第186回:コロナバブル恐るべし
2020.07.28 カーマニア人間国宝への道コロナ禍で中古ポルシェ暴落!?
先日、“おっさんポルシェ”こと996型「911」(ティプトロニックS)のオーナー・S氏に再会した。彼のおっさんポルシェは、白いボディーに雨ジミを付着させつつ健在だったが、ヘッドライトの黄ばみはずいぶん悪化しているようだった。
S氏:そうなんですよ~。一度黄ばんじゃうと、消してもまたすぐ戻っちゃうみたいで。
今年初めに見たときは結構きれいだったのに、なんて短い命だろう。人間のシワ取り整形より短命なのか。消し方にもよるんでしょうが。
S氏はこのおっさんポルシェ(走行6万km台)を、約2年前に300万円弱で買ったそうだが、現在の相場を見ると、250万円くらい。新型コロナにも負けず、相場は維持されている。996型911は底値に達していて、これ以上下がりようがないということかもしれない。
一方、996型の次の997前期型911に関しては、新型コロナの影響で(?)、相場が暴落した。それまで中古のポルシェ911といえば、996型を除くとほぼすべて500万円以上という感覚だったのに、997前期型がいきなり約200万円も下がって、最安200万円台後半に突入したのだ。それが6月のことである。
現在はというと、200万円台の997型はほぼ消滅しているが(売り切れ?)、それでも300万円台前半の個体はポツポツある。つまり、997前期型の911は、確かにピンポイントで暴落したらしい。いったいナゼ?
マニアック車人気は健在
理由を考えてみたのだが、4月の緊急事態宣言以来、「オークション会場から外国人バイヤーが消えた」という情報があり、それが原因かも! と思い当たった。
つまり、997前期型は、これまで外国人が輸出用に買い支えていたが、その外国人がいなくなって一気に暴落したのかも……ということだ。
996型と997前期型に関しては、インターミディエイトシャフトが折れるという、いわゆる「インタミ問題」等が存在し、国内では人気がない。発生する可能性は極めて低いトラブルのような気がするが、なにせドイツ車は完全であってこそですから!
そのあたりについて、知り合いの中古車業者さんに聞いてみた。
業者さん:確かに一時、オークション会場から外国人バイヤーは消えました。でも今はもうアジア系を中心にたくさんいますよ。彼らは帰国したわけじゃなく、ただ商売にならないからオークション会場に来てなかったんじゃないかな。そもそも4~5月は、日本人バイヤーも激減してましたしね。
私:中古車相場が全体に下落したともいわれてますけど、どうですか?
業者さん:うーん、新車が売れてないので、中古車は供給不足で、下がってる感じはないですよ。997前期型の暴落についてはわからないけど、マニアックな車種は間違いなく相場が上がってます。例えば、先週出品された平成13年(2001年)式の「シビック タイプR」の落札額、いくらだと思います?
私:えっ……。300万円くらい?
業者さん:消費税込みで800万円ですよ。走行8000kmくらいでしたけどね。
800マンエン! 新車価格の約4倍!
マニアックな車種は、新型コロナなどまったく無関係に、相場が上がり続けているのか……。
コロナバブルが来ている!
じゃフェラーリはどうなのか? というか、私のフェラーリはどうなのか!? 「328」や「348」はどうなのか!? 中古フェラーリ専門店コーナーストーンズの榎本 修代表に聞いてみた。
榎本:フェラーリですと、「488GTB」と「488スパイダー」は下がってますけど、それ以外はほとんどのモデルが、じわじわ上がり始めてます。実はこの業界にはいま、コロナバブルが来てるんですよ。
私:コ、コロナバブル!?
榎本:オーナー経営者さんは、政府の新型コロナ対策で、タダみたいな金利で4000万円までお金が借りられます。困ってない会社ほど、金融機関から『借りてくれ借りてくれ』って来るので、なら借りようかとなって、それでフェラーリやランボルギーニを買う方が増えてるんです。
ガ~~~~~~ン!
考えてみりゃ私も、税理士さんから「持続化給付金、申請しないんですか?」って聞かれたなぁ。個人事業主なので、申請すれば100万円もらえるのです! さすがにフェラーリ2台持っててそれはマズイだろって遠慮したけど。
100万円でフェラーリは無理だけど、経産省のホームページを見れば、新型コロナウイルス感染症対応資金と称して、「状況に応じて、民間金融機関でも、実質無利子・無担保で最大5年間の支援が受けらます」とある!
今回みたいな経済危機になると、世界中で思い切った金融緩和策が実行される。それがリーマンショック以来の絶対的な処方箋だ。実際それで経済は立ち直る。つまり、カネ余り現象は半永久的に続くのかも!
ってことは、マニアックな車種の高騰も続くのかもしれない。急げカーマニア!
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。