第87回:アルミボディーへの挑戦
レースでの勝利から乗用車の性能向上へ
2020.11.04
自動車ヒストリー
自動車の動力性能や燃費性能に直結する“軽さ”。過去にさまざまな工夫が凝らされてきたが、特にボディーの軽量化に寄与したのがアルミニウムの採用だった。アルミボディーの登場に至る歴史を、新素材へ注目が集まる契機となったレースでの逸話とともに紹介する。
航空機の技術を取り入れたジャガー
2002年に登場した「ジャガーXJ」は衝撃的だった。7代目となり、長らくつくり続けられていたボディーデザインが一新されたことも理由のひとつだが、それだけではない。ホイールベースが165mm延長され、ボディーの外寸がひとまわり以上大きくなったにもかかわらず、重量が増加しなかったことが驚きだったのだ。自動車の安全性や快適性が向上するのは歓迎すべきだが、それにともない、どんどん重量も増加。特に高級車は高い静粛性と豪華な内装を必要とするため、ヘビー級のボディーが当たり前になっていた。
ジャガーXJが使ったマジックは、アルミニウム合金ボディーの採用である。それまでにもアルミボディーのクルマは存在していた。1990年に登場した「ホンダNSX」は、オールアルミモノコックボディーのスーパースポーツである。「アウディA8」は、1994年のデビュー時からASFと呼ばれるアルミ製スペースフレームを採用した。
ジャガーXJが新しかったのは、航空機技術を取り入れたことだ。リベット接着という方法である。溶接ではどうしても熱膨張によるひずみが生じてしまう。リベットならば、その心配はない。
加えて、エポキシ系の接着剤も用いられている。これによって強度が増し、高い工作精度が得られた。スチールと同じようにアルミ板材を扱うことが可能になったのである。モノコックのアルミボディーを量産する技術が確立され、生産が容易になった。ジャガーによれば、ボディーの重量は40%ほど軽減されたという。しかも剛性は60%アップしたというから、いいことずくめだった。
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