レクサスLBX MORIZO RR(4WD/6MT)/LBX MORIZO RR(4WD/8AT)
見事なまでの二刀流 2024.07.18 試乗記 「レクサスLBX」に新グレード「MORIZO RR(モリゾウ アールアール)」が登場。その心臓部にはなんと「GRヤリス」譲りの1.6リッター3気筒ターボエンジンを搭載。最高出力304PSを発生する高級ホットハッチである。発売を前にサーキットで仕上がりをテストした。その気になればサーキットで楽しめる
2023年は全世界で82万台以上を売り上げたレクサス。対前年比32%増というとっぴな数字が示すとおり、コロナ禍や半導体不足に起因した供給不足の解消が販売増の主因であることは間違いない。2024年はさすがにそのリバウンドもあるだろうが、ハイブリッドパワートレインの販売好調に加え、ニューモデルの投入も手伝って、他ブランドにも増しての上げ潮基調といっても間違いないだろう。
このうち、日欧で販売のけん引を期待されるのが、最も小さいクロスオーバーとなるLBXだ。ドイツの御三家では利ざやを取ることが難しくなってきているコンパクト系のセグメントで、それこそハイブリッドパワートレインを武器に小さな高級車という難しい企画に挑戦している。ちなみに日本市場ではこの1~6月の販売台数が1万台超えと、今のレクサスでは最も売れているモデルとなっている。
そのLBXに新たに加わったグレードがMORIZO RRだ。2024年1月の東京オートサロンでお披露目されたコンセプトモデルが日の目を見たかたちとなる。ベースモデルは7月18日に受注を開始したが、表皮色や配色、シートベルトやステッチ色、キャリパー色などを希望に沿ってオーダーできる“ビスポークビルド”については、当初は100台の限定で、7月31日まで申し込みを受け付け、その後に抽選となる予定だという。
小さいながらも上質なしつらえとドライブフィールを併せ持つといったLBXの成り立ちはそのままに、「GRヤリス」や「GRカローラ」で培ったソリューションを組み合わせて大人のスポーツコンパクトに仕上げた……と、MORIZO RRのプロファイルをざっと記せばそんな感じだ。その気になればサーキットランを楽しめるポテンシャルを有しながらも、街なかからワインディングロードまで、ストリートを気持ちよく走れる、そんなキャラクターを意識したという。
クルマ屋ならではの引き出し
MORIZO RRのプラットフォームはGA-Bをベースに、後軸まわりにGA-Cのダブルウイッシュボーンを用いた混成型となる。このあたりはGRヤリスと同じだが、LBXはそもそもホイールベースが異なるほか、レクサス仕様として開口部の環状構造などがヤリス系とは別物の骨格構成となっており、共通項は少ない。MORIZO RRではそのLBXのモノコックをベースに、さらに469のスポット打点追加や床面まわりを中心とした構造用接着剤塗布長の延長、ロアバックの板厚アップやラジエーターロアサポート、ダッシュカウル部の強度アップ、リアへのパフォーマンスダンパーの採用など、さらなる剛性向上・減衰特性改善の策を随所に施している。
足まわりでユニークなのは、LBX用に開発された前のストラットサスのロアアーム部に、熱硬化型樹脂を塗布する新たな補強を施していることだ。「Response-Enhancing Damping Structure」を略して「REDS」と名づけられたこれは、プレス部品の曲げ部を縁取るように接着した後、焼き付けて硬化させることで応力変形によるジオメトリー変化を抑制、アンダーステアの軽減につながったという。コストや数量的にアルミ材などに置換できないがゆえの策ではあるものの、クルマ屋さんはいろんな引き出しを持っているなぁと感心させられる。
搭載するエンジンはGRヤリスやGRカローラと同じ、1.6リッター3気筒ターボの「G16E-GTS」だ。最高出力304PS/最大トルク400N・mのアウトプットも変わらない。トランスミッションは6段MTと8段ATが選択可能……と、ハードウエアのスペックからは、2024年型GRヤリスのメカニズムをごっそりいただいているのかという風にも見えるが、トランスファーは50:50の前後駆動配分固定モードを備えた電子制御可変型フルタイム四駆だ。代わりに旋回力を高めるのが前後軸に配されたトルセンLSDということになる。
また、8段ATの変速マネジメントはクルマのキャラクターに合わせたチューニングが配されるほか、6段MTにはブリッパー機能が加わるなどスポーツドライビングの気軽さにも配慮。MT車のサイドブレーキはレバー比を最適化して操作力を低減するなど、レクサスらしい操作感も追求されている。
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すっきりとした転がり感
発売前のモデルということもあって、試乗はクローズドコースに限られたが、事前のブリーフィングで面食らったのが「VSCはどうぞオフで」という指示だった。普通、こういう状況での試乗は安全第一で「VSCはくれぐれもオンで」と懇願されるものだが、よほどクルマに自信があってのことなのだろうか。
それとも言い間違い? とも思ったが、コックピットドリルでもわざわざスタッフがVSCをカットしてくれたので、これはもうバンバンやっちゃってくださいというお墨付きをいただいたようなものである。それでもいい年こいて1周目でクルマをつぶすような恥はさらせないので、まずはクルマのあんばいをつかむようにしながらペースを上げていった。
クローズドコースで平時の乗り味や脚のアタリ感を探ることはピットロードかゼブラゾーンくらいでしかかなわないが、そういうところで凹凸を踏んでみた限り、微小入力からダンパーの減衰はしっかり立ち上がっている。加えてタイヤのダンピング特性もよさそうだ。軸物まわりの精度や剛性の不足からくる濁りも感じられず、転がり感はすっきりとしている。
MORIZO RRはGPSデータと連動でリミッター解除やターボのアンチラグ低減など、サーキット走行向きのドライブモードに切り替えられるほか、サブラジエーターの増設や、AT車向けにはATフルードクーラーの追加など冷却系統の強化が施されている。ブレーキもベルハット別体の大径スリットタイプを採用するなど、クローズドコースが余技前提とは思えない。名前は違えどしつらえはLBX Fといった趣だ。
LBXならではのギミックも
実際、その走りはクローズドコースでも輝くものだった。重量はGRカローラの側に近いこともあって、さすがにGRヤリスのような鋭い差し込みは望めないが、そのぶん車格以上にスタビリティーがしっかりと感じられる味つけがなされており、旋回時も安定感のなかにパワーオンで向きをしっかり変えていく楽しさがある。装着タイヤは「コンチネンタル・スポーツコンタクト7」だが、そういう過渡域の挙動や制動時のつぶれ、路面との接地感などがとても分かりやすく、安心して楽しく速く走れるという狙いどころにはビタッとハマっていた。
GRヤリスにもGRカローラにもない、LBXならではのお楽しみのギミックとして、MORIZO RRにはスピーカーからの付加音でスポーティーなサウンドを楽しめる仕組みが加えられている。当初は3気筒特有の音質をカバーする目的だったのではと察せられるこのデバイスは、ドライブモードやオーディオシステムによって音量や音色などの演出が異なっており、マークレビンソン装着車では5気筒の「アウディRS 3」にでも乗っているかのような伸びやかなサウンドを車内に響かせてくれた。
MORIZO RRはスペックや成り立ちから想像するよりは、レクサス的な動的質感をしっかりと備えた上質なホットハッチに仕上がっている。公道での試乗機会がない状況なので断言はできないが、軸足は日常に置きながらも、休日のお楽しみにもしっかり応える中身を持った、大人の嗜好(しこう)に耐えうるスポーツコンパクトではないだろうか。今や欧州ではそういうコンセプトのクルマをつくって売ること自体が難しくなってきているが、日本からそういうクルマが現れたことで選択肢が保たれたことは、小さいクルマ好きにとっては素直に喜ばしい。
(文=渡辺敏史/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
レクサスLBX MORIZO RR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1840×1535mm
ホイールベース:2580mm
車重:1440kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)235/45ZR19 95Y XL/(後)235/45ZR19 95Y XL(コンチネンタル・スポーツコンタクト7)
燃費:--km/リッター
価格:650万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
テスト距離:--km/リッター
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レクサスLBX MORIZO RR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1840×1535mm
ホイールベース:2580mm
車重:1470kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)235/45ZR19 95Y XL/(後)235/45ZR19 95Y XL(コンチネンタル・スポーツコンタクト7)
燃費:--km/リッター
価格:650万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
テスト距離:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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