第158回:アルファ・ロメオ考2020
2020.01.14 カーマニア人間国宝への道アルファはカッコが命
今回は現在のアルファ・ロメオについて、いちカーマニアとして、中古車も含め深く考察してみたい。なにせイタ車好きですから。
現在、このブランドの新車ラインナップは、中高年カーマニアにとってなかなか微妙なものになっている。
「4C」や「4Cスパイダー」は、貧者のスーパーカーとしてすばらしい存在だが、あまりにも操縦性がコワイ。私が推測するに、あのヤバさは空力に原因がある。
100km/hを超えたくらいで、早くもリアのリフトを感じるのです。そういう空力がヤバいクルマに関しては、「フェラーリ360モデナ」で5年間カイゼンに試行錯誤したのでセンサーがビンカンなのだ。
それはそれで危険な魅力だが、怖すぎて57歳にはキツイ。若い人にオススメしたい。つっても4Cの新車買うカネがあれば中古の360モデナが買えるので、そっちをプッシュしたくなってしまう。
「ジュリア」は大変に官能的なセダンだ。特に「クアドリフォリオ」は完全に4ドアのフェラーリである。2.9リッターV6ターボはすさまじいばかりにエロティックに回る。ステアリングはビンカンすぎてこぶし1個ぶん切るだけで横っ飛びする。本当にスバラシイのだが、なにせお値段が張る。1153万円ですから。
2リッターターボや2.2リッターディーゼルターボモデルも、乗り味ははっきりラテンでドイツ車とは違った魅力があるが、フォルムがあまりにも「BMW 3シリーズ」。お値段も3シリーズとほぼ同じ。中古価格もほぼ拮抗(きっこう)。そうなると、人間弱いもので、メジャーな3シリーズに流れてしまう。やっぱアルファはカッコが命だから、横から見たらBMWと見分けが難しいってのは痛い。
中古車は価格の安さも重要
「ジュリエッタ」はほぼ死に体だ。最初から走りにイタリアっぽさが薄くてグッと来るものがなかったが、やっぱり売れ行き不振で今や「ヴェローチェ」のワングレードのみ。イタ車好きとしては考慮外である。
「ステルヴィオ」も考慮外。なんせ足がガチガチなので。SUVなら乗り心地はソフトなほうが好みでして。まだSUV買ったことないけど。
というわけで、アルファ・ロメオの現行モデルにはいいクルマもあるが、欲しい! 買うぞ! となるには、もう一押しが足りない。
では旧モデルの中古車はどうか。かつて胸を躍らせた「アルファGT」や「GTV」、あるいは「156」その他もろもろ、今でも検索するだけでワクワクする。
が、現実は厳しい。それら90年代から00年代にかけてのモデルたちは、すでに多くが廃車になり、生き残っているタマたちは、希少ゆえか価格が上昇。これまた買うには微妙な存在になっている。
かつては真剣に「いつか絶対買うぞ!」と決めていた「アルファGT」。ベルトーネデザインの2ドアハッチバックボディーはコロンと丸いのに妖艶(ようえん)で、後席スペースも驚くほどゆったり。実用的に使えるすばらしいクーペだった。
中でも私が萌(も)えたのは、官能的な3.2リッターV6エンジン搭載モデル(6MT)だが、現在市場にあるのは、大部分が後期型の「2.0JTSセレスピード」だ。JTS+セレってのはイタ車マニアとしてはかなり萎(な)える。ところが3.2リッターV6モデルは100万円をラクに超え、流通台数も全国で数えるほどしかない。無念。
GTVは流通している中古車の大部分がV6だが、お値段はやっぱり3ケタ万円前後。20年落ちに近いアルファ・ロメオに100万円以上出すのは、かなり勇気が要る。アルファの中古車は安くなくちゃ意味がない(私見)!
気軽に買えるモデルはある!?
では「156」はどうか。
アルファ156は、ワルター・デ・シルヴァがデザインした官能的なフォルムの4ドアセダン&スポーツワゴンで、90年代後半、アルファ・ロメオ復活の立役者となった。一瞬の夏でしたが。
ただ、後期型はジウジアーロデザインで顔が納得いかないので、狙いは前期型のMTモデルだ。
すると、「これなら……」と思える個体は、やっぱり3ケタ超えるんだよね。いっそのこと「GTA」! と思うと200万円近くになる。もはや高嶺(たかね)のネオクラシックです。買ってからの覚悟も必要だろうし、気軽に買えるタマじゃない。
「155」や「145」となると、さすがに中古車が絶滅寸前。155は私もかつて新車で買ったし、DTMチャンピオンのイメージのおかげで根強いファンがいるが、20歳オーバーだけに、実物を見に行くと塗装がハゲハゲだったりしてガックリくる。この世代のイタリア車が、青空駐車で20年塗装が持つはずないですね。
こうなると、残るは「147」だけだ。
01年、アルファ147が登場した時の印象は、「ドイツ車みたい!」だった。ボディーがめちゃめちゃしっかりして安心感満点。ツインスパークエンジンも、155時代と比べるとインテークが樹脂製になり心地よい吸気音が聞こえなくなっていたので、トータルで見るととってもフツーのクルマになっちゃったと思ったものの、そのフツーさゆえか中古価格は早い時期から下落。コスパが急上昇したのでした。
私も10年前、68万円で2リッターツインスパークの5MTモデルを買いました。当時、8年落ちで68万円というのは、気軽に薄味のイタリア車が楽しめるというバランス感が絶妙で、たまたま取材に行ったお店でその場で買ってしまったのです。
その後147の相場はさらに下落。一時は30万円以下で買える5MT車がゴロゴロしていたが、時の流れは残酷で、10年間で激減。今見たら、30万円以下の前期型5MT車(後期型はジウジアーロ顔なので除外)は、全国でたったの2台になっていた。われらカーマニアが買うべきアルファ・ロメオはいずこにあるか、再考せねばなるまい……。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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