第892回:みんな日本未導入車! 冬・イタリアの広場に現れたクルマたち
2025.01.09 マッキナ あらモーダ!屋外展示車の美点
日本の大都市では、自動車の展示が頻繁に行われている広場がある。たとえば東京では「二子玉川ライズ」が、その典型である。
筆者は、こうしたイベントが好きだ。第1はショールームという閉鎖空間で眺めるのと異なり、屋外だと実際の視覚的存在感やサイズの見当がつきやすい。
第2は、プロもしくは愛好家が集うモーターショーとは異なり、一般の人々の反応を観察できることだ。そこで感じる人気度は、のちに発表される販売台数と比例していることが少なくない。
そしてもうひとつは、自然光のなかでクルマが見られることだ。ボディーにカタログではわからない、実はデザイナーが意図したであろう、もしくは想像しなかったであろう、さまざまなリフレクションが発見できる。やや大げさであるが、19世紀末の印象派画家が戸外制作を通じて別視点による自然に目覚めたのに似たものがあるのだ。
イタリアでも、年間を通じて頻繁に地元ディーラーが展示を行っているショッピングモールがある。さらに冬は、クリスマス市の一角に、地元販売店が新車を展示する。この国では教会暦に基づき、1月6日のエピファニアといわれる国民の祝日まで、事実上クリスマス期間である。ツリーもこの日まで飾っておく。ゆえに自動車の展示も新年まで続いていることがある。
今回は2024年冬に、筆者が住むトスカーナで、どのようなクルマが展示されていたかをご覧いただこう。気がつけば、日本未導入のブランドもしくはモデルばかりなので、そうした意味でもお楽しみいただけると信じている。
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新「ルノー5」の注目度のおかげで
2024年暮れから2025年初頭にかけて、筆者が確認する限りそうした場で最も注目を浴びていたのは「ルノー5 E-Tech」である。イタリアでは2024年11月に発売された。
満充電からの走行距離(WLTP複合モード)が最も長いのは150PS仕様の410km。いっぽう最も価格が安いのは、目下のところ型式認可申請中の95PS仕様で2万5000ユーロ(約411万円。付加価値税込み)である。
ただし、筆者が実際に同車を展示していた販売店に赴いて、営業スタッフに確認したところ、実際の売れ筋はダチアのクルマであるという。当連載でもたびたび紹介してきたとおり、ダチアとはルノーグループのいちブランドだ。今日も内燃機関車中心に車種系列を展開している。その店における直近の販売実績の比率は、「ルノー1:ダチア2」という。理由はグループの方針として、ルノーブランドの電動化モデル拡大や高級・高価格化を推し進めたためである。したがって、多くの顧客がダチアを選ぶようになったのだ。ルノー5 E-Techは顧客を店舗に誘導するための、いわばアイキャッチ役なのである。
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まぶたに残る、あの三菱車
祭りといえば、筆者には東京郊外で過ごした1970年代末の記憶がある。七夕祭りや産業祭といった地域行事には、必ず自動車の出展があった。
少年時代いちばん楽しみにしていたのは、ずばり地元農協による三菱車の展示だった。当時から全農と三菱自動車は、販売のうえで密接な協力関係にあった。
そうして展示された三菱車の脇には、リーフレットではなく、本命客向けの本カタログが、それも営業担当者不在で置いてあった。展示していないモデルのものまであった。
昨今いうところの“やんちゃ自慢”を嫌悪する筆者だが、あえて記せば運転免許も持っていないのに、全モデルのカタログをくまなくもらって帰った。参考までに個人的に好きだったのは、1976年初代「ギャランΣ」と1978年初代「ミラージュ」である。従来の三菱車の、どこか重いデザインから一転。当時首位と2位であったトヨタや日産のモデルを超える、シャープさ、斬新さにあふれていた。
2024年12月23日の日産-ホンダ-三菱による統合協議開始の記者会見で、三菱の存在感は他の2社と比較して今ひとつであった。だが、筆者自身はそのようなことを思い出しながらライブ配信を視聴していたのであった。
(文と写真=大矢アキオ ロレンツォ<Akio Lorenzo OYA>/編集=堀田剛資)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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