レクサスGX550“バージョンL”(4WD/10AT)
兄弟きってのスマート派 2025.07.19 試乗記 レクサスの本格クロスカントリーモデル「GX」。3代目となる新型が、ようやく日本でも大々的に発売となった。その走りは、ラダーフレームの「GA-F」プラットフォームを共用する「トヨタ・ランドクルーザー“250”」などと、どうちがうのか? 試乗して確かめた。ひとつのプラットフォームを4台で共用
レクサスGXは日本では今回が初登場だが、グローバルでは以前からおなじみのレクサスである。その初代は2002年、2代目は2009年にデビューしており、北米市場や豪州市場を皮切りに、2代目のモデル末期までには、中国、ロシア、中米、中東、カザフスタン、アゼルバイジャン、東南アジアなどにまで販路を広げた。
歴代GXは、プラットフォームをはじめとした基本設計を同世代の「トヨタ・ランドクルーザー プラド」(以下、ランクル プラド)と共有。実際はプラットフォームだけでなく、内外装の基本デザインも両車共通で、GXを“ランクル プラドのレクサス版”と理解してきた好事家も多い。
そのランクル プラドは、2024年4月に事実上の後継機種であるランドクルーザー“250”(以下、ランクル250)にバトンタッチとなり、ほぼ同時期に3代目=新型GXの国内先行限定車も登場した(参照)。となれば、新型GXも“ランクル250のレクサス版”と定義されるのが自然だろう。
実際、新型GXも以前のランクル プラドと同様に、独立ラダーフレーム形式の「GA-F」プラットフォームをランクル250と共有している。内外装はそれぞれ専用デザインとなったが、エッジをきかせたエクステリアデザインは、フロントマスクとホイール以外ほぼ共通といっていい。
ただし、従来のランクル プラドとGXの関係性と、今のランクル250と新型GXの関係性で大きくちがうのは、その土台となるGA-Fが、上級モデルの「ランドクルーザー」(以下、ランクル300)や「レクサスLX」にも使われていることだ。しかもホイールベースも全車で共通の値となっている。先代までのGXやランクル プラドは、LXやランクルとはプラットフォームは別物だったのだ。
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じつは「250」より「300」に近い?
新型GXにランクル250、LX、ランクル300の4台は、土台となるGA-Fを2850mmというホイールベースも含めて共有しながら、細かなメカニズムの組み合わせは各車で差別化される。GXはパワーステアリングが電動式、サスペンション構成はコイルスプリング+電子制御ダンパー、パワートレインがひとまず3.4リッターV6ガソリンターボ+10段ATである。
そんなGXとメカニズムの組み合わせでいちばん共通点が多いのは、ランクル250ではなく、じつはランクル300だったりする。ランクル250はダンパーが固定減衰、パワトレも2.7リッターガソリンないし2.8リッターディーゼルターボの4気筒+6/8段ATとなっている。いっぽう、ランクル300は油圧+電動のパワステがGXと異なるだけで、サスペンション構成やトランスミッションはGXと共通。ガソリン車ならエンジンも一緒である。また、一部グレードに標準装備となるスタビライザー解除機能も、GXのそれはランクル300と同じ「E-KDSS」だ。
もっというと、今回試乗したGX550“バージョンL”で4960mm(試乗車はトーイングヒッチ付きだったので5015mm)という全長も、ランクル250とランクル300の中間地点というより、どちらかというと300に近い……。となると“ランクル250のレクサス版”という定義も微妙になってくるのだが、いずれにしても、レクサスのラダーフレーム式SUVのエントリー機種という位置づけは従来と変わりない。
完全な専用デザインとなったGXのインテリアは、さすがレクサスらしい高級感をただよわせる。ダッシュボードが分厚いソフトパッドで覆われるほか、ドアトリムはもちろん、グローブボックスリッドまでソフトパッドなのは感心する。12.3インチのフル液晶メーターパネルはランクル250の上級グレードにも設定されるが、14インチという巨大センターディスプレイはランクル系には用意のない装備である。
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あらためて感じる3.4リッターV6ターボのよさ
海外では2.4リッター直4ターボのハイブリッドも市場投入されはじめたGXだが、国内向けは、今のところ3.4リッターV6ターボのみ。ただ、グレードは“オーバートレイル+”と今回試乗した“バージョンL”の2種類があり、前者はE-KDSSに「マルチテレインセレクト」「ヒルダウンアシストコントロール/クロールコントロール」「リアディファレンシャルロック」などの悪路走破機能を充実させたタフ系グレード。後者はこれらが省かれるかわりに、サードシートやセミアニリン本革シート表皮、オート電動格納サイドステップが備わる豪華グレードとなる。タイヤサイズはオーバートレイル+が65偏平の18インチ、バージョンLが50偏平の22インチである。
最初に出たランクル300からLX、そしてランクル250と、ひととおりの試乗経験をもつ身としては、GXの乗り味にも、それらと色濃い血縁関係を感じ取らざるをえない。
と同時に、今回は3.4リッターV6ターボエンジンの魅力を再認識もさせられた。ここぞというときに頼れるパワーに加えて、過給ラグも極小でスロットルレスポンスはリニアそのもの。街乗りから悪路までの総合的な柔軟性や扱いやすさは、ランクル250の2.8リッターディーゼルはもちろん、ランクル300の3.3リッターV6ディーゼルより好印象だ。唯一の欠点は燃費だろう。
また、GXにはランクル300やLX同様の「アクティブノイズコントロール」が備わっていて、エンジンの静粛性も文句なし。さらにドライブモードが「スポーツS」もしくは「スポーツS+」のときにエンジン音を強調してくれる「エンジンサウンドエンハンスト」という、現時点ではGXだけの装備も加わる。これはまあ完全なギミック機能ではあるが、こうした心理的な演出は、パワートレイン全体の一体感の向上にも意外に効果的なのである。
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このお値段も中身を思えば高くない?
乗り心地や操縦性については、開発時期がランクル250と同等に新しく、しかも各部により高度なメカニズムを搭載するGXが、GA-Fプラットフォームのなかでは、ある意味でもっとも洗練されているかもしれない。
整備された舗装路なら、乗り心地はとても滑らかだし、リアリジッド特有のクセも目立たない。電動パワステも軽くて正確でおさまりよく、接地感を含めたフィードバック精度にも不足はない。これと比較すると、耐久性・信頼性にこだわって油圧式をメインとするランクル300の操舵感は古く感じてしまう。
ダンパー制御がソフト気味になる「コンフォート」や「ノーマル」といったドライブモードだと、ときに上屋の揺れが気になるが、それも「スポーツS」にすると落ち着く。するとエンジンも活発になって、走りにメリハリがつく。「スポーツS+」ではロールがさらに減る。
そんなGXも、4本のタイヤがバラバラに蹴り上げられるような凹凸の激しい路面に遭遇すると、クルマ全体がユサユサと揺すられるリジッドのクセが隠せなくなるのは否定できない。これまでの経験上でも、このシャシーに50偏平の22インチはちょっと過剰と思われ、次はより穏やかなタイヤサイズとなるオーバートレイル+を試してみたいところだ。これも経験上、オフロードだけでなく通常のオンロードでも、18インチのほうがいい感じにまとまっている可能性が高いと思う。
というわけで、これでレクサス/トヨタの、GA-Fを土台とした上級オフロード系SUVがひとまず出そろった。1270万円という試乗車の本体価格は安くはないが、パノラマルーフとマークレビンソンの上級オーディオが不要というなら、追加すべきオプションもとくにない。ランクル250の最上級グレード「ZX」の本体価格を妥当とするなら、各部メカニズムの内容や内外装調度の質感を考えると、その約7割増しのGXの価格はわりとリーズナブルな気もする。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
レクサスGX550“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5015×1980×1920mm
ホイールベース:2850mm
車重:2530kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:353PS(260kW)/4800-5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/50R22 109V M+S/(後)265/50R22 109V M+S(ダンロップ・グラントレックH/T31)
燃費:8.1km/リッター(WLTCモード)
価格:1270万円/テスト車=1339万4100円
オプション装備:トーイングヒッチ<ウェイトディストリビューションタイプ、カバー付き>(7万7000円)/ドライブレコーダー<前後方>(4万2900円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/デジタルキー(3万3000円)/パノラマルーフ<電装サンシェード・UVカット機能・挟み込み防止機能・調光機能付き>(15万4000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(24万0900円) ※以下、販売店オプション 盗難防止セット セットB<ホイールロックナット、ハンドルロック、カーロック>(10万2300円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1284km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:418.3km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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