いくらなんでも多すぎる! マツダのSUVラインナップはどうなっている?
2024.03.07 デイリーコラム増えに増えて10車種以上
数字ばかりで、ようわからん!
マツダのSUVの車名のことだ。そもそも同社は、SUV以外の車種も「マツダ2」「マツダ3」そして「マツダ6」と名前が数字でわかりにくいけれど、それらは3車種しかないからまだいい。
でも車名に“CX”がつくSUVになると、「CX-3」に始まり(海外向けも含めて)「CX-30」「CX-4」「CX-5」「CX-50」「CX-60」「CX-7」「CX-70」「CX-8」「CX-80」「CX-9」そして「CX-90」と、たくさんありすぎて混乱気味。ここだけの話、書いている筆者ですらわけがわからなくなってくる。
そのなかで、現時点において国内展開されているのは、CX-3とCX-30、CX-5、CX-60の4モデルで、そう遠くないうちにCX-80が追加される予定。気がつけば、マツダのSUVのラインナップはかなり多いのだ。
いっぽう海外だけで展開しているのはCX-4にCX-50、CX-70、CX-9、そしてCX-90。CX-7とCX-8は、今はお休み中だ(復活するかは知らんけど)。
というわけで、まずはお休み中のモデルも含めて、どんなクルマなのか軽く紹介していこう。
このうち最もコンパクトなのがCX-3だが、荷室があまり広くない。ひと回り車体が大きく積載性がプラスされているのがCX-30だ。CX-4は中国専用車で、CX-5のクーペ版といったところだ。CX-5は国内においても国外においてもマツダの主力となっているSUVで、マツダのSUVの中心。それよりもわずかだけ大きな、北米&中国向けモデルがCX-50で、ワイド&ローのフォルムがカッコいい。プラットフォームはCX-30と同じだがトヨタ製のシステムを組み込んだハイブリッドを用意しているのもトピックになっている。
CX-60は日本でも何かと話題のFRシャシーを持つモデルだが、数字が大きなCX-7はすでに販売を終了したFFの大型モデル。CX-70は北米向けに展開される“CX-60のお兄さん”で、いっぽうCX-80は“CX-60のロング仕様”ともいえる3列シート車だ。CX-8は2023年末まで生産されていた“CX-5のロングな3列版”で、そのボディー拡大版がCX-9。そして北米メインのCX-90は“CX-70を3列化したモデル”となっている。一気にまくしたてたが、なんとなく理解していただけただろうか。さすがに書くほうも息が切れそうだ。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
「5」だけが例外
実はそんな名前のつけ方にも法則性があって、基本的には「右側の数字が大きいほど車体が大きくなり、クラスが上がっていき」「同じ数字でも1桁と2桁とがある場合、2桁のほうがサイズが大きくて上位となる」。CX-3よりはCX-5のほうが車体も大きくてクラスも上だし、CX-3よりもCX-30のほうが大きくて上のクラスだ。そして、CX-30よりCX-5のほうが上位となる。
ただし、ちょっとややこしいのは、「CX-70よりもCX-80のほうが(未発表だがおそらく)車体が小さい」などの例外もあること。法則はあくまで“原則”であって、絶対的なものではないことは、心得ておこう。
数字なんてわからない? そういう気持ちもわからなくないが、「1シリーズ」に始まり「2」「3」「4」「5」「6」「7」そして「8(シリーズ)」まであるBMWや、「Q2」「Q3」「Q4」「Q5」「Q6」「Q7」「Q8」をそろえるアウディなんていうブランドも海外にはある。それらには「わかりにくい」という声があまりないから、「マツダのSUVの車名がわかりにくい」というのは、おそらく気分的な問題だろう。あと数年もすれば、きっと慣れるはずだ。
とはいえマツダの場合は1桁と2桁が混在するので、それだけはわかりにくいと感じさせる要素かもしれない。まあ、そのうち「すべてが2桁」に整理されるんじゃないか……と筆者は思うけれど。
ただ、1桁モデルのなかでCX-5だけはどうにもならない(2桁化が難しい)ような気配になってきた。CX-5はマツダの販売台数の半分を占めるほどの人気車種だったが、北米ではCX-50へバトンを渡し、日本などではCX-60にポジションを譲ってフルモデルチェンジされることなくフェードアウトする見込みだった……と思われる。
しかし、CX-50やCX-60の販売が始まってもCX-5の勢いはさほど衰えず、逆にマツダ内でも「CX-5がなくなったら困るんじゃないの?」という空気に。そんな背景もあってどうやらフェードアウトの方向から一転して次世代のCX-5もありそうな雰囲気になってきたが、車名が難しい。本来であれば“2桁車名”でいきたいところだが、CX-50の枠は埋まってしまったし、名前が浸透しているので例外的にCX-5という1桁車名が継承される可能性もある。きっとマツダも、頭を抱えていることだろう。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
売れるのにはワケがある
では、これほど多い「CX-〇」のなかで、どれが誰に向いているのか? 総合的にオイシイ車種はどれなのだろうか? 「どれか1台」といわれたら元CX-5オーナーで現CX-60オーナーでもある筆者のイチオシはCX-5だ。
なぜかといえば、すべてにおいてバランスがいいから。例えば「CX-30ならリーズナブル」かと思いきや、装備表や価格とにらめっこしてみると「バランスで考えたらCX-5のほうがお買い得では?」と思えるし、いっぽう車体はひと回り大きなCX-60と比べても、室内や荷室の広さではCX-5とほとんど変わらなかったりする。そう考えると、CX-5ってやっぱりスゴい。CX-5が今なおベストセラーとなっている理由は、しっかりあるというわけだ。
もちろん、「車体がコンパクトなほうがいい」というのであればCX-3やCX-30を選べばいいし、インテリアの上質さに加えて後輪駆動、さらには6気筒エンジンというキーワードでクルマ好きを魅了するCX-60もそれはそれで魅力的。つまり、CX-5を軸にサイズや好みに応じて選ぶというのが、マツダのSUV選びのセオリーといっていいだろう。
最後に、マツダ車に詳しい人なら気になるであろう「スモール」と「ラージ」の分類について。マツダは今、車体構造の違いから車種をFFプラットフォームベースの「スモール商品群」とFRベースの「ラージ商品群」に分けているが、日本向け車種でいえばCX-30がスモールで、CX-60ともうすぐ登場予定のCX-80がラージ。CX-3とCX-5はスモール/ラージの概念が生まれるより前に登場しているので「どっちにも属さない」が正解だ。
ちなみにこれは筆者の勝手な予測だが、もしプラットフォームを刷新して次期CX-5がつくられるとしたら、スモールに属するのではないかと考えている。現行CX-5よりも車体が大きな北米向けのCX-50がスモールだから、次のCX-5がスモールになったとしても、不思議はないのだ。
(文=工藤貴宏/写真=マツダ/編集=関 顕也)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか? 2025.10.10 満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。
-
NEW
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】
2025.10.18試乗記「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。 -
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。