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第329回:没落貴族再建計画

2026.02.16 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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マセラティはブランド存続の危機?

2025年、20年ぶりにマセラティオーナーになった。不人気ゆえに中古が激安な5代目「クアトロポルテ」を、車両本体価格200万円で購入したのである。

私はフェラーリを除けば不人気車が好きだ。不人気車というだけで少し心が動く。マセラティというブランドは、「世界一故障する」という負のイメージ(あくまでイメージです)がとっても魅力的。カーマニアは、フェラーリオーナーよりマセラティオーナーを尊敬する傾向があるが、それはつまり、「不人気車を買ってエライ!」という賛辞である。

そんなマセラティだが、不人気不人気と笑ってもいられない。あまりにも不人気で、ブランド存続の危機がささやかれている。

で、今のマセラティ、どうなの? たとえば唯一の売れ筋であるSUVの「グレカーレ」って、どんな感じだっけ?

それを確認するために、毎年恒例となっているJAIA(日本自動車輸入組合)主催の大試乗会にて、2台のグレカーレに連続試乗させていただいた。

1台目は、「グレカーレ トロフェオ」。現行マセラティで最強のV6ターボ「ネットゥーノ」エンジンを搭載したモデルだ。最強といってもパワーは530PSで、「MCプーラ」(最高出力630PS)よりだいぶディチューンされているが、500PSを超えてれば十分だろ。

ネットゥーノエンジン搭載モデルは、「グラントゥーリズモ」で経験済みだが、サウンドが控えめなのが気になった。マセラティ最強なら、もっと激しく咆(ほ)えてくれると思っていたので。

JAIA(日本自動車輸入組合)が主催する毎年恒例となる報道関係者向け試乗会に参加し、最新の「マセラティ・グレカーレ」に試乗した。20年ぶりにマセラティオーナーになったので、今のマセラティも知る必要があると考えたのだ。
JAIA(日本自動車輸入組合)が主催する毎年恒例となる報道関係者向け試乗会に参加し、最新の「マセラティ・グレカーレ」に試乗した。20年ぶりにマセラティオーナーになったので、今のマセラティも知る必要があると考えたのだ。拡大
2025年に車両本体200万円で購入した大貴族号こと5代目「クアトロポルテ」。2007年式の「スポーツGT」グレードである。専用エキゾーストシステムや20インチホイール、変速速度をアップしたトランスミッション、カーボンをあしらったインストゥルメントパネルなどの採用が特徴だ。
2025年に車両本体200万円で購入した大貴族号こと5代目「クアトロポルテ」。2007年式の「スポーツGT」グレードである。専用エキゾーストシステムや20インチホイール、変速速度をアップしたトランスミッション、カーボンをあしらったインストゥルメントパネルなどの採用が特徴だ。拡大
最初にミドシップスーパーカー「MC20」ゆかりの3リッターV6ツインターボ「ネットゥーノ」エンジンを搭載する「グレカーレ トロフェオ」に試乗。グレカーレのラインナップにおいて、トップモデルに位置づけられる。
最初にミドシップスーパーカー「MC20」ゆかりの3リッターV6ツインターボ「ネットゥーノ」エンジンを搭載する「グレカーレ トロフェオ」に試乗。グレカーレのラインナップにおいて、トップモデルに位置づけられる。拡大
左右のフロントフェンダーには、マセラティ車でおなじみの3連エアアウトレットと、「Trofeo」のエンブレムが備わる。
左右のフロントフェンダーには、マセラティ車でおなじみの3連エアアウトレットと、「Trofeo」のエンブレムが備わる。拡大
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1000万円を切るマセラティが復活

「グラントゥーリズモ トロフェオ」のサウンドが意外とおとなしかったくらいだから、グレカーレ トロフェオのサウンドがそれより激しいはずもなく、同じくしっとりおとなしかった。上までブチ回しても、「トルルルル~」と心地よい快音が響く感じでした。

先日乗った「アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ エストレマ」と比べても、明らかにおとなしい。もうガウガウ咆えるのは時代遅れだ。マセラティみたいな貴族的なブランドはおとなしさで勝負だぜ! という卓見かもしれない。

アクセルを踏み込めば、快適に速い。サスは多少硬めだけど、トロフェオなのでしょうがない。ドライブモードを「COMFORT」に入れておけば、街なかでも特に問題はなかろう。

お値段は1711万円。意外と安いじゃないですか! だってほぼ同じエンジンを積むグラントゥーリズモ トロフェオは2746万円だもん! オレが買ったクアトロポルテの「スポーツGT」だって、新車時は1540万円したんだからね! それって18年も前ですよ! グレカーレ トロフェオ、頑張ってるネ!

続いてグレカーレの最廉価バージョン、「エッセンツァ」に試乗だ。お値段990万円!! 1000万円を切るマセラティの復活だ!

思えば今はなき先代「ギブリ」は、「1000万円を切るマセラティ!」ということで大ヒットした。あれから12年。諸物価高騰のなか、マセラティ ジャパンは、もう一度1000万円を切る価格で勝負に出たのだ。涙が出る。

試乗してみると、「これはこれでいいじゃないか!」と思いました。特にサウンドは、フツーに流してればトロフェオとボリュームが同じくらい。軽快かつスポーティーな音色を奏でる。

「グレカーレ トロフェオ」のバルクヘッド寄りに縦置きされるのは、「ネットゥーノ」と呼ばれる最高出力530PS、最大トルク620N・mの3リッターV6ツインターボエンジン。サウンドは心地よく、しっとりおとなしかった。
「グレカーレ トロフェオ」のバルクヘッド寄りに縦置きされるのは、「ネットゥーノ」と呼ばれる最高出力530PS、最大トルク620N・mの3リッターV6ツインターボエンジン。サウンドは心地よく、しっとりおとなしかった。拡大
「グレカーレ トロフェオ」の車両本体価格は1711万円。ほぼ同じエンジンを積む「グラントゥーリズモ トロフェオ」は2746万円だから、考えようによってはお買い得かもしれない。
「グレカーレ トロフェオ」の車両本体価格は1711万円。ほぼ同じエンジンを積む「グラントゥーリズモ トロフェオ」は2746万円だから、考えようによってはお買い得かもしれない。拡大
2025年8月に販売開始がアナウンスされた「グレカーレ」の新グレード「エッセンツァ」。レザー内装やシートヒーター、アンビエントライトなどは残しつつ、その他の装備を簡素化することで1000万円を切る価格を実現している。
2025年8月に販売開始がアナウンスされた「グレカーレ」の新グレード「エッセンツァ」。レザー内装やシートヒーター、アンビエントライトなどは残しつつ、その他の装備を簡素化することで1000万円を切る価格を実現している。拡大
1000万円を切るエントリーグレード「グレカーレ エッセンツァ」に試乗してみると、「これはこれでいいじゃないか!」と感じた。軽快かつスポーティーなサウンドは、「トロフェオ」と同じぐらいのボリュームであった。
1000万円を切るエントリーグレード「グレカーレ エッセンツァ」に試乗してみると、「これはこれでいいじゃないか!」と感じた。軽快かつスポーティーなサウンドは、「トロフェオ」と同じぐらいのボリュームであった。拡大

クアトロポルテも値上がりする?

上まで回すと、「あ、4気筒……」というフィーリングになるけど、SUVだし、そんなに回す機会なんてないじゃない。お値段が700万円以上安いのは魅力的!

ちなみにこちら、マイルドハイブリッド機構が組み合わされますが、スターター回をした時に「これ、モーターがデカいな」って思う以外、まったくハイブリッドを感じませんでした。

というわけで、どちらもそれなりに魅力的だったんだけど、従来の固定観念を持つ者としては、トロフェオもエッセンツォも、内装がぜんぜんエロくない点が気になった。

マセラティの内装といえば、これでもかっていうくらいエロすぎに仕上げられた本革&木目のイメージだ。プラス、レモン型のアナログ時計だよね? カーボンの内装とかやめてほしいよ! オレのクアトロポルテもスポーツGTなのでセンターコンソールがカーボンで、そこはぜんぜん気に入らないよ! あのコテコテの木目のほうがよかった~!

グレカーレのアッサリした内装も、「新世代のマセラティはコテコテのエロから撤退する」という宣言なのでしょうが、エロくないマセラティは欲しくないです。

報道によると、マセラティは現在のジリ貧状態を脱するため、まったく売れてないBEVモデルを順次やめてハイブリッド化を進め、今後はすべてのモデルを受注生産に切り替える方針だという。1540万円したクアトロポルテ スポーツGTが、たったの200万円で貧乏人に買われるような状況から脱するぞ! ということでしょう。

それでブランド価値が復活すれば、私のクアトロポルテも値上がりするかも!? んなワケねぇか……。

(文=清水草一/写真=清水草一、田村 弥/編集=櫻井健一)

「グレカーレ エッセンツァ」のエンジンルーム。最高出力300PS、最大トルク450N・mを発生する2リッター直4ターボエンジンと8段ATが組み合わされたパワートレインを搭載する。
「グレカーレ エッセンツァ」のエンジンルーム。最高出力300PS、最大トルク450N・mを発生する2リッター直4ターボエンジンと8段ATが組み合わされたパワートレインを搭載する。拡大
いまどきのデジタル風味が満載で先進的な「グレカーレ エッセンツァ」のインストゥルメントパネル。質感も高くオシャレである。しかしマセラティらしいかと聞かれれば、古くからのファンとしてはどこか物足りなくもある。
いまどきのデジタル風味が満載で先進的な「グレカーレ エッセンツァ」のインストゥルメントパネル。質感も高くオシャレである。しかしマセラティらしいかと聞かれれば、古くからのファンとしてはどこか物足りなくもある。拡大
愛車の大貴族号こと18年落ち「マセラティ・クアトロポルテ」のコックピット。「スポーツGT」はセンターコンソールがカーボンパネルになっているが、個人的にはコテコテの木目パネルのほうが好み。
愛車の大貴族号こと18年落ち「マセラティ・クアトロポルテ」のコックピット。「スポーツGT」はセンターコンソールがカーボンパネルになっているが、個人的にはコテコテの木目パネルのほうが好み。拡大
マセラティのブランド価値が復活すれば、私の「クアトロポルテ」も値上がりするかも……ということで、それを祈願してマセラティエンブレムのトライデント=三叉槍(さんさそう)を表現するポーズをキメてみた。
マセラティのブランド価値が復活すれば、私の「クアトロポルテ」も値上がりするかも……ということで、それを祈願してマセラティエンブレムのトライデント=三叉槍(さんさそう)を表現するポーズをキメてみた。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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