割近くに達している。地方ではほぼ半分軽だ。安く上げようと思ったら、日本には軽という切り札があり、欧州にはない。アメリカは巨大なピックアップでも日本の軽くらいの税負担だけど、世界一の産油国と比較してもしょうがない。
というわけで、結論として、私はすべて納得のうえ、喜んで自動車税を払う。高いと思ったら、軽だけでもカーマニア活動はできる! 「ホンダS660」も古い軽トラも面白かったヨー。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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