第326回:三つ子の魂中高年まで
2026.01.05 カーマニア人間国宝への道カーブを気持ちよく曲がれば十分
カーマニアの皆さま、新年あけましておめでとうございます。2025年の漢字は「熊」でしたが、今年は「車」にしたいですね! それが新年の抱負!
2025年登場したクルマを思い起こすと、結局一番インパクトがあったのは、新型「プレリュード」じゃないだろうか(中高年限定)。オレはフェラーリ持ってるから買わないけど、一番ココロに刺さったのはプレリュード! だってデートカー世代だから!
年末、もう一度プレリュードに乗る機会があったので、お世話になってる中古フェラーリ屋さん「コーナーストーンズ」に乗りつけてみた。
道中、東名高速でのプレリュードは、やっぱり最高にステキだった。ホントのホントに滑るように走る! メッチャ乗り心地がよくて十分スポーティー! コーナリングも素晴らしい。東名にはあんまりカーブはないけれど、わざわざ箱根に行くこともなくなったし、ゆるーいカーブを気持ちよく曲がればそれで十分だ。
「S+」モードでアクセルを床まで踏み込めば、「クワァァァァ~ン」というホンダレーシングサウンドが車内に響く。もちろん、オレの愛車“黒まむしスッポン丸”こと「フェラーリ328GTS」のキダスペシャルのほうが100倍すごい音がするけど、もう年だし、これくらいの刺激がちょうどいいんだよね。プレリュード最高!
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プレリュードという名前は地球より重い
そんな感じで店に乗りつけたら、エノテン(コーナーストーンズ代表・榎本 修氏)が店内から飛び出してきた。
エノテン:清水先生、これ、プレリュードですか!?
オレ:そう。知ってるの?
エノテン:ええまあウフフ~。
エノテンは今の国産車にはまったく興味がない人で、フェラーリとランボルギーニ、あとベンツとBMWのすごいヤツ(足グルマ)あたり以外は、ほぼ何も知らない。なのにプレリュードにはこの反応だからこっちがビックリした。
と思ったら、店内にいたお客さんたち(中高年フェラーリオーナー軍団)も、ゾロゾロ出てきてクルマのまわりに集まり、「おおー」「初めて見た」などと言いながらかぶりついてる。みんな、どんなスーパーカーで乗りつけたって、こんなに反応しないだろ!
オレ:プレリュード、すごい人気だな。店長、ホントに新型知ってたの?
エノテン:いえ、実はぜんぜん知らなかったんですけど、お客さんが「プレリュードだ!」って言ったんで、思わず飛び出してきたんです。
オレ:そっか。昔のプレリュードは好きだったのね。
エノテン:ええ。ホンダファンですから。
エノテンは若かりし頃、愛車の初代「トヨタMR2」を「これはフェラーリだ」と自分に言い聞かせてコーナーを攻め、鈴鹿で中嶋 悟を全力応援していた男だ。そんなバブル世代にとって、プレリュードという名前は地球より重い。たとえ新型のカタチは知らなくても。
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心の中はスーパーカー少年のまま
エノテンの反応が面白かったので、助手席に乗せてそこらを一周することにした。
オレ:S+モードで全開にすると、ホンダF1みたいな音がするんだよ!
エノテンは「そうですか!」と言って窓を開けた。
オレ:ダメだよ、窓開けちゃ聞こえないよ。スピーカーから出る音だから。
エノテン:え?
私はプレリュードの人工エンジンサウンドやコーナリングの素晴らしさを説明しつつ走ったが、どうもあまりピンときてない様子だった。
エノテン:シフトアップはすごくスムーズで速いですね。DCTですか?
オレ:いや、これは疑似ステップ変速だよ。
エノテン:……???
オレ:ホントは変速なんかしてないよ。そもそもギアがないし。これはモーターで走ってるんだよ。
そう説明しても、ホンダの「e:HEV」のことを何も知らないエノテンは、何のことかまったくわからない様子だった。
オレ:とにかく新型プレリュードは素晴らしいんだよ!
エノテン:そうですか。なんかゲームみたいですけど、ここまでいくと素晴らしくなるんですね!
オレ:そう。一回転してるんだよ!
コーナーストーンズは、「F1マチック」やDCTクソクラエ! とばかりに、MTのフェラーリを中心に扱っている。常連のお客さんたちも、MTのフェラーリ愛好者が多い。みんな、心の中はスーパーカー少年のままだ。
そんな彼らにはたぶん、このクルマの素晴らしさを心から理解するのは不可能だろう。でも、プレリュードという名前だけで、全員激しく目を輝かせた。それだけで胸がアツくなった。三つ子の魂中高年まで。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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