「レクサスLX700h」にも新型を搭載 トヨタは何タイプのハイブリッドをそろえているのか
2025.04.16 デイリーコラム生きて帰ってこられる電動車
2024年10月10日に国内で発表され、2025年3月6日に発売された「レクサスLX700h」は、「レクサス初となる新ハイブリッドシステムを搭載」という触れ込みで登場した。パワートレインの名称は「3.5リッターV6ツインターボハイブリッドシステム」である。
レクサスには「LX600」という3.5リッターV6ツインターボエンジン(V35A-FTS)と10段ATを搭載した仕様が存在する。LX700hは10段ATの前側にクラッチとモーター(最高出力40kW、最大トルク290N・m)を付加した格好。縦置きハイブリッドトランスミッションを構成する要素は、前から順にエンジン~クラッチ~モーター~トルクコンバーター~変速機構となる。
ハイブリッドシステムの種別としては「1モーターパラレル式」で、クラッチを切り離すとモーター単独によるEV走行が可能。減速時はモーターを使った回生(発電)ができる。また、クラッチをつないだ場合は、エンジン単独(モーターは連れ回す)、あるいはエンジンにモーターのトルクを上乗せするハイブリッドモードとして走行できる。
実は縦置き10段ATにクラッチとモーターを付加した1モーターパラレル式のハイブリッドトランスミッションはすでに存在し、「トヨタ・タンドラ」に適用済みだ。タンドラのようなピックアップトラックは悪路走破性の高さが求められるし、トーイング要求もある。つまり、極低速域で大きなトルクが長時間必要。この要求に応えるために、モーターにトルコンのトルク増幅機能を加える方式を選択したというわけ。
トヨタブランドでは前例があるが、レクサスブランドでは「初」適用である。さらに、従来のレクサスのパラレルハイブリッド車には搭載されないオルタネーターとスターターを標準装備。万が一ハイブリッドシステムが失陥した場合でも、スターターでエンジンを始動することが可能。さらに、オルタネーターで発電した電力を12V補機バッテリーに供給することで、エンジンのみで走行を続けることができる。この機能も「レクサス初」である。
LX700hのハイブリッドシステムは荷室床下に搭載する走行用バッテリー(ニッケル水素。容量約1.8kWh)とトランスミッション後方に搭載するACインバーターを防水トレイでパッキング。車内に水が浸入するような渡河シーンでも、ガソリンエンジン車と同様の渡河性能(700mm)を確保している。「生きて帰ってこられる電動車」とするためだ。
用途に合わせた多彩なラインナップ
さて、トヨタ/レクサスが展開するハイブリッドパワートレインの王道は、「プリウス」などが搭載する2モーター・シリーズパラレル式である。この横置きハイブリッドパワートレインはかつて「THS」と呼ばれていたが、現在は固有の名称を用いていない。システムの一般名称である「シリーズパラレルハイブリッド」と呼ばれている。
1997年の初代プリウスで初めて適用されたシステムで、動力分割機構を用いてエンジンと発電用(MG1)、走行用(MG2)のモーターをさまざまな走行シーンで最適かつ高効率に制御するのが特徴。第4世代まではプリウスのモデルチェンジに合わせて世代交代が行われたが、第5世代は2022年にモデルチェンジした「ノア/ヴォクシー」で初投入され、同じ年ではあったが遅れて5代目プリウスに投入された。
横置きのシリーズパラレルハイブリッドを縦置きに組み替えたうえで、ATで用いる4段の変速機構(プラネタリーギア+締結要素)を加え、モーター側の変速制御と合わせて10段の変速制御を実現したのが、「トヨタ・クラウン セダン」や「レクサスLS」などに設定される「マルチステージハイブリッドシステム」である。低車速域での駆動力を高められるのが、このシステムの特徴のひとつだ。
横置きでは、2022年の「クラウン クロスオーバー」から適用が始まった「デュアルブーストハイブリッド」が新しい。1モーターパラレル式で、上流から順にエンジン~クラッチ~モーター~6段ATの変速機構が並んでいる。燃費よりも走りに軸足を置いたシステムで、2.4リッター過給エンジン(T24A-FTS)との組み合わせ。システム最高出力は257kW(349PS)。リアにもモーターを搭載しており、ターボのブーストと前後モーターがもたらすブーストを提供するので「デュアルブースト」というわけだ。
トヨタ/レクサスには燃費と走りを両立しつつもどちらかというと燃費に振ったTHSに起源を持つハイブリッドシステムを軸に、パワートレインのレイアウトやクルマのキャラクターに合わせたバリエーションをそろえている。レクサスLX700hが搭載するのは、過酷な使われ方に対応したシステムといえるだろう。
(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

世良 耕太
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。 -
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起
2025.9.15デイリーコラムスズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。 -
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】
2025.9.15試乗記フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(後編)
2025.9.14ミスター・スバル 辰己英治の目利き万能ハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフ」をベースに、4WDと高出力ターボエンジンで走りを徹底的に磨いた「ゴルフR」。そんな夢のようなクルマに欠けているものとは何か? ミスター・スバルこと辰己英治が感じた「期待とのズレ」とは? -
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2025.9.13試乗記「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。