第286回:極上の卵かけご飯定食
2024.06.17 カーマニア人間国宝への道上質で落ち着きがあって心地いい
やっと新型「アコード」に試乗できました。
私は2023年10月、『いよいよ“セダンの時代”がやってくる!? 2024年春発売の新型「ホンダ・アコード」に注目せよ!』(参照)なる記事を書き、アコードの発売を心待ちにしていた。
アコードは今年3月から国内販売が始まり、5月にはさっそく416台という驚異的な売れ行きを見せて、販売ランキング49位に食い込んだ。前年同月比なんと1600%! ディーラー向けの試乗車や展示車も入っているんでしょうけど、アコード、思ったより売れるんじゃないだろうか(希望的観測)……。
実物のアコードは、写真よりさらにカッコよかった。奇跡的なカッコよさといってもいい。セダンなのに、ものすごく自然体にカッコいいからである。
近年セダンは全世界で売れ行きが鈍化し、特殊化と高級化が進んでいる。特殊で高級なので、見た目はつい派手になる。
ところがアコードは、どこにも派手さがない。ものすごくスタンダードで定番っぽいのに、ものすごくカッコいいのだ。ファストバックスタイルを採用している点は今どきっぽいけれど、それ以外はウルトラオーソドックス。特に顔のオーソドックスさに涙が出る。今どきこんなけれん味のない、卵かけごはん定食みたいな顔のセダンって、世界中探してもないっしょ? だから逆にすごく響くんだよね……。
インテリアがまた極上の卵かけごはん定食。これ見よがしにゴージャスな部分は見当たらないけど、全体に上質で落ち着きがあって心地いい。
F1サウンドがよりクリアに聞こえる
アコードのスタイリングは、現在の私の愛車“ちょいワル特急”こと「プジョー508」にかなり近い。実際横に並べてみたら、全長が多少違う以外、フォルムはクリソツだった。
ただ、細部は異なる。508は顔の頰ひげ(デイライムランニングランプ)やサイドの掘り込みなど、今どきっぽいスタイリッシュなアクセントがちりばめられているが、アコードにそういうものはない。グリルは踏ん張りの効いた六角形で、ヘッドランプはシャープなつり目。サイドには水平のラインが1本だけ。それらはすべてシンプルな直線基調で、これ見よがしな意匠はゼロだ。斜め後ろから見ると、一世代前のアウディの「スポーツバック」系に近いけれど、もっとすがすがしい。この誰の反感も買わないカッコ良さが、カーマニアの心を打つ。
「いや~、カッコいいなーアコード」
そうつぶやきながら首都高に出撃した。
パワートレインは大好きな「シビックe:HEV」とほぼ同じだが、モーターが多少トルクアップしているので、重量増加をちょうど相殺し、気持ちよく加速する。アクセルを深めに踏み込めば、お約束のホンダF1サウンドがさく裂! シビックより静粛性が高いので、F1サウンドがよりクリアに聞こえるぜ……。涙。スポーツモードにすると、エンブレ(回生ブレーキ)がEVっぽく強めになってラクチン。ノーマルモードではパドル操作で同じことができる。気持ちイイ~!
足まわりの感触もイイ。特に乗り心地がいいわけでもなく、特にスポーティーなわけでもないが、ひたすら自然にイイ。コーナリングで車両の挙動をコントロールする「モーションマネジメントシステム」が導入されているというが、全然自然で効果はサッパリわからない。さすが卵かけご飯定食。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
次はアコードを迎え入れよう!
ふと見れば、前を走るのはモテないカーマニアカー「GRヤリス」だ。アコードとはまるっきり共通点のないクルマだけど、不思議な共感を覚える。それはつまり「あなたも私もカーマニア!」という共感だ。アコードは、北米では最も中庸で平凡なセダンなんだろうけど、ここ日本では、間違いなくカーマニア御用達だから!
逆に、ドイツ御三家のセダン系に対しては、微妙な優越感を覚える。それはつまり「あなたは一般ピープル、私はカーマニア」という優越感だ。ドイツ御三家の良さなんて誰だって知っているけど、アコードの良さを知っているのはカーマニアだけ。値段は向こうのほうが高いんだろうけど、「ムダ金使ってらぁ」って感じだぜ!
いつの間にか私のココロは、アコードと一体化していた。私=アコード。そんな感じだ。ひょっとしてこのクルマ、自分のためにつくられたのではないだろうか。
首都高を気持ちよく流して、一部アクセル全開も試して、燃費計の数値は19.7km/リッターと出た。スバラシイ。先日試乗して感動したスイフト(18.6km/リッター)に勝った! 低燃費が大好きな私のどストライクである。
心は決まった。次の愛車候補はアコードだ。プジョー508には一生乗るつもりだけど、私より先に508が逝った場合はアコードを迎えよう。決心するだけならタダだから!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
第338回:古臭いほどイイに決まってる 2026.6.22 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジを受けた最新の「シボレー・コルベットZ06」を夜の首都高に連れ出した。アメリカを代表するミドシップスーパーカーのステアリングを握ったフェラーリオーナーの印象やいかに。
-
第337回:「ルーチェ」に比べればタダ同然 2026.6.8 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで3代目に進化した「日産リーフ」を夜の首都高に連れ出した。「非常に良くなった」「静かで快適」といった評判を耳にする量販・量産BEVのパイオニアに、カーマニアは何を感じた?
-
第336回:やっぱり絶交! 2026.5.25 清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?
-
第335回:水平尾翼が効いてるのかな 2026.5.11 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで2代目となった「シトロエンC5エアクロス」で、夜の首都高に出撃した。最新のデザイン言語を用いて進化した内外装とマイルドハイブリッドの走りに、元シトロエンオーナーは何を感じた?
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。








































